井上敏樹・作/松森正・画
「オメガ@」(1996年4月23日第1刷発行)
「オメガA」」(1997年5月23日第1刷発行)
「オメガB」」(1997年9月23日第1刷発行)


・「オメガ@」
「ある夜、日本の産婦人科医院で、男児が妊婦の腹を突き破って産まれる。
 男児は自分でへその緒を切り、這いずって、分娩室から出るが、徐々に成長し、成人男性となる。
 雨に打たれながら、彼が最初に考えたことは「私は誰だ?」であった。
 その頃、チベットのある寺院で、僧侶達は「カイ」の復活を知る。
 慌てて、彼らが寺院の奥深くに封印された「Ωの棺」を開放すると、その中には、両手両足のない女型の人形があった。
 僧侶達は、それを日本に運び込むものの、トラックで運搬の途中、事故を起こす。
 トラックは高速道路から川へと転落、Ωの人形は川に流される。
 その後、岸に打ち上げられた人形の手足の穴から黒色の液体が流れ出し、あるマンションの一室を目指す。
 その部屋には、ボクサー崩れの飛刃史郎と、その恋人でジャーナリストの鮎原亜紀が住んでいた。
 黒い液体は、二人が寝ている間に、口に入り込む。
 一方、「カイ」は、三流モデルの岡安ちはるに望むものが全て手に入るようにする。
 彼女を知ることで、人間とは何かを知り、そして、自分を知ろうとしたのであった。
 ちはるは、誰にも負けない美貌、世界一の才能、そして、今まで彼女をバカにした人間への復讐を欲し、また、彼女の欲望は限りがない。
 ある時、亜紀は、ちはるが先輩の女性タレントをネック・ハンギングしている場面に遭遇し、それをカメラに収める。
 それを知った、ちはるは、フィルムを奪おうと、亜紀をどこまでも追いかける。
 彼女は史郎を呼ぶも、ちはるはモンスターに変身。
 その時、史郎の身体にも異変が起きようとしていた…」
(「月刊アフタヌーン」1995年6月〜12月号、1996年2月号)

・「オメガA」
「岡安ちはるの次に「カイ」が選んだのは、森下さおりという娘。
 彼女は清溟高校の生徒で、頭脳明晰、容姿端麗、かつ、腹黒という非の打ち所がないお嬢様であった。
 彼女は非常にプライドが高く、他人は自分よりも劣ると考えていたが、一方で、惚れた克彦にはマフラーを手編みするという純なところもある。
 しかし、完璧と自惚れていた彼女は、生徒会会長の選挙で、校長の策略で恥をかかされ、更に、克彦に裏切られ、凌辱されてしまう。
 「カイ」は、ズタボロになった彼女に、彼女の望みを叶えると告げる。
 彼女本来の「意志」は胎内に宿り、彼女はそれを抑えようと努めながらも、歯止めがきかない。
 彼女はどのように花開くのであろうか…?
 そして、意志の暴走した彼女の前に、柩真澄という男が現れる。
 彼は、Ωの人形に選ばれた、第二の戦士であった。
 一方、飛刃史郎は、最初の戦いの後、意識不明の状態が一か月も続いていた。
 恐ろしく高熱の他は異常は見られず、原因は全くわからない。
 鮎原亜紀は、彼の看病を続けるが、彼女の身体にも異変が起き始める…」
(「月刊アフタヌーン」1996年2月〜11月号)

・「オメガB」
「柩真澄と鮎原亜紀は、富士の樹海(?)の地下にある「ギヨム派密教」の寺院へと案内される。
 そこで「Ωの人形」は無作為に力を授けるものの、その力に耐えきれないものは死滅すると知らされる。
 亜紀は恐慌をきたすが、その時、瀬名俊郎という医者が二人の前に現れる。
 末期癌で余命いくばくもない彼は「カイ」と出会い、新しい肉体を得るために、人を襲っては、その内臓を収集していた。
 集めた内臓は結合して、モンスターと化し、亜紀を丸飲みにする。
 その中から現れたのは、モンスターに身を取り込まれた亜紀であった。
 その頃、意識不明状態の飛刃史郎は、亜紀の助けを求める声を聞き、目を覚ます。
 彼は彼女を救うことができるのであろうか…?
 そして、第四番目の戦士、卓也。
 彼は、良い家の生まれであったが、自分の意志を持つことを許されないまま、生きてきた。
 孤児の少女、鈴木美里と出会ったことで、彼は「弱い人たちを助け」ることに、自分の力を使うことを決める。
 だが、突如、彼女の身体は浮き出し、「カイ」へと変身する。
 「カイ」と「Ωの戦士」達の決戦の行方は…?」
(「月刊アフタヌーン」1996年12月〜1997年9月号)

 松森正先生が「現代版・スーパーヒーローもの」に挑戦した作品です。
 原作は脚本家として著名な井上敏樹氏、SFXデザインは雨宮慶太氏と豪華な顔ぶれですが、出来は正直なところ、玉砕気味です…。
 「エヴァ」風に、設定や世界観はスケールがでかく、意味不明な単語がばんばん出てきて、何か凄そうではあるものの、それらの説明はほとんどなされないまま、迎えるラストは絶句です…。(イヤ、ほんま、読めばわかります。)
 個人的には、「スーパーヒーローもの」として読むよりも、「肥大化した欲望や感情に押し潰されていく人々を描いたモンスター・ホラー」(単行本二巻の前半は白眉)として捉えた方が正解だと考えております。
 異色の作品ではありますが、松森正先生はやはり「いい仕事」をしておりまして、一読の価値はあるのではないでしょうか?

2021年6月8〜10日 ページ作成・執筆

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