わたなべまさこ「死霊ポートレットの恋」(1986年8月14日第一刷発行)

 収録作品

・「死霊ポートレットの恋」
「いとこのエバのもとに滞在するユンクは若い外科医。
 ある夜、ユンクとエバが精霊流し(ドイツにもあるの?)を観に行った時、美しい娘と女中に出会う。
 真夜中、その女中がユンクの部屋を訪れ、往診を頼む。
 ユンクが案内された先は、沼地の先にある、白亜の館、ウルスラ館であった。
 館では、館の主人、ポートレットが痛みに悶えていたが、ユンクの手当てにより快方に向かう。
 ユンクはポートレットの美しさに心を奪われ、口づけをしてしまい、逃げるように去る。
 次の夜も、ユンクの部屋に女中のイザールがポートレットの往診を頼みに来る。
 大切な手術が控えているものの、ポートレットに惹かれたユンクは、またもウルスラ館に出かけ、ポートレットとラブラブで過ごす。
 一睡もしなかったユンクは、翌日の手術で大失敗。
 ユンクを慕い、心配するエバは、夜更けに出かけるユンクの後をつけ、ウルスラ館まで来るのだが…」
 わたなべまさこ版「牡丹燈籠」なのであります。
 舞台は(恐らく)ドイツですが、幽霊は両手を下げているし、幽霊のまわりには火の玉が舞っております。
 まあ、でも、そんなことは些細なことなのです。
 どんな原作であろうとも、わたなべまさこ先生の手にかかれば、「わたなべまさこの漫画」になるのであります。
 この坩堝のような個性…個人的には、「最強の漫画家」の御一人だと考えております。
 ちなみに、この作品を最初に読んだ高校生の頃、女中のイザールは好きなキャラでしたが、今読み返しても、やっぱりいいです。

・「黒ねこが笑った」(1973年/「週刊少女フレンド」)
「出産のため、アンデルス・パストールとビクトリアは、夫が少年時代を過ごした別荘、ローズガーデンに向かう。
 そこは炎のように咲き誇るバラに囲まれた、白亜の館であった。
 ローズガーデンには、アンデルスが小さい頃から家に仕えているクロディーヌ夫人が、黒猫と共に住んで、管理していた。
 ビクトリアはデイジーという名の女児を出産するが、アンデルスはどこか苦しそうな様子で、デイジーに愛情を示さない。
 実は、アンデルスは少年時代、妹のビビアンの顔に大火傷をさせて、死に追いやってしまったことがあった。
 そのため、ビビアンにそっくりなデイジーを目にするたびに、罪の意識に苛まされていたのである。
 夫の過去を知ったビクトリアはアンデルスが罪の意識を克服するまで待つことにする。
 しかし、アフリカの鉱山事故で夫は行方不明。
 このことがあってから、クロディーヌ夫人は本性を現わす。
 実は、この館には、死んだはずのビビアンが隠れ住んでいたのであった。
 クロディーヌ夫人はビクトリアを薬漬けにして、ビビアンを女主人に据える。
 以来、館の近くの湖で、顔を潰された女性の死体がいくつも上がるようになる…」
 「顔のない眼」meets「ガラスの城」なのでしょうか?(「ガラスの城」を未読なんです。早く読まなきゃ。)
 グロ描写も当然ありますが、それよりも明らかに偏執狂なクロディーヌ夫人の方が遥かに凶悪です。

 
2017年1月27日 ページ作成・執筆

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