曽祢まさこ「迷宮事件簿」(1987年7月13日第1刷・1987年9月15日第2刷・1989年10月20日第8刷発行)

・「第1章 夢魔の来る夜」(昭和61年「ハローフレンド」12月号所載)
「17歳の女子高校生、愛川可奈は、夜に勉強中、おかしな夢を見る。
 夢の中で勉強していると、窓の外に何物かの気配を感じ、彼女は部屋に入らないよう怒鳴りつける。
 すると、部屋の壁を通り抜けて、青年が現れ、「あいつ」のことを尋ねると、去っていくという内容であった。
 実は、その青年は人の夢を渡り歩く能力を持っていた。
 そして、「あいつ」とは夢魔のことで、悪夢で人をがんじがらめにして死に追いやる悪魔であり、彼はそいつと戦っていたのである。
 翌日、可奈は学校で、優等生で親友のユッコが元気がないのに気づく。
 彼女は内容は覚えていないけど、イヤな夢を見たためと話し、その日以来、ユッコは学校を休むようになる。
 数日後、可奈は帰宅途中に、ユッコが車道に歩み出て、事故にあう場面を目撃する。
 ユッコは意識不明の重体。
 可奈がショックから立ち直った頃、夢の中に血まみれのユッコが現れるようになる。
 夜毎、ユッコは可奈の方に近づいて来て、可奈は今まで散々ユッコに負担をかけていたことへの罪悪感に苛まされる。
 しかし、親友の涼子からユッコを信じるよう諭され、可奈は夢の中でユッコに話しかけるのだが…」

・「第2章 ゆがんだ扉」(昭和62年「ハローフレンド」2月号所載)
「学級委員のユッコが入院したため、副委員の可奈にその仕事が一気に肩にかかり、大わらわ。
 職員室への出入りが増えた可奈は、水沢先生とすっかり顔なじみとなる。
 水沢先生はハンサムで独身のナイス・ガイであったが、三十二歳。
 でも、女子生徒の間では人気が多く、特に、ちょいワルな守屋真紀はベタ惚れしていた。
 彼女は可奈にやきもちを焼き、何かと絡んでくる。
 親友の涼子の仲裁で真紀の可奈への嫌がらせはやむが、可奈は何者の悪意を肌で感じ続ける…」

・「第3章 樹霊のわな」(昭和62年「ハローフレンド」4月号所載)
「ある日、可奈は町で、夢の中の青年を見かけ、その後を追いかける。
 しかし、彼を見失い、公園の木のそばで途方に暮れていると、「願いをきくから助けて」との声が聞こえてくる。
 様子がおかしいと感じた時にはすでに遅く、可奈の身体は樹に吸い込まれてしまう。
 程なくして、可奈の身体が樹から現れるが、彼女には樹の霊が乗り移っていた。
 樹の霊はある男性に横恋慕しており、彼をその恋人から奪おうとする。
 一方、可奈の意識は樹の中に閉じ込められていた…」

・「最終章 夢の墓場」(昭和62年「ハローフレンド」12月号所載)
「樹霊の事件で、可奈は青年と再会を果たす。
 彼の名前は、村瀬徹。
 可奈は彼から家庭のこと、そして、どうして人の夢を渡り歩けるようになったのかを聞く。
 その日、夢魔に憑りつかれた男子小学生を見かけ、徹はその夜、彼の夢を探ると話す。
 可奈も、彼のように人の夢に入ろうとして、迷子になろうとしたところを徹に助けられる。
 二人が男の子の夢の中を訪れると、彼は夢魔に心を乗っ取られ、希望というものを見失っていた…」

 犬木加奈子先生の傑作「夢少女ネムリ」に先駆けて、「ドリームウォーカー」を描いた作品です。
 ただ、「第2章」と「第3章」は「ドリームウォーカー」の設定はあまり関係なく、実際は二章だけなので物足りなさを感じてしまいます。
 設定を練り込んで、ストーリーに取り込んでいたら、もっと面白くなったのではないでしょうか?
 あと、村瀬徹が夢魔と戦う道具が、祖父の霊から授かった、ありがたいものなのはわかりますが、「木刀」っていうのがちょっと…。(もっとハデでも良かったかも。でも、ハデ過ぎると、世界観をブチ壊してしまいますし、なかなか難しいなあ〜。)
 と、ごちゃごちゃ書きましたが、曽根まさこ先生の作品ですので、質は安定しており、安心して読めます。(これって大切ですよね。)

2017年8月12日 ページ作成・執筆

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