菊川近子「百の眼が見ていた」(1982年6月15日第1刷・1986年6月20日第20刷発行)

 収録作品

・「百の眼が見ていた」(「1981年発行 ハローフレンド3〜4月号」)
「赤祖父沙紀は、両親が事故死したため、叔父一家に彼女が一人住む屋敷へ移ってもらう。
 沙紀と従姉妹の杏は、双子と間違われるほど、小さい頃から大の仲良しであった。
 沙紀の屋敷の裏には、樹海が広がり、その奥には扉で閉ざされた洞窟があった。
 大昔からその洞窟に入ると、祟りがあると言われ、ずっと手付かずのままだった。
 そんなものは迷信と無鉄砲な杏は、洞窟の奥に入ると、奥にまた扉がある。
 その扉の中に入っても、何もなく、拍子抜けした杏は洞窟を後にするが、杏の身体にまとわりつく、幾多の黒いモヤがあった。
 このことがあってから、杏は夜が更けると、樹海にさまよい出るようになる。
 洞窟に長年、封じ込まれていた百眼鬼が復活したのだった…」

・「過去を知る黒子(ほくろ)」(「1981年発行 ハローフレンド11月号」)
「周子が企画した百物語の会。
 会には、いつも周子が反抗的な態度を取る絵島先生が招かれていた。
 クラスメート達は次々に怖い話を披露し、百話目は周子の番。
 周子は十年前、彼女が幼い頃に目撃した殺人事件について話し出す。
 犠牲者は隣に越してきた新婚夫婦で、交通事故死として処理されたが、実際は巧妙に仕組まれたものであった。
 そして、その犯人は…?」

・「天児の呪い」(「1981年発行 ハローフレンド9月号」)
「母を亡くして五年、鈴子の父親は再婚することになる。
 父親が新しい母親を迎えに行っている間、鈴子は亡き母親の部屋を片付けるが、過って「天児(あまがつ)」を壊してしまう。
 鈴子の祖先は大蛇を殺して呪われており、全ての災厄を身代わりに引き受ける日本人形が「天児」なのであった。
 その夜、新しい母親が単身、家を訪れる。
 美しい女性だが、どこか不自然なものを鈴子は感じる。
 この女性の正体とは…?」
 怪奇マンガ・ファンにはおなじみ「母さんはヘビ」です。
 主人公にちっとも同情できないのですが、私の性格が悪いせいでしょうか?

・「黄泉への誘い」(「1982年発行 ハローフレンド5月号」)
「弘美の通う学校には、ある階段の踊り場に幽霊が出るという噂があった。
 噂の階段で、弘美は赤い服装の女性を見かける。
 その時は気にかけなかったものの、赤い服の女性は弘美の行く先々の出没する。
 その女性に案内され、弘美は女性のアパートと名前を知るが、当の女性はしばらく前から行方不明であった。
 弘美は彼女の行方を突き止めようとして、最近知り合った国任という男性に相談する。  どうも国任は、その女性と何かつながりがあるようなのだが…」
 浜慎二先生の「幽霊が泣く教室」(立風書房)の影響あり、と見ましたが、どうでしょうか?

 成毛厚子先生と並ぶ、1980年代の怪奇マンガの女王かつトラウマ・クィーンである菊川近子先生。
 名作「百の眼が見ていた」を収録する、菊川近子先生を代表する一作でありましょう。
 ゲテモノな怪奇マンガを少女漫画のフォーマットにうまく溶け込ませ、当時の少女読者を恐怖のどん底に叩き込みまくった、その偉大さは一言には語り尽くせません。
 非常に後味の悪い、アンハッピーエンドも、容赦のなさが心地よいです。

2015年4月26・27日 ページ作成・執筆
2017年1月1日 加筆訂正
2021年5月18日 加筆訂正

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