のがみけい「死面の肖像」(1984年11月14日第一刷・1987年6月15日第二刷発行)

 収録作品

・「死面の肖像」
「水谷彰彦と礼香は二人だけの兄妹。
 兄の彰彦は若いが、才能のある建築家で、絵を集める趣味があった。
 彼のアトリエには幻想的な(言い換えると、気味の悪い)絵が多く飾られ、礼香は辟易していたが、ある時、彰彦は美しい女性の肖像画を手に入れる。
 以来、礼香は家で何者かの視線を感じるようになる。
 また、兄は次第に憔悴し、アトリエに閉じこもるようになる。
 中で彼は酒に溺れ、ただひたすら笑い声をあげていた。
 礼香は兄の後輩の高寺昇に電話で助けを求める。
 彼女の話を聞き、昇は「死面」の迷信を思い出すのだが…」

・「白蓮鬼(びゃくれんき)」
「本床茜は父親のわからぬ私生児で、三つの時、母親を亡くしてから、親戚を転々としていた。
 彼女が一端の娘になった頃、京都に住む室町操という女性に引き取られる。
 室町操は手描き友禅の第一人者で、完全主義者として知られていた。
 彼女は茜の母親の知り合いで、茜に自分の娘になり、跡をついでくれるよう頼む。
 だが、京都で芥川一馬という青年と再会したことから、操のある一面が明らかになっていく。
 室町家で茜を呼ぶ声は誰のものなのであろうか…?」

・「人形の時」
「人形家の小野寺光遥の作る人形は妖美であったが、呪われているとも言われる。
 と言うのも、今年に入り、彼の人形を手に持った人が五人も死因は様々だが亡くなっているからであった。
 フリーのルポライターの中川昌子は小野寺光遥に興味を持ち、彼が住み込み女中を募集しているのを利用して、屋敷に潜入する。
 彼女の想像に反して、小野寺光遥は物静かでハンサムな男性であった。
 彼は亡き妻の妹である美鳥と共に住んでいたが、美鳥はまるで生きた日本人形のような美少女で、何を考えているのか全くわからない。
 住み込むうちに、昌子は光遥が自分の作った人形を焼き捨てていることに気付く。
 美鳥が言うには、彼は「人形しか愛せない人」らしいのだが…。
 彼の人形に宿っているものとは…?」

・「竹の秋」
「春。
 田代絵麻は数年の東京暮らしの後、故郷に戻る。
 彼女の故郷は竹の里と言われ、広大な竹林があった。
 絵麻の父、銀三は竹林を潰し、レジャーランドを作る計画を立て、そのために、絵麻と片岡産業の次男、高臣との縁談を進めていた。
 しかし、村人達は「竹の精」を恐れ、レジャーランド建設計画には反対する。
 また、銀三の土地はもとは庄屋の一色家の土地であり、一色家の娘、悠はいまだに村人達の尊敬を集めていた。
 絵麻は何故か悠に惹かれていくのだが…。
 そして、竹の花が咲く時、この村に伝わる伝説が甦る…」

 ベテランだけあって、実に読みごたえのある短編集です。
 作者の資質か、ショック描写よりも、人間ドラマの方を重視しており、怪奇マンガとしてはあっさり風味です。
 単行本のベストは伝説と人間ドラマが複雑に絡み合う「竹の秋」でしょう。(若干、わかりにくいところがありますが…。)
 「人形の時」は「人形もの」でありながらも、人形が大して怖くないという異色作です。

2023年6月22日 ページ作成・執筆

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