渡辺潤
「クダンノゴトシ@」(2015年12月4日第1刷発行)
「クダンノゴトシA」(2016年3月4日第1刷・10月3日第3刷発行)
「クダンノゴトシB」(2016年6月6日第1刷発行)
「クダンノゴトシC」(2016年9月6日第1刷発行)
「クダンノゴトシD」(2016年12月6日第1刷発行)
「クダンノゴトシE」(2017年3月6日第1刷発行)



単行本@(「ヤングマガジン」2015年第37・38合併号〜第44号)
・「第壱話 辻元光〈其ノ壱〉」
 2月19日、城栄大学の旅行サークルのメンバーが乗った車が夜道を走る。
(登場人物については以下の通り。全員、大学四年生。
 辻元光〜主人公。山梨出身。唯一、就職の内定が決まってない。
 桜井千鶴〜山梨出身。辻元光の恋人。
 藤澤伸司〜リーダー的存在。眼鏡のクール・ガイ。
 小野寺洋太〜運転手。体育会系。
 白石辰巳〜秋田出身。明るく元気なナイス・ガイ。サッカー好き。
 馬場あゆみ〜千葉出身。白石辰巳に想いを寄せる。
 河井舞〜キリスト教の信者。でも、ノリは軽い、普通の女の子。)
 彼らは卒業旅行として伊豆を訪れ、その帰途であった。
 車はいつの間にかカーナビにも載っていない山道に迷い込む。
 突如、道の真ん中に動物らしきものが現れ、車はそれを轢く。
 様子を見に、崖下に降りると、その動物は牛で、安心したのも束の間、牛の頭は人間であった。
 牛の頭が「雨ガ降ル ソシテ オ前ラハ…」と話すのを聞き、光たちは…。
 それが全ての始まりであった…。
・「第弐話 白石辰巳〈其ノ壱〉」
 2月26日、光は旅行サークルの飲み会に行く。
 彼は六日前に桜井千鶴に別れを切り出しており、あゆみと舞に問い詰められる。
 彼はトイレに行くと言って飲み会を脱け出し、公園に行くと、白石辰巳もやって来る。
 辰巳は光を励まし、光も辰巳と馬場あゆみがお似合いだと応援する。
 だが、辰巳の様子はどうもおかしい。
 実は、20日の夜、彼の前にあの牛の化け物が現われて、彼の命はあと七日と告げたのであった…。
・「第参話 白石辰巳〈其ノ弐〉」
 辰巳があゆみに告白しようと矢先に起こった事故。
 辰巳は病院に運ばれ、手術を受ける。
 集まった旅行サークルの面々はこれが牛の化け物の呪いなのかどうか話し合う。
 あゆみはそんな彼らから離れ、トイレの個室にこもっていると…。
・「第四話 馬場あゆみ〈其ノ壱〉」
 3月1日、白石辰巳の葬式が行われる。
 馬場あゆみは葬式に参列せず、また、連絡も取れず、マンションの部屋にもいない。
 光は心当たりがあり、城栄大学に向かう。
 あゆみはいつも校舎の屋上からいつもサッカーをする辰巳を見つめていた。
 その場所で光は彼女に会うのだが…。
・「第五話 馬場あゆみ〈其ノ弐〉」
 あゆみの部屋に集まった旅行サークルの面々。
 藤澤伸司は皆にタブレットである画像を見せる。
 それは半人半牛の妖怪「件(くだん)」で、予言をすると言われていた。
 その死の連鎖は既に始まっており、このままだと全員の命が危うい…。
・「第六話 馬場あゆみ〈其ノ参〉」
 辰巳からあゆみに届けられた誕生日プレゼントの花束。
 それを胸に抱き、彼女は残された時間をどう過ごすか決める。
 一方、残りの旅行サークルの面々は解決策を見つけるべく動き出していた…。
・「第七話 桜井千鶴〈其ノ壱〉」
 藤澤伸司、小野寺洋太、河合舞は城栄大学の民俗学研究所を訪れる。
 そこの橘秀美という教授は若いが、その分野ではかなり有名であった。
 橘秀美の部屋で伸司たちはことの経緯を説明する。
 その頃、光と桜井千鶴は「件」を撥ねた現場に向かう。
 彼らが迷い込んだ脇道を見つけ、事故の痕を見つけるのだが…。

単行本A(「ヤングマガジン」2015年第46号〜第50号、52号、53号、2016年第1号〜第4・5合併号)
・「第八話 桜井千鶴〈其ノ弐〉」
