渡千枝「闇からの招待状」(1987年8月13第1刷・1995年7月5日第17刷発行)

 収録作品

・「闇からの招待状」(「別フレDXジュリエット 1986年1月号」掲載)
「父親を亡くし、身寄りのない比呂子は、家族を捨てた母親から手紙をもらい、M市へ向かう。
 M市には、母親が嫁いだ藤原家の屋敷があり、また、父親が交通事故死をしたところでもあった。
 雪の降る夜、母親の再婚相手の息子、藤原優という青年が彼女を車で迎えに来る。
 藤原氏の邸は、山奥の洋館で、土地の人には幽霊屋敷と噂されているらしい。
 比呂子は、母親の再婚相手と会うが、彼は、陰険で偏屈な、車椅子の老人であった。
 にも関わらず、比呂子の母親は、夫に甲斐甲斐しく仕える。
 泊まった最初の夜、比呂子は、一階の居間が血まみれになっているのを目にする。
 彼女の悲鳴で人が駆けつけてくると、居間は元通りで、殺人が行われた形跡は全て消えていた。
 比呂子が見た光景は夢扱いされるのだが…」

・「ささやかれた悪夢」(「別フレDXジュリエット 1986年7月号」掲載)
「夏休み。
 若者達(リーダーの克彦と妹の結衣、克彦の恋人の奈津子、結衣の友達のミチ、克彦の友人の京作と深町の計六人)は、下山途中に雨に降られる。
 道路が崖崩れで塞がれていたため、別のルートを取るが、途中、雨宿りで入った洞窟で、奇妙なものを目にする。
 洞窟の奥には木の扉があり、扉には封印の御札が幾つも貼られていた。
 だが、封印の御札はかなり昔に破られているらしい。
 洞窟の先に、無人の寺を発見し、一行はそこで一夜を過ごす。
 寺の中には餓鬼の絵があり、古文書によると、二百年前に、雀蓮尼によって建てられた寺であった。
 また、古文書には「あまんじゃく伝説」について書かれており、洞窟の奥には「あまんじゃく=人食い鬼」が封印されているという。
 その夜、若者達は一人また一人と姿を消していき、ある者は無惨な死体で見つかる。
 伝説の人食い鬼の仕業なのであろうか…?」

・「戦慄の夜のために」(「別フレ増刊 1986年春の号」掲載/原作・都筑道夫)
 ある喫茶店。
 真琴の兄は、大学の怪奇ミステリー研究会に所属しており、真琴のクラスメート達が怪談話をするために集まったのであった。
 彼らの怖い体験談とは…?
「第1話 ゴーストタウン(過疎地帯)」
 真琴と兄は、おじの別荘に車で向かう。
 前の車が目的地は一緒らしいので、後ろを付いて行くが、車は山奥の悪路に迷い込んでしまう。
 前の車の男性は、近くの村で道を聞こうと、車を止める。
 前の車には、運転手の男性、助手席には彼の妻、バックシートには意地の悪そうな男が乗っていた。
 五人は村を訪れるが、そこは廃村で、人の気配はない。
 夜の運転は危険ということで、彼らは一軒の家で一夜を過ごそうとするが、真琴と兄は外に出た際に、奇怪な現象に襲われる。
 二人は慌てて村から逃げようとするのだが…。
「第2話 半身像」
 真琴の友人の力(つとむ)のお隣さんは、翻訳家の南条氏。
 南条氏が古道具屋で買ってきた本棚には、裏に、気持ちの悪い女性の油絵が描かれていた。
 しかも、何故か、この絵は腰から下が描かれていない。
 南条氏は気にも留めなかったが、ある夜、南条氏と力は、彼の書斎で酒を飲んで、その場で寝る。
 すると、力は足を何者かに引っ張られ、気が付くと、道路に寝ており、危うく、トラックに轢かれるところであった。
 また、南条氏も、足を引っ張られる夢を見ていたという。
 更には、南条氏の妹が泊まりに来た際、彼女は壁に引きずり込まれそうになり、以来、腰から下が不自由となる。
 南条氏は、本棚の裏の絵のせいと考え、本棚を処分しようとするのだが…。
「第3話 ベランダのながめ」
 高山知佐は、真琴達のクラスメート。
 彼女はあるマンションに一人暮らしをしていたが、そこに引っ越した翌日、恐ろしい体験をする。
 夜、ベランダから下を覗くと、恐ろしく醜悪な姿の人物が立っていた。
 そういうことが度重なるが、ある時、彼女は、それが夜の時間帯にしか見えないことに気付く…」

 個人的に、感慨深かったのは「ささやかれた悪夢」。
 キャンプ中の若者達が化け物に次々と惨殺されるという内容が、80年代のホラー映画の香りを今に伝えてくれます。
 当時のホラー映画を観まくった思い出のあるオヤジには懐かしく感じます。

 あと、故・都筑道夫が原作の作品があるのも興味深いところです。
 都筑道夫は短編の名手で、ショート・ショート集なんか、かなり面白かったので、この作品の原作も読んでみたいものです。

2020年5月17日 ページ作成・執筆

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