関よしみ「壊れた狂室」(1996年6月13日発行)

 収録作品

・「壊れた狂室」
「とある私立の女子中学校。
 三年生の伊藤淳美のクラスの新しい担任、藤巻龍彦は、イケメンだが、人格上で大きな問題があった。
 彼は、生徒を数学のできるかどうかでのみ評価し、数学ができない生徒はバカ扱い。
 最初は反発していた生徒達も、藤巻先生の魅力にどんどん囚われていき、猛勉強を始める。
 先生の関心を得るために、競争はどんどんエスカレート。
 果ては、藤巻先生の「キス」を賭けてのテストで、教室は狂乱の巷となる…」
 これは凄いです!! 関よしみ先生の「裏」ベスト5に入る出来です。
 紹介しているサイトも多いので、内容が気になった方はそちらでチェックしてくださいませ。

・「絶望へのカウントダウン」(1995年少女フレンド1月号増刊サスペンス&ホラー特集号)
「高校受験を控え、受験勉強に日々追われる、女子中学生、長瀬真由美。
 彼女が住む町の近くに、軍用機が墜落する。
 その軍用機には、細菌兵器が搭載されていた。その細菌兵器は、体中の細胞を溶かすというもので、ワクチンはなし。
 町は隔離され、住民達は次々と発症していく。
 パニック状態になった人々は自分の奥底になる欲望を満たそうとして、町は混乱状態に陥る。
 真由美は学校からどうにか逃げ出し、家に駆け込むが…。
 この極限状況に家族はあっさり崩壊し、真由美は一人、町をさまよう…」
「今日までしか生きられなかったら、何をするか?」とは、究極の質問の一つでありましょう。
 この作品に出てくる人達は、とりあえず「性欲を満たす」ことに第一を置いておりまして、生臭過ぎます。
(でも、まあ、私も中学三年生なら、そうしていたかもしれません。それは否定できないのであります。)
 主人公が家に戻って、目にする光景(p98)は、ある意味で「トラウマ描写」の頂点に位置します。
 そして、ラストは「あらあら、おやおや、それからドンドコショ〜」としか言いようのないものです。
 なかなか凄いマンガですよ、これは…。
 どうも読者人気の高いマンガのようで「血を吸う教室」(九龍コミックス)と「パニック! ―あたし死ぬの?―」(ぶんか社)にて再録されております。

・「裏切りのダンクシュート」
「音羽高等学校のバスケ部の顧問、渋谷。
 彼は「熱血教師」を通り越して、はっきり言って「キ○○イ」なのだが、彼のおかげで弱小バスケ部は短期間の間にめきめきと強くなる。
 夏の合宿で、バスケ部の部員達は文字通り「命賭けの」練習に励むことになる…」
 個人的に、非常に不快な作品です。
 と言っても、作品がどうこうというのではないのです。
 ただ、この作品は、大阪のとある中学校の事件を思い起こさせるからなのであります。
 その事件とは、あるスポーツの部活の顧問が、キャプテンに罵詈雑言や体罰を行い、その生徒を自殺に追い込んだ、というものであります。(こう聞けば、「ああ、あれね」と感づく方もいらっしゃるでしょう。)
 事件がマスコミに取り上げられ、問題となっても、その顧問を擁護する声が高かったということにも眉を顰めますが、それ以上に、その顧問がいやらしさが記憶に残ります。
 あくまでも個人的な推測ですが、生徒が自殺しても、その顧問は罪悪感なんか抱かなかったのではないでしょうか。
 罪悪感を抱く以前に、「面倒なことになった」ぐらいにしか思わなかったように思います。
(まあ、これは私の勘ぐりにしか過ぎないので、読者の皆様は真に受けないで欲しいです。)
 この事件のことが頭の片隅にあるせいで、こんな荒唐無稽な話でも「イヤなリアリティー」があるのです。
 確かに、バカバカしいマンガかもしれませんが、鼻で笑っていられるうちが花なのです。
 しかし、一度、現実を接点を持つと、作品の向こうにもっと過酷な現実が透けて見えてくるのです。(ただ、あまりにも極端な描写に「リアリティ」が薄れてしまうことが多々なのでありますが…。)
「イヤなリアリティー」…関よしみ先生の作品を読み取るキーワードの一つでありましょう。

「血を吸う教室」「マッドハウス」と頂点を極めた次に、「向こう側に突き抜けてしまった」のが、この単行本「壊れた狂室」であります。
 ぶっちゃけますと、「イッチャッテル」作品ばかりです。
 こう書くと、けなしているみたいですが、他のマンガ家さんの作品でこの次元にまで達したものは、私の記憶にありません。
 稀代のトラウマ・メーカー、関よしみ先生の面目躍如といったところですが、関よしみ先生の作品を初めて読む人にはお勧めできません。
 他の作品を読んで、ある程度免疫を持ってから、読んでくださいね。

 
2015年3月20・22日 ページ作成・執筆
2016年8月5日 加筆訂正

講談社・リストに戻る

メインページに戻る