 光が事故の痕を調べていると、千鶴が彼にナイフを向ける。
 彼女は彼と無理心中をしようとしていた。
 彼女の父親が自殺したのは彼のせいらしいのだが…。
・「第九話 桜井千鶴〈其ノ参〉」
 光が小学生の頃、轢き逃げにあう。
 犯人はタクシーの運転手をしていた千鶴の父親であった。
 千鶴は復讐のため、彼のことを調べ上げ、高校の頃から彼をつけ始める。
 そして、大学では偶然を装って、彼に接近し、同じサークルに入り、徐々に距離を縮めていくのだが…。
・「第拾話 馬場あゆみ〈其ノ四〉」
 3月4日。
 あゆみは白石辰巳の秋田の実家を訪ね、両親から彼の話を聞く。
 両親は彼女を歓迎し、辰巳の話で盛り上がる。
 小学校時代の彼はサッカー少年で、アルバムにもそういう写真が何枚もあった。
 彼女は彼の育った環境を知り、心から良かったと思う…。
・「第拾壱話 馬場あゆみ〈其ノ五〉」
 飲み会の後、彼女は辰巳の部屋に泊まる。
 残された時間のことを考えながら、サッカーボールを両手でついて上げていると、天井に当たり、天井板がずれてしまう。
 彼女がそのずれを直そうとした時、天井裏から何かが落ちてくる。
 それは藁人形と一冊のノートであった…。
 翌日の3月5日。
 あゆみは白石家を辞去する。
 辰巳の小学校時代の事実を知った彼女はその足で桐谷俊介の家へ向かう。
 桐谷俊介は辰巳の大親友で、実家の不動産屋で働いていた。
 彼女の目的とは…?
・「第拾弐話 馬場あゆみ〈其ノ六〉」
 桐谷俊介は妻と三歳の男の子に恵まれていた。
 あゆみは男の子に話しかけ、彼に藁人形を渡す。
 それを見た俊介と妻は顔色を変えるが、その時、男の子が道路に歩き出て、そこに車が突進してくる。
 あゆみの選択とは…?
・「第拾参話 馬場あゆみ〈其ノ七〉」
 旅行サークルのメンバーはあゆみを捜し出し、ある病院に運ぶ。
 そこには橘秀美の友人で医者の斉藤がおり、あゆみを助けるため、ある手術を行うこととなる。
 彼女に残された時間は一時間ちょっと…。
・「第拾四話 馬場あゆみ〈其ノ八〉」
 手術中にもかかわらず、担当医の一人が手術室から出てくる。
 斉藤は血まみれで、手術台の傍で座り込み、うなだれている。
 手術の結果は…?
・「第拾五話 藤澤伸司〈其ノ壱〉」
 3月6日、旅行サークルの面々は民俗学研究所に向かう。
 橘秀美は彼らを地下室の一室に集め、両手両足を紐で縛り、各自、腰に紐を結わえ付ける。
 ここなら「物理的には」件は侵入できない。
 そして、彼らの姿を一部始終カメラで撮影し、自分は別室でモニターを観察する。
 橘秀美が部屋を出た後、光たちが件が現れる順番について話し合っていると…。
・「第拾六話 藤澤伸司〈其ノ弐〉」
 地下室の光たちの前に現れた「件」。
 「件」は幻覚を自在に操ることができた。
 すると、件が姿が消え、全裸の馬場あゆみが現れる。
 あゆみは「この中に呪われた一人がいる」と告げ、「ミツケテトメテ」と言い残して消える…。
・「第拾七話 藤澤伸司〈其ノ参〉」
 藤澤伸司はあゆみの言葉を聞き、「呪われた一人」を捜し、殺すことを決意する。
 だが、誰が「呪われた一人」なのかわからず、サークルのメンバー達はバラバラになる。
 光は皆を止めるよう橘秀美に頼むが、彼の興味は今、桜井千鶴にあった。
 彼女の腹はぱんぱんに膨れ…。

単行本B(「ヤングマガジン」2016年第7号〜第11号、13号、15号〜第17号、19号)
・「第拾八話 藤澤伸司〈其ノ四〉」
 藤澤伸司はヤクザの講談興業に単身で乗り込む。
 彼は組長に自分の命を買うよう直談判する。
 彼の実家はこの組が関係する金融からニ千万円の借金をしていた。
 そして、伸司が提示する額は一億…。
・「第拾九話 辻元光〈其ノ弐〉」
 桜井千鶴は妊娠していた。
 腹の内側で何かが蠢き、彼女は破水する。
 光と橘秀美の見ている前で、彼女は出産するが、それは「件」であった。
 その件の顔は…?
