井口かのん「あなたが怖い…」(1996年1月12日第1刷発行)

 収録作品

・「あなたが怖い…」(1995年「月刊少女フレンド9月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「原さおりは、クラスの他の男子と較べて大人びた感じの宮島高文に告白したところ、意外にもOKされる。
 彼は、非情に真面目かつ律儀な性格で、四か月経っても何の進展もなし。
 だが、ある日曜日、彼の家に招待される。
 家はかなりのお屋敷で、父親は弁護士で、母親は上品な女性であった。
 その時、さおりは、高文の弟、優と出会う。
 高文は彼のことをあまり話そうとはしなかったが、優は、自分はおちこぼれだと明かす。
 話を聞くと、彼は、母親が、知らない男に乱暴されてできた「悪魔」の子供で、家族から憎まれているという。
 しかも、高文は、良い子であり続けるストレスを彼にぶつけているらしい。
 さおりの心は高文を離れて、優へとなびいていくのだが…」

・「ジェラシー」(1993年「月刊少女フレンド4月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「平野美咲は、友人のカナコに、彼女の幼馴染の森本恭二を紹介される。
 恭二はイケメンで、美咲は大喜びだが、デートには何故かカナコがくっついてくる。
 二人でデートしようとしても、今度は話がはずまず、気まずい結果に終わる。
 美咲はカナコへの嫉妬を募らせるが、それがカナコと恭二をますます引き付けることになる。
 すれ違いの果てに、美咲は…」

・「絵夢」(1994年「月刊少女フレンド9月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「藤原絵夢は、暗く無口な女子高生。
 彼女には超能力があったが、彼女が幼い頃、父親と母親が口論の末、離婚して以来、誰にも明かさなかった。
 そして、ヒステリックな母親と十年暮らしているうちに、父親の言葉「アタマの中でだけ(…)お話しする」ことを覚える。
 絵夢は家庭でもクラスでも孤立するが、ある時、家で泣いていると、鏡の中から少年が現れる。
 彼は彼女を守ると約束し、絵夢にいじわるをした生徒達に次々と復讐していくのだが…」

・「暗黒石」(1991年「月刊少女フレンド1月5日号増刊 サスペンス&ホラー特集号」)
「里穂は、老人の占い師から、彗星のかけらをもらう。
 これは「思う力」のパワーを少しだけ増幅するもので、強く望んだものは必ず叶うと言う。
 その言葉の通り、数学の授業は潰れるし、片想いしていた阿部と両想いになれるし、友人との仲も壊さずに済む。
 これさえあれば何でも思い通りになると喜んでいたのも束の間、ささいなことから「不安」を抱いたことをきっかけに、全てが暗転。
 彼女の「不安」はとめどがなく…」

 井口かのん先生の作品は心に突き刺さるものが多いのですが、この単行本はヤバいです。
 最初に読んでから、紹介文を書く決心がつくまで、二か月もかかりました…。
 どの作品も救いようがありませんが、中でも、「ジェラシー」は少女漫画史に残るトラウマ大傑作だと思います。
 ヒロインが不憫で、不憫で…心が痛い…。
 また、男の不甲斐なさが悲惨さに拍車をかけまくりです。
 心底、どんよりしたい方はどうぞ。

2021年6月28日 ページ作成・執筆

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