菅沼美子「死者への婚約指輪」(1984年10月13日発行)

 収録作品

・「死者への婚約指輪」(原作/コーネル・ウールリッチ)
「自家用軽飛行機のパイロット、アンソニー。
 彼の飛行機は仕事の最中、悪天候のため、山中に墜落する。
 かろうじて命が助かった彼は、山中で、ランタンを持った、美しい少女と出会う。
 少女の名はイブといい、デイモン=ガードナーという老医師と、鉄条網で囲まれた屋敷で暮らしていた。
 アンソニーは彼女に惹かれるが、彼女から奇妙な印象を受ける。
 外の世界のことをほとんど知らず、ここで二年前に産まれて、成長したと彼に話す。
 そして、月に一度の注射がいやで、逃げ出そうとしても、ここから出られないと言う。
 アンソニーは、老医師の殺意を見抜き、イブをつれて、屋敷から逃走する。
 二人はシカゴで暮らし始めるが、ある時、アンソニーにギャングから危険な依頼が舞い込む。
 それは、ギャングのボスが刑務所から釈放される前に、彼が宝石を隠した島に飛ぶというものであった。
 アンソニーは依頼を断るが、ギャング達は、彼を迎えに来たイブの姿を見て、顔色を変える。
 イブは、宝石のありかを白状させようとして、殺してしまった、ボスの娘、ジェーンと瓜二つだったのである。
 ギャングに追われる身となった二人はニューヨークで暮らし始める。
 その頃、イブの身体に異変が起き始めていた…」

・「しのびよる影」(原作/西谷康二)
「中学三年生の久美子は、受験ノイローゼで、おじの旅館で療養することとなる。
 おじ夫婦は彼女に優しく接してくれるが、旅館で久美子は蒼白い娘をたびたび目にする。
 この娘は、旅館の近くにある病院の前で、見かけた娘であった。
 久美子は、この娘はおじ夫婦の娘で、彼女の病気の治療のために、久美子から血を抜いていると考えるのだが…」

・「D夫人にささげる花はない」(原作/藤木靖子)
「アンリエッタは孤児院からD夫人の邸へ向かう。
 D夫人(本名はダニエル=ダルレー)は非常に美しい未亡人で、孤児院に莫大な寄付金を渡しては、孤児達を引き取っていた。
 しかし、孤児院の仲間達の姿はなく、邸には、厳しい女中頭のミス・レイチェルや、謎めいたドクター・グリーンといった人物だけで、アンリエッタは窮屈な生活を強いられる。
 ある日、庭に出た際、彼女は、地下室に孤児院の仲間達が幽閉されていることを知る。
 彼女達の額には傷痕があり、皆、白痴となっていた。
 その夜、彼女は、D夫人、ドクター・グリーン、ミス・レイチェルの三人が庭にいるのを目にする。
 三人の後をつけると、地下室では、三人が黒ミサを行い、魔王べリアルを召喚しようとしていた。
 黒ミサの目的は、D夫人の娘、ジュリア=ダルレーの魂を復活させること。
 孤児院から引き取られた少女達は、ジュリアの魂を移植させる依代であった。
 アンリエッタも狙われるが、黒ミサの直前に高熱を出し、中止となり、彼女の代わりに、ライザという娘が孤児院から連れて来られる。
 熱病から回復したアンリエッタはライザと共に邸から逃走を図るが、失敗。
 ライザはドクター・グリーンによって、ジュリアの魂を移植される。
 この移植は成功したかに見えたが、以来、邸では奇怪な出来事が次々と起こるようになる…」

 どの作品も原作付きで、ストーリーがしっかりしております。
 個人的なベストは「D夫人にささげる花はない」。
 悪魔崇拝をテーマにしたオカルトもので、(荒唐無稽なほど)悪趣味な趣向を散りばめ、読み応えはかなりあります。
 あと、「死者への婚約指輪」は原作がコーネル・ウールリッチ(aka ウィリアム・アイリッシュ)ですが、あのウールリッチがこんなSFホラーを書いているなんて知らなんだ〜。(注1)
 少女漫画風の絵柄なのに、ラストに強烈なグロ描写があり、感動しました。

・注1
 原作のタイトルは「Jane Brown's body」ですが、翻訳されてるんですかね?

2019年11月11日 ページ作成・執筆

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