 その時、光の脳裏を様々な光景がよぎる…。
・「第弐拾話 藤澤伸司〈其ノ五〉河合舞〈其ノ一〉」
 伸司が引き受けた仕事は文京組の連中を皆殺しにすること。
 ただし、下っ端を一人だけ半殺しのまま、殺さずにおいて、一般人の仕業に見せかけるよう言われる。
 伸司は銃と当座の金を受け取り、講談興業を後にするが…。
・「第弐拾壱話 藤澤伸司〈其ノ六〉小野寺洋太〈其ノ壱〉」
 講談興業の事務所を出た時、伸司は小野寺洋太と出会う。
 洋太は伸司を心配して、ずっと見張っていた。
 彼は、伸司の弟が起こした自転車事故の賠償金返済のため、伸司が生きているうちに金を作ろうとしていることを見抜き、正気に戻るよう説得する。
 伸司が、だったら洋太が彼の家族を養うのかと問うと、洋太は「いくらでも力になる」とはっきり答える。
 伸司は彼に心変わりを告げるのだが…。
・「第弐拾弐話 藤澤伸司〈其ノ五〉小野寺洋太〈其ノ弐〉」
 伸司が向かった先…そこでは血の華が咲いていた。
 一方、藤澤家の住むマンション。
 そこに伸司の弟、聡介が帰宅してくる。
 部屋の中は引っ越しの段ボールでいっぱい。
 彼が自分の部屋に行くと、講談興業のチンピラが三人待ち構えていた…。
・「第弐拾参話 藤澤伸司〈其ノ八〉河合舞〈其ノ弐〉」
 小野寺洋太は伸司の弟を助けようとするも、脇腹を刺されて、ダウン。
 チンピラ達は洋太と聡介を人質に取り、マンションの部屋に立てこもる。
 このニュースを聞き、伸司がマンションへ向かうと、途中、河合舞と出会う。
 彼女はお祈りの後、このニュースを観て、自分が不死身なのは神に選ばれたことと確信し、助けに行こうと決意したのであった。
 とは言え、マンションの周囲は厳戒態勢がしかれ、警察官たちでいっぱい。
 どうやってこの場を切り抜けるのか…?
・「第弐拾四話 藤澤伸司〈其ノ九〉河合舞〈其ノ参〉」
 どうにか伸司と舞はマンションに侵入。
 二人は藤澤家の部屋に突入するが、そこで予想だにしなかったものを目にする。
 二人が意識を取り戻すと、部屋には刑事が…。
・「第弐拾五話 藤澤伸司〈其ノ拾〉河合舞〈其ノ四〉」
 この事件は不可解極まることばかり。
 伸司と舞は弟の聡介や入院中の小野寺洋太にいろいろと聞き込みをする。
 その結果、わかったことは…。
・「第弐拾六話 辻元光〈其ノ参〉」
 病院で小野寺洋太から聞いた話から伸司は「呪われた一人」が誰なのか確信する。
 彼は予言日までにそいつを殺すと断言するが、舞の考えは違っていた。
 彼女にとってそれは「神様」であり…。
・「第弐拾七話 辻元光〈其ノ四〉」
 光は千鶴に会いに行くが、彼女の部屋で奇怪な映像が頭の中に流れる。
 それは墓参りの風景で、光、千鶴、伸司、舞が現れ、互いに傷つけあっていた。
 光は千鶴から、最初に出会った件が彼女の父親の顔だったと聞き、桜井家の墓にヒントがあると気づく。
 墓の中に何か手掛かりがあるようなのだが…。

単行本C(「ヤングマガジン」2016年第20号〜第25号、27号〜第30号、32号)
・「第弐拾八話 辻元光〈其ノ五〉桜井千鶴〈其ノ四〉」
 3月7日の早朝、光と千鶴は二人の出身地である山梨県甲府市を訪れる。
 千鶴の母親から父親の墓に手帳を入れたと教えてもらい、また、その手帳には牛がどうとか書かれていた。
 今すぐにも確認したいが、寺への連絡等手続きがあり、二人はとりあえず休む。
 目覚めると、もう晩で、仕方なく光が風呂に入ろうとすると…。
・「第弐拾九話 辻元光〈其ノ六〉桜井千鶴〈其ノ五〉」
 3月8日、光、千鶴、加藤美雪(17歳/千鶴の幼なじみで、勘が鋭い)の三人は千鶴の父親の墓に参る。
 加藤美雪は「嫌な感じ」がすると警告するが、引き返すわけにはいかない。
 光は千鶴の部屋で視た映像(第弐拾七話)は予知夢と捉え、対処法を考える。
 墓を拝んだ後、墓を開けると、御骨のそばに手帳が置かれていた。
 その時、藤澤伸司と河合舞が現れる。
 二人の目的とは…?
