高階良子「ピアノソナタ殺人事件」(1979年12月5日第1刷・1987年2月24日第34刷発行)

 収録作品

・「ピアノソナタ殺人事件」(「なかよしデラックス」昭和54年8・9月号所載)
「武蔵学園の理事長の娘、姫宮聖子は、女王様気取り。
 彼女専用の部屋は「聖子のサロン」と呼ばれ、取り巻き達に得意のピアノを演奏していた。
 いとこの柳川育は、家庭の事情で姫宮家の世話になったことのあり、聖子の引き立て役に甘んじる。
 聖子の前で、育は何をやってもダメで、比較され、笑われるだけの存在に過ぎない。
 ある日、生徒会長の村上は、音楽室で育が弾けないはずのピアノを弾き、聖子のように振る舞う場面を目撃する。
 以来、村上は育に興味を持ち、育に接近。
 育は村上に恋心を抱くが、勘違いから、村上は聖子に気があると思い込んでしまう。
 そんなある時、聖子のサロンに、浅野智子という女子生徒が訪ねてくる。
 智子は聖子にショパンのピアノソナタ「葬送」をリクエストする。
 智子が聖子にいつも憎しみのこもった視線を向けており、育は彼女が理科室から硫酸を盗み出すところも目にする。
 育は聖子に智子に注意するよう警告するが、当の聖子は全く聞く耳を持たない。
 そして、「葬送」の演奏される日、演奏の途中で、智子は部屋を出ていってしまう。
 何も起こらなかったことに育が安堵した次の瞬間、育は何かに気付き、声をかけようとするが、身体が固まったまま、何もできない。
 皆が育の奇妙な振る舞いを訝っていると、聖子が突然悲鳴を上げる。
 彼女の顔には硫酸がかかり、錯乱した聖子は窓から転落死。
 しかし、誰も聖子に硫酸の瓶を投げつけた者はおらず、また、天井付近にも瓶を設置した跡は見当たらず、事件は迷宮入りとなる。
 聖子の死後、すっかり憔悴した育は、聖子の幻に憑りつかれ、錯乱の度合いを深めていく。
 更に、事件のあった部屋では、聖子の幽霊が出るという噂が立つ。
 育を救うために、村上は事件の解決に乗り出すのだが…」

・「ホープダイヤの赤い呪い」(「なかよし」昭和53年4月増刊号所載)
「両親に先立たれ、市長のもとで世話になっている少女、エリ。
 彼女は森で不思議なブルー・ダイヤモンドのネックレスを手に入れる。
 エリにはそのダイヤの声が聞こえるのであった。
 しかし、市長の娘、美加はそのダイヤを横取りして、誕生日パーティで身に付ける。
 そのパーティにインドの宝石王、ベータ=パンジャがひょっこり訪れる。
 その青年はエリがダイヤを手に入れた時に、森で出会った人物であった。
 パーティの席で、そのダイヤは、不幸をもたらすと言われる呪いの「ホープ・ダイヤ」の模造品であることが明らかになる。
 ヒスを起こす美加に、パンジャは模造品でもかまわないから、譲ってほしいと持ち掛ける。
 その代わりとして、美加はパンジャに一週間、毎日付き合うよう条件を出す。
 それを聞き、パンジャに一目惚れしたエリの心は千々に引き裂かれるのだが…」

・「ばらのためいき」(「なかよし」昭和53年6月増刊号所載)
「昔ながらのお屋敷町に迷い込んだ、大学生の矢沢陽一。
 高い塀の向こうから飛んできた小鳥を持ち主に返そうと、彼はある屋敷の玄関の呼び鈴を鳴らす。
 小鳥の持ち主は、エレという名の美しい少女であった。
 だが、彼女は塀の向こうの外界のことはほとんど知らない様子であった。
 邸で、陽一は広崎と名乗る女性と出会う。
 彼女はエレの肉親かどうかもわからないにも関わらず、エレのことを「宝」と断言する。
 去り際、陽一がエレをデートに誘うと、エレはひどく取り乱す。
 エレと別れた後、陽一は彼女のことが気になって仕方がなく、それはエレも同様であった。
 二人が再会した時、陽一はエレを塀の外に連れ出そうとするのだが…。
 エレと広崎という女性の世にも奇妙な関係とは…?」

 「ピアノソナタ殺人事件」は、ミステリーとサイコ・スリラーが融合した名作です。
 それにしても、怪奇マンガではしょっちゅう「ちゃらり〜棚から硫酸〜」しておりますが、元ネタは何なのでありましょうか?
 「ホープダイヤは赤い呪い」は、高階良子先生のエキゾチズム嗜好が窺えます。
 でも、扱っているのは「呪いのダイヤ」でホラーものかと思いきや、やっぱり「ラブラブ」でしめてくれます。
 「ばらのためいき」は、実はかなりヘビーな作品で、隠れた名品だと思います。
 土蔵での、下着姿のヒロインの拷問描写はなかなかに「エロス」です。(うつろな目付とか手描きの「あう」とか味わい深いです。)

2017年7月22日 ページ作成・執筆

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