成毛厚子「復讐の仮面」(1984年6月14日第1刷発行)

 収録作品

・「復讐の仮面」
「華やかな姉の絵里と対照に、陰気な妹の亜希。
 姉の恋人、俊也に憧れ、演劇部に入部するが、セリフ一つ、まともに言えない。
 ある日、亜希は、姉の命令で、「マクベス」で使う、魔女の仮面を古道具屋に買いに行く。
 そこで、彼女は、見るからに不気味な仮面を手に入れる。
 その仮面は、かぶって、憎い相手を呪うと、相手が不幸になると言われる、アンナ=マリア=シュベーゲルの仮面であった。
 この仮面を用いて、亜希は姉を破滅させようと目論むが…」
 「色きちがい」のセリフが 「悪夢」に再録された際には、「いやらしい」に変更されております。

・「黒猫の章」
「夏休み、心臓に病気を抱える冬美は、千代子の祖母の実家に養生に訪れる。
 その家の仏壇には黒猫が棲みついており、その奥には、即身仏が祀られていた。
 冬美が、仏壇にあった古文書を調べると、即身仏は、渋川利右エ門という、殿様に仕えた医者であることが判明する。
 渋川利右エ門は、不老不死の薬を作るよう、娘を人質に取られ、十余年後に完成するものの、その頃には娘は獄死。
 怒った彼は、そばにいた「長緒」というものに薬を飲ませ、自分は少し嘗めて、即身仏になったと書かれていた。
 余命いくばくもない冬美は、不老不死の秘密を求め、長緒を探すのだが…」

・「呪いの泣き声」
「奈津美の部屋の向かい側に住む同棲カップル。
 激しい喧嘩をした後、どうも様子がおかしいので、奈津美は向かいの部屋を訪ねてみる。
 部屋には衰弱した女性が一人、床に臥していた。
 彼女は奈津美の訪問を快く思っていないふうであったが、なりゆきから、奈津美にゴミを捨てるよう頼む。
 ゴミ捨て場にい行こうとしたところ、奈津美は学校に遅刻しそうになり、そのゴミ袋を近くの花畑へ捨てる。
 その夜、隣人の女性は心臓麻痺で急死。
 実は、彼女は、男に捨てられた直後、一人で出産をしていたのであった。
 赤ん坊の死体は、奈津美が捨てたゴミ袋の中に入っており、奈津美は堕胎に加担したことに慄然とする。
 以来、彼女は水子の霊につきまとわれるようになり…」

・「悲しみの数えうた」
「両親を亡くした、みつは、唯一の肉親である姉に会いに緒方家の屋敷へ行く。
 姉のさとは、久造という恋人がいたにも関わらず、身売りに近いかたちで緒方家に嫁がされていた。
 しかし、さとは既に亡くなっており、緒方家では家の恥扱いされていた。
 みつは、新しい女中をふりをして、緒方家に入り込み、姉の死の真相を探る。
 さとは久造と密会をして、女児を身籠ったため、座敷牢に入れられ、衰弱死したのであった。
 久造もまた激しい暴行を受け亡くなり、二人の子供、美都は屋敷では冷遇されていた。
 みつは、美都が知恵遅れであることを利用して、さとの幽霊を演出する。
 そして、姉を死に追いやった、緒方家の主人を追い詰めていくのだが…」

・「黒いバラはよみがえる」
「康彦と純子の間に産まれた雄吾。
 純子は、雄吾が麻矢の生まれ変わりに思えて仕方がない。
 麻矢は、彼らが学生の頃、同じ心霊クラブに所属していた。
 康彦に惚れていた彼女は、純子が彼を奪い取ったと逆恨みをして、転落死する直前、生まれ変わったら呪ってやると言い残す。
 それから、数年後、雄吾の腕に、麻矢の腕にあったのと同じ、黒バラの刺青が浮かび上がる時、麻矢の復讐が始まる…」

・「ノアの子供たち」
「陸上部のエース、未来(みき)は大の水恐怖症。
 夏の大会を控え、練習に励むが、どうも身体が重くて仕方がない。
 帰り道、彼女はあやまって川に転落、しかし、水中を自在に泳ぐことができ、開放感に満たされる。
 川から上がると、彼女の前に、外人の男性が現れ、何かあったらここに来るようにと紙片を渡す。
 翌日、目が覚めると、彼女の両足は癒着していた。
 病院へと運ばれるが、原因も治療法も一切不明。
 病院で、彼女は、彼女と同じように両手の指が癒着した青年と知り合う。
 二人は研究所に送られる前に、病院を脱け出し、紙片に書かれた「Noah's Ark」という場所へ向かう。
 そこで彼らが知る「自然の摂理」の働きとは…?」

2019年3月7・8日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る