・「第参拾話 辻元光〈其ノ七〉」
 一難去ってまた一難、今度は千鶴の母親が光を襲う。
 彼女は光を「バケモノ」と呼ぶが、その理由とは…?
 激情する母親に加藤美雪は、父親は死んでいないと告げる。
 彼女は近いうちにまた会えると話すのだが…。
 一同が落ち着いた頃、光はみんなを救いたいと話し、もう少し時間をくれるよう頼む。
 千鶴の父親の手帳には残った者が救われる可能性があるかもしれない…。
・「第参拾壱話 辻元光〈其ノ八〉」
 手帳の間に挟まれていた、一枚の古ぼけた白黒写真。
 それにはこれから出征しようとする青年が写っていた。
 7月2日、霧の濃い夜、千鶴の父親、桜井忠はタクシーの後部座背にこの写真があるのに気づく。
 訝りながら、タクシーを走らせていると、道の真ん中に牛がいる。
 「件」は彼に「お前の命はあと7日だ」と告げる。
 7月6日、彼は轢き逃げを起こし、9日、妻はこのことを知り、二人で出頭。
 その日は少年の葬儀で、二人は謝罪に行くが、警察で少年の写真を見た父親は異常なほど、怯え、その場から逃走。
 その後、家で首吊り死体となって発見される。
 桜井忠の四十九日に何故か彼の手帳が出てくる。
 それを読んだ妻が独自に調査すると、恐るべき事実が明らかになる…。
・「第参拾弐話 辻元光〈其ノ九〉」
 千鶴の母親の話にショックを受け、光は自宅に向かう。
 だが、自宅のある場所は「天神社」であった。
 呆然とする光の前に、橘秀美が現れる…。
・「第参拾参話 小野寺洋太〈其ノ参〉藤澤伸司〈其ノ拾壱〉」
 警察から知らせを受け、藤澤伸司は病院へと向かう。
 そこで彼は小野寺洋太の遺体と面会する。
 洋太は生前、伸司に動画を送っていたが、そこで明かされた事実とは…?
 そして、伸司は残された時間を家族と共に過ごすのだが…。
・「第参拾四話 辻元光〈其ノ拾〉」
 3月8日、山梨県甲府市。
 橘秀美は光に天神社について解説し、彼との関係もほのめかす。
 一体何者かと問われ、光は自分は人間だと答えるが…。
・「第参拾五話 辻元光〈其ノ拾壱〉」
 光に異変が起きたのは橘秀美の企みであった。
 橘秀美は光に、自分の事を知りたいなら、全て知っていることを話すよう命令する。
 彼からの話を聞き、橘秀美は大興奮。
 その情報と引き換えに、橘秀美は光にホテルのカードキーを渡す。
 ホテルで光が痛飲していると、河合舞が部屋にやって来る…。
・「第参拾六話 辻元光〈其ノ拾弐〉河合舞〈其ノ五〉」
 河合舞は光の前で全裸になり、神様の子供が欲しいと話す。
 光は自分が人間でないと止めるが、舞は自分達は選ばれたと諭す。
 結局、光は欲望に勝てず…。
・「第参拾七話 辻元光〈其ノ拾参〉桜井千鶴〈其ノ六〉」
 3月9日の朝、光が目覚めると、ベッドのそばに桜井千鶴がいた。
 焦る彼に彼女は、舞はもう帰ったと話す。
 彼は以前の別れ話を再び持ち出そうとするが、その時、彼女は彼の手首を掴む。
 すると、件に見せられた光景(第拾九話)が脳裏に閃く。
 それは東京が白い光に包まれるというものであった。
 千鶴はこの光景の場所を知っていると言うのだが…。

単行本D(「ヤングマガジン」2016年第33号〜第36・37合併号、39号〜第43号、第45号)
・「第参拾八話 辻元光〈其ノ拾四〉桜井千鶴〈其ノ七〉」
 ある喫茶店の従業員が立て続けに死んでいくという噂。
 噂は人の口を介して広まり、ネットでは「人面牛の呪い」として拡散されていく…。
・「第参拾九話 辻元光〈其ノ拾五〉桜井千鶴〈其ノ八〉」
