森谷幸子「異次元伝説」(1983年11月14日第1刷発行)

 収録作品

・「異次元伝説」(1982年「mimiDX」12月号)
「ことの起こりは、椎名小夜子のもとに、神保家の弁護士がやって来たことであった。
 小夜子は神保家にとって最も近い親族であり、彼女の祖父、清二郎が亡くなったため、その葬儀を当主として執り行って欲しいと伝えられる。
 小夜子は今の両親のもとに三歳の時に養子に出されたが、神保家のことは両親も初耳であった。
 彼女の父親は彼女が産まれてすぐに亡くなり、母親も、三歳の小夜子を養女に出した二年後に亡くなったと言う。
 自分のルーツを知るために、小夜子は、近江の山奥にある神保家の邸を訪れる。
 神保家の邸は恐ろしく広大で、中には、龍や麒麟といった伝説上の動物を描いた絵や障子が至るところに飾られていた。
 邸には、清二郎の養女の雪野、伯父夫婦の光三・杉子とその娘、美香子、そして、お手伝いの老婆だけであった。
 相続問題でギスギスした雰囲気の中、雪野だけは超然としている。
 そんな時、邸に、小夜子の大学の有名人、岬淳之介が邸に迷い込んでくる。
 彼は「不思議と対話する会」のリーダーで、この里に「異次元の入り口」を求めて、やって来たのであった。
 彼によると、ここらあたりは神秘伝説の宝庫であり、若い娘の神隠しが多いと言う。
 小夜子は彼が滞在できるよう頼み、二人で屋敷を調べる。
 ほら穴のような祠と、神保家の過去帳から、淳之介は何かに勘付いたようなのだが…。
 そして、十年に一度、代々の先祖をお社で供養する「お供養の日」が近づくにつれ、小夜子を呼ぶ声が聞こえるようになる。
 小夜子を呼ぶものたちとは…?」

・「ブロークン・ハート・ブルース」(1983年「月刊mimi」3月号)
「佐伯ケイ(大学二年生)は、六年間、付き合った岸田まことを公衆の面前で引っぱたいて、別れを告げる。
 理由は、彼に別の彼女ができたからであった。
 失恋の痛手は思いのより深く、ケイは髪を短く切って、煙草を始める。
 その煙草をきっかけに、彼女は、早見司(大学四年生)と知り合う。
 彼も彼女と同じ「ブロークン・ハート」ということで、二人は付き合い始め、ケイはマージャン、パチンコ、ラグビーと新しい世界を知る。
 ケイは彼と一緒にいると自然体でいられ、徐々に彼に惹かれていくが、彼の部屋を訪れた時、彼に電話がかかってくる。
 それは、彼が失恋した、今は人妻の女性からであった…」

・「化石の森」(1983年「mimiDX」6月号)
「岸田医院の前に倒れていた少女。
 彼女は朝倉樹里(17歳)で、単なる貧血にも関わらず、通院を長引かせる。
 実は、過去に、彼女の母、由衣子は、岸田医院院長の岸田圭一の恋人であることを知り、二人を引き合わせようとしたのであった。
 これに巻き込まれ、岸田圭一の次男、慎太郎は樹里にひっかきまわされてばかり。
 ある時、慎太郎と父親は、朝倉家の別荘に滞在することとなるが、樹里は、圭一と由衣子が二人きりになるよう目論むのだが…」

 「異次元伝説」は怪奇マンガですが、残りの二作は少女漫画(?)です。
 「異次元伝説」は着想が良く、丁寧に描かれているのに、80ページぐらいしかなく、ボリューム不足なのが残念なところ…。
 もっと内容を膨らませたら、佳作になったように思います。

2021年2月7日 ページ作成・執筆

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