JET「花鳥風月殺人事件」(1997年2月13日第一刷発行)
収録作品
・「魍魎」
「真行寺冴子は幼い頃から「他人には見えないもの」を視ていた。
だが、母親にはそれが視えないことを知って以来、彼女はそれについて口に出すことはしなかった。
祖母は彼女と同じように視ることができたようなのだが…」
・「花鳥風月殺人事件」
「緋桐(ひぎら)まなみはお寺の娘ながら、大のお転婆娘。
彼女は、唯一の肉親である祖父によって、全寮制の私立百合ヶ丘女学院に転入させられる。
お嬢さま学校と聞いて不安を感じていたものの、すぐに同室の川村久美子と律子の二人と仲良くなる。
しかし、転校直後、現代国語の笠谷先生が花壇で死体となって発見される。
死亡時刻は午後八時から九時頃で、鋏で刺された後、絞殺されていた。
疑いをかけられたのは、川村久美子で、放課後、先生と一緒にいて、しかも、アリバイがない。
久美子がまなみ達に打ち明けるには、彼女は作家志望で、昨夜は、書きかけの「花鳥風月殺人事件」を先生に添削してもらっていた。
だが、その原稿は消え、先生は第一話「花」と同じ殺され方をしていたと言う。
久美子は続いて殺人事件が起きることを危惧するが…」
・「MA・NA・MI無頼控@」(1989年「ハロウィン増刊ミステリーハロウィン@」)
「百合ヶ丘女学院が潰れた後、まなみは新しい学校へとやって来る。
校門のところで、先の事件を担当した天野刑事と出会う。
彼の案内で学校に入った途端、校舎の四階から男性が転落するのを目の当たりにする。
死亡したのは、生物の有藤先生。
彼がいたのは生物準備室で、彼以外には誰も出入りしてないと、廊下にいた女生徒二人が証言したため、警察は自殺と判断する。
二人の女生徒は二年の高沢美穂と村田惠利子。
まなみは二人と話す機会を持つが、やはり、有藤先生が自殺とは思えない。
その夜、まなみは何者かに襲われるが…」
・「MA・NA・MI無頼控A」(1989年「ハロウィン増刊ミステリーハロウィンA」)
「新しい学校で、まなみは、杉浦夏樹という友人ができる。
夏樹はマンションで一人暮らしをしていたが、ここのところ、おかしなことが起きるという。
ベランダに煙草の吸殻が落ちていたり、ドアが勝手に開いたり、物の位置が勝手に変わっていたりと、誰かが出入りしているようであった。
まなみは知り合いの天野刑事に調べてもらうが、現在にも過去にも、特におかしな住民はいない模様。
彼女の部屋に出没する、不審な影の正体は…?」
・「紅道中殺人行」
「真行寺冴子は、工藤道子と共に、信州の戸隠神社を訪れる。
目的は、二年前の殺人事件について考えるためであった。
二年前、ある高校の写真部が撮影旅行でやって来る。
メンバーは、顧問の吉沢先生、部長の阪崎啓示、工藤姉妹(紫と道子)とその他数名の部員達。
皆、随神門のところで写真を撮っていたが、阪崎啓示と工藤紫の二人だけは奥社に向かう。
日が暮れても、二人は下りて来ず、心配して見に行くと、阪崎啓示は休憩所で眠り込み、境内下の御手洗には紫の生首があった。
随神門から奥社までは距離があるため、随神門にいた人達は疑われず、被害者の最も近くにいた阪崎啓示が疑われる。
だが、殺人の確証が得られず、結局、事件は迷宮入りをしたのであった。
鍵となるのは、啓示が冴子に送った、あるものなのだが、冴子の推理とは…?」
・「うちあけマンガ」
アシスタントさん達が二ページずつ描いた、内情暴露漫画(?)
「MANAMI」シリーズは、「ハロウィン」増刊号にぽちぽち掲載されたもので、この単行本で初めてまとめられたようです。
作者のあとがきには「セーラー服の女の子が描きたいっっ」という動機が第一と書かれており、そのためか、ミステリーとしては難があるようです。(注1)
同じ粗があるなら、純粋なミステリーよりも、「MA・NA・MI無頼控」のように怪奇ものが入っている方が楽しめるように思いました。
・注1
特に、「紅道中殺人行」で、生首の胴体についての言及がないのはどうかと思いました。
2021年2月26・27日 ページ作成・執筆
2022年12月6日 加筆訂正