 光と千鶴が視た、東京が白い光に包まれる映像。
 それは城栄大学の屋上からのものであった。
 光はその映像が未来に起こると推理する。
 早くて三週間後…。
・「第四拾話 辻元光〈其ノ拾六〉桜井千鶴〈其ノ九〉」
 光と千鶴が公園でベンチに座っていると、藤澤伸司と弟の聡介に偶然出会う。
 光は以前、聡介を交通事故から救ったことがあり、聡介はそのお礼の後、光を「件」かどうか尋ねる。
 聡介によると、「件」という牛人間の呪いでたくさんの人が死んでいると噂が立っているらしい…。
・「第四拾壱話 辻元光〈其ノ拾七〉桜井千鶴〈其ノ拾〉」
 光が聡介から聞いた噂について調べると、噂はある喫茶店の従業員の連続死亡が発端だとわかる。
 光と千鶴がその喫茶店を訪れると、マスターが喫茶店のシャッターに休業のお知らせを貼ったところであった。
 二人はマスターにまだ生きているバイトの人と連絡を取ってくれるよう頼み、連絡が付く。
 そのバイトは二瓶友理香という娘で、彼女もまた件にあと七日の命と予言されていた。
 彼女から詳しく話を聞くと…。
・「第四拾弐話 辻元光〈其ノ拾八〉桜井千鶴〈其ノ拾壱〉」
 二瓶友理香との面会の場に突如現れた「件」。
 それは千鶴の父親であった。
 彼は「雨が降る そして、東京を引き金に世界は滅ぶ」と予言する。
 これにはあの「白い光」が関係しているらしい。
 光は「件」を詰問するが…。
・「第四拾参話 河合舞〈其ノ六〉」
 光の子を宿した河合舞は予知能力を得る。
 それを利用して、橘秀美はネットに予知した情報を流し、その真偽を確かめるが、彼女の予言は正確無比であった。
 また、彼は件の出現情報を調べるうちに、恐るべき事実を知る…。
・「第四拾四話 辻元光〈其ノ拾九〉桜井千鶴〈其ノ拾弐〉」
 3月12日、千鶴のスマホに加藤美雪から電話がかかる。
 加藤美雪は光たちの心配をして、山梨から出てきたものの、置き引きに遭い、一文無しで東京を彷徨っていたのであった。
 彼女は一緒に過ごしたホームレス達から「死を当てる予言者」の噂を聞いており…。
・「第四拾五話 辻元光〈其ノ弐拾〉」
 光・千鶴・美雪が新宿を歩いていると、通り魔事件に遭遇する。
 犯人はサラリーマンの男性で、ネットで死の予言をされ、一人でも多くの人間を道連れにしようと、ナイフで無差別に襲いかかる。
 光は彼の前に立ちふさがり、予言の話を聞かせてくれと言うのだが…。
・「第四拾六話 辻元光〈其ノ弐拾壱〉桜井千鶴〈其ノ拾参〉藤澤伸司〈其ノ拾弐〉」
 通り魔事件の後、光・千鶴・美雪は藤澤伸司と会う。
 この日は彼に残された最後の日であった。
 三人は伸司から橘秀美教授の死を知らされる。
 教授は民俗学の古い文献を大量に調べ、辻元光の存在意義についてある結論に達していた…。
・「第四拾七話 辻元光〈其ノ弐拾弐〉桜井千鶴〈其ノ拾四〉河合舞〈其ノ七〉」
 伸司が殺されたニュースを観て、光たちの思いは沈む。
 光は雨の中、一人、公園のベンチに座り、自分のなすべきことを考える。
 世界が滅亡するかどうかは彼にかかっていた。
 しかし、彼の考えをあざ笑うかのように予想外なことが起こる。
 その時、彼の前に河合舞が現われ…。

単行本E(「ヤングマガジン」2016年第46号、第47号、第49号、第51号〜2017年2・3合併号、第6号〜第8号)
・「第四拾八話 辻元光〈其ノ弐拾参〉」
 舞から産まれた赤ん坊。
 それはあっという間に辻元光と同じ姿に成長する。
 もう一人の光の目的とは…?
