佐伯かよの「紅いラプンツェル」(1994年2月12日第一刷発行)

 収録作品

・「紅いラプンツェル」
「本田拓人は小柄で、明るい、普通の高校生。
 だが、彼には、人類の未来を左右させるほどの超能力が備わっていた。
 彼の叔母、滝沢理絵は、彼が二歳の頃から駿河科学研究所の科学者、田島に彼を通わせて、力をコントロールする術を教える。
 ある時、ツアーコンダクターを勤める理絵は、新しい観光地を開発すべく、彼と共に北欧へと飛ぶ。
 だが、滞在する予定のホテルが倒産して、クレル館のスレッショルドという女性に差し押さえられていた。
 二人は彼女の好意で、クレル館に四日間、滞在することとなる。
 そこで、拓人は、ディアーヌという少女が母親を求める声を心の中で聞く。
 その声は以前から何度か、聞こえていたものであった。
 彼が、声のもとである塔にテレポートすると、そこには真紅の瞳にプラチナブロンドの少女が幽閉されていた。
 狭くて冷たい部屋の中、彼女はポーニーという薄汚れた人形を抱え、ただただ母親を求めている。
 村人達やおば(クレル館の女主人)は、彼女が「じめんをゆらす」という理由で、魔女として迫害していた。
 拓人は、ディアーヌが超能力者と気付き、彼女に優しく接する。
 そして、おばによってクレル館から追い出された、彼女の母親を捜そうとするのだが…」

・「もしも…」(1973年「りぼん」4月増刊号)
「A市は三方を山、一方を海に囲まれ、交通機関は鉄道が一本だけという郊外都市。
 そこに住む女子高生の尾川優子はある夜、数日前に行方不明になった石丸勝芳を見かける。
 彼は何故か、犬や猫を連れており、その手は異様な程、冷たい。
 翌日、彼は学校に戻って来るが、中間テストで全科目満点を叩き出す。
 石丸だけでなく、今まで普通だった生徒がスポーツ万能になったり、成績優秀になったりしていた。
 優子は、彼らに何かが…それも、宇宙人が憑りついているのではないか?と漠然と考える。
 実際、この町では行方不明者が続出していた。
 ある夜、優子がBFの三知夫といた時、大勢の人が、夢遊病者のように城跡に向かっていくのを目にする。
 三知夫は彼らに混ざって、ことの真相を突き止めようとするのだが…」

・「地球最後の男の話」(1972年「りぼん」夏の増刊号)
「1973年。
 鶴谷浩助(22歳)は、一月後に結婚が控えているにも関わらず、人口冬眠装置の実験代に選ばれる。
 そして、三百年後に彼は送られるが、何故か、23世紀の社会では彼は危険視され、監視付きの生活を送る破目となる。
 とは言え、生活の保障はあり、南田ロミーという娘が彼の世話をする。
 何と、彼女は彼の婚約者とそっくりであった。
 浩助は彼女に「結婚」や「愛」について話すが、彼女は全く理解ができない。
 ある日、監禁生活に飽きた彼は、ロミーに頼み込み、夜の町へひそかに外出するのだが…」

・「迷路」(1974年「りぼん」9月号)
「九月一日。新学期の日。
 岡田志津子は、幼馴染の勢一と共に、学校に向かって走っていた。
 だが、彼らの先で二台の自動車が正面衝突を起こし、このままでは道は通れない。
 遅刻しそうな志津子が事故現場のそばの電柱と壁との間を通り抜けると、一瞬、奇妙な感覚に襲われる。
 大して気にせず、学校へと行くが、そこにあるはずの学校がない。
 しかも、誰も…家族さえも…彼女のことを知らなかった。
 途方に暮れた志津子は夕方、勢一と会う。
 彼も彼女のことを知らなかったが、彼女が彼のことに詳しいことを知り、彼女の話に耳を傾けてくれる。
 彼は彼女が「パラレルワールド」に迷い込んだのではないかと推理するのだが…」

・「恐怖とのそうぐう@〜D」
 「昔っからその手の感性は全く持ち合わせて」いない佐伯先生の恐怖体験を描いたもの。
 一番怖いのは、他の漫画家さんと同じく、締め切りらしいです。

 この単行本では他の単行本ではなかなかお目にかかれない初期の作品が収録されております。
 個人的に最も印象深かったのが「もしも…」で、粗筋を読めば一目瞭然ですが「ボディ・スナッチャー」ものです。
 最近、思うのですが、怪奇漫画家なら誰でも一作は「ボディ・スナッチャー」ものを描いているのでは?
(古くは、水木しげる先生の貸本作品「呪われた村」があります。誰も知らないけど、山口勇幸先生「からす」もよろしく!!)
 その手の作品をまとめて紹介してみたら、おもしろいかもしれません。

2020年9月11日 ページ作成・執筆

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