曽祢まさこ「海にしずんだ伝説」(1976年9月5日第1刷・1986年6月19日第17刷発行)

 収録作品

・「海にしずんだ伝説」(昭和51年「なかよし」7月増刊号掲載)
「フランスのブルターニュ地方の港町、ドアルヌネ。
 夏休み、病気の弟のために、十歳のジョアンナは、親戚の家に一人送られる。
 両親もおらず、周りの子供ともなじめず、孤独なジョアンナは海辺を見下ろす崖に向かう。
 彼女は母親からこの地に伝わる伝説を聞いていた。
 今は海があるところに、昔、イサの都があったと言う。
 イサの都は頑丈な堤に囲まれ、その水門の鍵は神から与えられたものとされ、王のみ手にすることができた。
 だが、王の息子は、邪まな心の持ち主で、ある日、王から鍵を盗み出し、一夜にして、都は海に没したと伝えられる。
 海底にイサの都の廃墟を見れないかと、ジョアンナがそぞろ歩いていた時、普段から彼女にちょっかいを出す少年が目の前にいた。
 彼から逃げようとして、ジョアンナは崖から転落。
 彼女が意識を取り戻すと、そこは伝説の都、イサであった。
 彼女は、グラロン王の息子、リオネスに助けられ、彼の侍女として仕えることとなる。
 そして、ジョアンナはイサの都が滅んだ、真の理由を知るのであった…」

・「赤いわな」(昭和51年「別冊なかよし」第4号掲載)
「女子学生のイブリンは、ベビーシッターのアルバイトが大好き。
 特に、ガースン夫妻のデビー坊やはまるで天使のようで、可愛くてたまらない。
 ある夜、イブリンがデビー坊やを看ていると、女性の来客がある。
 薄い金髪、碧眼、左目の下にホクロがある女は家に押し入ると、デビーを「わたしの坊や」と抱きしめる。
 女の尋常ならざる雰囲気に、イブリンは隙を見て、デビーを取り返し、家の外へ走り出る。
 そこへ、ガースン夫妻がパーティからちょうど帰って来て、イブリンはことの次第を説明する。
 しかし、女の姿はもはやなく、ガースン氏は酔っ払いの仕業と片付ける。
 イブリンは、ガースン氏の態度に釈然としないものを感じ、ボーイフレンドのリックと共に、この事件について調べるのだが…」

・「12月のエルメイン」(昭和50年「なかよし」12月号掲載)
「ガリ勉の秀才で、男嫌いの噂のあるエルメイン。
 クリスマス・プロム(舞踏会)の夜、彼女は、皆の人気者、サンディ=グレイの相手役を急遽務めることとなる。
 野暮ったいドレス、下手くそなダンス、消極的な態度と、サンディはすっかりシラケてしまい、彼女に対し悪印象を抱く。
 しかも、彼女は彼に挨拶一つなくパーティを脱け出し、帰ってしまう。
 頭に来つつも、サンディがエルメインの家に忘れ物のショールを届けに行くと、窓外から会話が聞こえる。
 エルメインの母が娘を「かわいげがなく、きりょうのわるい子」となじり、過ぎた望みを持つなと警告しているのであった。
 この会話を聞き、サンディはエルメインが本当は怯えていたことに思い至る。
 彼女に興味を持ったサンディは翌日、彼女をスケートに誘いに行き、これを機に、二人は仲を深めていく。
 そして、サンディはエルメインの母と話し合う機会を持つのだが…」

・「死霊教室」(昭和51年「なかよし」2月号掲載)
「K中学。
 二年生の藤本広子は、周囲が青春をエンジョイしている横で、ガリ勉に励まざるを得ない。
 教育ママの母親からガミガミ言われて、有名校に入るべく塾にも通うが、頭がまるきりそういうことに向いてない。
 苦労の割に成績は上がらず、他のクラスメートとも遊べず、広子はすっかり陰鬱な気分。
 ある日、塾をさぼった広子は、時間を潰すために、放課後の人気のない教室に行く。
 そこで、うたた寝をしてしまい、気が付くと、外は闇。
 慌てる広子の前に、一人の教師が現れ、授業が始まっていると、彼女をある教室に促す。
 その教室では大勢の生徒が授業を受けていた。
 だが、どうも様子がおかしく、そのうちに、彼女はこの教室が「死人の教室」であることに気付く。
 すると、見馴れてはいるが、誰かは思い出せない少年が彼女に話しかける…」

 ファンタジーからサスペンス、怪奇ものと幅広いジャンルの作品が収められた単行本です。
 「海にしずんだ伝説」はファンタジーの名作と思います。
 ただ、古代人の言葉にどうして通じていたのかにひっかかってしまいます。(それを言ったら、ファンタジーなんて読めやしませんが…。)
 「赤いわな」はサスペンス・ミステリー。
 「12月のエルメイン」はミステリーの要素が少しはありますが、基本、恋愛ドラマです。
 ネタばれですが、過去に「血友病」がどのようなイメージを持たれていたのか窺えて、興味深いです。
 「死霊教室」はもろストレートな怪奇マンガです。
 美内すずえ先生の作品にあってもおかしくない内容ですが、そこに民話の要素を取り入れ、独特の味わいがあります。

2017年8月21日 ページ作成・執筆

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