 その頃、週刊現今編集部では田坂という記者が編集長と話をしていた。
 田坂は新宿通り魔の事件で光を目撃していたが、誰も彼の話を信用してくれない。
 ところが、編集部の大谷は藤澤伸司の事件について調べを進めており…。
・「第四拾九話 辻元光〈其ノ弐拾四〉桜井千鶴〈其ノ拾五〉」
 3月14日、桜井千鶴と加藤美雪は辻元光の帰りを待っていた。
 美雪は千鶴のもとに「件」が来たことを察するが、「件」が千鶴に告げた予言とは…?
 そして、二人がファミレスからアパートに戻った時、美雪が熱を出して倒れる。
 その頃、病院に同じような症状の患者が殺到していた…。
・「第五拾話 辻元光〈其ノ弐拾五〉」
 辻元光は甲府市の実家へと戻る。
 両親は仕事中で、彼は居間でテレビをつけると、東京でスーパー耐性菌が大流行しているとのニュースが流れる。
 その時、来客があるが、それは記者の田坂であった。
 一方、渋谷では往来のど真ん中にストリーキングが出現する。
 警官達に確保された彼はもう一人の辻元光であった…。
・「第五拾壱話 辻元光〈其ノ弐拾六〉」
 辻元光は田坂の運転する車で東京に向かう。
 途中、光からことの次第を聞き、田坂は驚愕。
 とりあえず、渋谷の現場に向かい、その後、ヒントを探しに民俗学研究所に向かおうとするが…。
・「第五拾弐話 辻元光〈其ノ弐拾七〉桜井千鶴〈其ノ拾六〉」
 光の前に「件」の光が再度現れる。
 このパンデミックを引き起こしたのは「件」の光であった。
 光は「件」の光を止めることができるのであろうか…?
 その頃、千鶴は病院のテレビで光が渋谷にいると直感する。
 美雪は彼女を引き留めるが…。
・「第五拾参話 辻元光〈其ノ弐拾八〉」
 光は「件」の光を攻撃し、更に、殺菌剤を噴霧する。
 これで撃退できたと考え、次に光は己の存在をこの世から抹消しようとするが…。
・「第五拾四話 辻元光〈其ノ弐拾九〉」
 光の思い通りにはいかず、「件」は7日で世界は滅びると予言する。
 辻元は光を救おうとするも、人々は彼がパンデミックの原因と思い込み…。
・「第五拾五話 辻元光〈其ノ参拾〉桜井千鶴〈其ノ拾七〉」
 暴動の最中の渋谷に千鶴はやって来る。
 そこで目にしたのは群衆のリンチに遭い、二目と見られぬ姿になった光であった。
 千鶴もまた光の仲間として焼き殺されそうになる。
 光は必死に止めようとするが…。
・「第五拾六話 辻元光〈其ノ参拾壱〉」
 光の脳裏に繰り広げられる、人類の悲惨な過去。
 彼は繰り返し繰り返し人間という存在がどのようなものか見てきていた。
 ここで彼はどうのような選択をするのであろうか…?
・「最終話 件の如し」
 3月25日、週刊現今編集部で千鶴は田坂からインタビューを受ける。
 彼女のサークル・メンバーが二週間の間に五人も立て続けに死亡し、千鶴もまた渋谷の暴動騒ぎで死にかけていた。
 だが、何か忘れているような気がして、喪失感を拭えない。
 3月27日、甲府市の実家に戻った千鶴が美雪と共に天神社を訪れると…。

 大ベテランの渡辺潤先生による「ファイナル・デスティネーションもの」の良作です。
 最初の方は「件」に死の予言をされた若者たちがそれをどう回避するかという内容ですが、中盤から予想外な展開を次々と繰り出し、最後は人類滅亡にまで話が発展して、この大盤振る舞いには感動いたしました。
 ストーリー的にはよくよく考えると、釈然としないところもありますが、この作品は「ジェットコースター感覚」を堪能すべきだと思います。
 また、死を前にした人が残りの人生をどう使うかも描かれていて、人間ドラマとしても味わい深いです。
 個人的なお気に入りは「藤澤伸司 大暴れの巻」な単行本Bで、かなりアナーキーな展開です。

2023年12月3〜6・8・14日 ページ作成・執筆

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