すねやかずみ「1年C組恐怖会議@」(1995年7月17日第1刷発行)

 天徳高校の臨海学校。
 最後の夜、海の近くの廃校になった小学校の体育館に1年C組の生徒達が先生達に内緒で集まる。
 彼らの目的は「百物語」をすることであった…。

・「第一話 コンビニあらしの少年」
「出席番号1番、新井隆は語る。
 福島県のあるコンビニエンスストアで井上早紀という短大生がアルバイトをしていた。
 ある日、お客がいないはずなのに物音がするので見に行くと、帽子をかぶった少年が商品に手を伸ばしていた。
 少年はすぐに店から出ていくが、床には開封したポテトチップスが落ちていた。
 店長は念のため、数量チェックをすると、その棚の商品が20個も足りない。
 でも、あの少年が万引きしたようにはとても思えず、入力ミスらしいでその場は収まる。
 数日後、あの少年がまた来店する。
 早紀が近づくと、少年は「ボクじゃない!!」と叫びながら、店を出ていくが、今度は棚の商品が全てなくなっていた。
 早紀は少年が来た時、今度こそ何が起こっているか確かめようとするのだが…」

・「第2話 大観覧車の二人」
「出席番号二番、飯島薫は語る。
 大学生の萩野聖人と友人の赤井英明、西沢栄一の三人には秘密があった。
 夏、三人は離島のペンションにアルバイトに行くが、そのオーナーは非常に陰湿な性格をしていた。
 ネチネチと三人をこき使い、遂に、キレた三人は彼を袋叩きにする。
 オーナーはフォークで反撃するも、萩野は逆に刺し、その隙にアルバイト代を奪って、島から逃げる。
 その後は何事もなく、オーナーはあきらめていたと思っていたが、やはり、三人の心にはしこりとなって残っていた。
 萩野は他の二人が秘密を漏らすのではないかと疑い、二人に「20日の午後8時 殺す!」という脅迫文を送りつける。
 二人はヘタにかかわり合いにならない方が良いと考え、これで秘密は忘れ去られると思ったが、脅迫文通り、二人は殺害される。
 しかも、二人ともフォークで数百か所、めった刺しにされていた。
 そして、萩野にも「来月の20日の午後8時 今度は、お前だ!」という脅迫状が届く。
 同日、萩野は彼女と遊園地に行き、指定時刻が過ぎるのを待つのだが…」

・「第三話 おじいちゃんのカメラ」
「出席番号3番、宇野久雄は語る。
 彼の祖父、宇野大三は若い頃、神取という男と事業を立ち上げる。
 ある日、神取が海外出張から帰ってくると、宇野に古ぼけたカメラをお土産と言って渡す。
 これは古道具屋で見つけたものだが、「不幸のカメラ」で「カメラで写された人が不幸になっていく」らしい。
 その場は笑い話で済ましたが、しばらく時が経った頃、彼はそのカメラで産まれたばかりの子犬を撮る。
 翌日、子犬たちは皆、死んでいた。
 宇野はカメラのいわくを思い出し、次は、ライバル社の社長を写すと、翌日、死体となって発見される。
 以降、彼の会社はめざましく成長していくのだが、その陰では…」

・「第四話 海のいいつたえ」
「出席番号4番、榎本由美は語る。
 彼女の小学校の時の担任、山本小太郎は南の方の小さな漁村で育った。
 彼は学校に通うために、隣町まで渡し舟で行かねばならなかったが、ある日、帰りの渡り船で彼は不良達と同船してしまう。
 不良は彼の鞄を海に投げ入れ、彼は下船後、ゴムボートで捜しに行く。
 おおよそのあたりまで来て、潜ろうとした時、北風が吹き始める。
 この地域には『梅の花の咲く頃 北風の吹く午後に海に入ってはいけない』という言い伝えがあった。
 また、彼は小学校四年生の頃、この言い伝えを破った友人が溺死するという体験をしていた。
 とは言え、北風は弱く、まだ大丈夫だろうと考え、彼は海に潜る。
 そこで目にしたものとは…?」

・「第五話 見るなあッ!!」
「出席番号5番、遠藤裕二は語る。
 灰色の大学ノートを使ったおまじない。
 それは、左側のページに願い事を書き、右のページには願いを叶えるために捧げるものを書くというものであった。
 ある高校のバスケ部に所属する武田真二は、そのおまじないを使い、大会でレギュラーとなる。
 彼は以前から、寿命と引き換えに、このおまじないで願いを叶えていた。
 そして、今回は試合前日にレギュラーを三人ケガをさせ、補欠だった彼が大会に出られたのである。
 とは言え、実力不足は否めず、彼は足手まといと他のレギュラーから罵られる。
 そこで、寿命一年分と引き換えに、彼は「今日の試合 オレのシュートで勝つ」ことを望む。
 願いは叶うが、誰も彼を褒めようとはせず、彼がノートを見せても、バカにされるばかり。
 しかも、ノートの字が汗でにじみ、「寿命一年分」が「寿命一生分」になっていた。
 彼は助かるために、あることを思いつくのだが…」

・「第六話 手紙の主」
「出席番号6番、奥田ちえこは語る。
 高校一年生の二ノ宮真樹は非常に奥手で、大人しい少女であった。
 彼女は同じクラスの西山という男子に片想いをしていたが、相手にされないとあきらめていた。
 だが、急に、彼が彼女に注意を向けるようになる。
 ある日、彼に彼女を呼び出して、手紙の返事として、彼も彼女が好きだったと打ち明ける。
 しかし、彼女は彼にラブレターを出したことなどない。
 とは言え、今更言い出すわけにもいかず、憧れの西山と付き合うことができたので良しとする。
 数日後、彼女は西山からデートのことを話しかけてくる。
 どうやら彼に毎日、彼女から手紙が届いているらしい。
 日曜日の午後一時、駅前の時計塔に彼女は向かうのだが…」

・「第七番 ずっと一緒…」
「出席番号7番、折原仁は語る。
 ある高校の映画研究会は文化祭用にビデオ映画を撮っていた。
 部長の野上伸平を含め、部員は四人しかおらず、役者は演劇部員に協力してもらう。
 ある夜、野上の家に映画研究会のメンバーが集まり、編集をしていると、野上は奇妙なことに気づく。
 役者以外、誰もいないはずのシーンに後姿を見せた少女が映っている。
 この少女は、一か月前に事故死した演劇部部員の岸川めぐみによく似ていた。
 翌日、別のシーンにもまた少女の後姿が映っている。
 映画研究会のメンバーは霊が出たと撮影の中止を考えるが、野上は、めぐみも映画に出たかったのだろうと考え、撮影を続行。
 それからも、めぐみの霊は現れるが、シーンの邪魔にならないよう、ストーリーに影響が出ないところにさりげなく映っていた。
 そして、ラストの撮影。
 野上は彼女を振り向かせようと、脚本を書きかえるのだが…」
(「少年マガジンスペシャル」1994年第8号〜第12号掲載)

 「1年C組恐怖会議」という物々しいタイトルですが、要は「百物語」です。
 「少年マガジンスペシャル」は月刊だったせいか、ストーリーも絵も練られており、質は高いです。
 ただ、問答無用でトラウマ描写を叩きこむという作風ではなく、また、週刊誌でなく月刊誌に掲載されたためか、残念ながら、埋もれてしまった作品です。
 電子書籍で読めますので、興味のある方は読まれて損はないと思います。

2023年3月10・11・21日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る