渡千枝「寄生虫」(1995年4月13第1刷発行)
収録作品
・「寄生虫」(1993年「MIDORI」10月号掲載)
「大久保修子は、人気作家、秋川圭のゴーストライター。
圭と修子は異母姉妹で、修子は、圭に恩があるために、ずっと自由を奪われていた。
作家として独り立ちしたいと願うも、姉にその夢を潰され、ある夜、彼女はバーでヤケ酒を呷る。
朝、目覚めると、ベッドには朝彦という青年が一緒にいた。
彼女は自己嫌悪に陥るが、朝彦の包容力のあるキャラに、安堵を覚える。
以来、彼との同棲生活に入ると、彼女の運命は徐々に好転し始める。
そんな時、圭が遺書を遺して、服毒自殺をする。
修子は作家として脚光を浴びることになるが、姉の死への疑惑がぬぐえない。
その疑惑は、朝彦へと向かっていき…」
・「幻の砂時計」(1995年「BE・LOVEパフェ」4月号掲載)
「萩原菜子は外資系会社の第一秘書。
彼女は、青春でもあり理想でもあったロック・アーティスト、清田悠也の急死に、ショックを受ける。
そんな彼女に、同じ会社の今井という男社員から、ある寺について聞かされる。
亡くなった人の百箇日に、その寺で供養すると、亡くなった人と似た人と会えるらしい。
藁にもすがる思いで、菜子が言われた通りにすると、帰り道、成瀬裕次という男性と出会う。
彼は、清田悠也に容貌が似ており、性格は快活で、そばにいて安心できるタイプであった。
彼女は彼に夢中となり、彼と共に、観劇や海外旅行をして楽しく過ごす。
有頂天な彼女は、結婚したクラスメートや会社の後輩を頭の中で蔑んでいたが、時は流れ…」
・「過去からの使者」(1994年「MIDORI」8月号掲載/原作・山村正夫「悪い虫」)
「垂水杏子と恵子は、この世でたった二人の姉妹。
姉の杏子は、高校卒業後、OLとして働き、恵子を大学にまで行かせてくれた。
その杏子にも幸せが訪れ、竹宮五郎という男性と結婚する。
ある時、杏子の義母の看病で留守にするため、恵子は杏子のマンションから通うこととなる。
そこで、彼女は、東京日報の田代恭三という男に、姉と間違えられる。
彼から話を聞くと、姉は過去、この男の金を盗み、警察に被害届を出されているらしい。
しかも、姉が金を盗んだ理由は、恵子が起こした事故の賠償金のためであった。
恵子は、杏子の代わりに、その金を立て替えるのだが…」
・「リーインカーネーション」(1994年「MIDORI」5月号掲載)
「雑誌記者の加川朝子は、カメラマンの日野と共に、魔岳渓谷の木島荘を取材に訪れる。
そこに向かうにつれ、朝子は周囲の風景に既視感に襲われ、木島荘を一目見た時は、心から懐かしく思う。
同時に、聡という少年のことが脳裏に思い浮かぶが、聡は木島荘の主人であった。
だが、聡は46歳で、朝子とは年が二十以上も離れており、実際に接点があるはずがない。
朝子は、これは過去の記憶で、水底に女性の白骨死体があった夢も関係があるのではないかと考える。
一方、宿の女将は、朝子に不審の目を向ける。
朝子は、徐々に過去の記憶を取り戻していくのだが…」
この中では、「幻の砂時計」が大好きです。
実に身につまされる内容です。
2020年5月20日 ページ作成・執筆