曽祢まさこ「幻想組曲 ―ばらによせて―」(1993年5月13日第1刷発行)

 収録作品

・「幻想組曲 ―ばらによせて―」
「第一話 マリーナ」
 庭の花木の世話が「命」の少年、ジョゼ。
 ある日、マリーナという美しい少女が彼の庭に迷い込む。
 彼女を一目見て、ジョゼは庭に「淡いピンクのばら」が足りないことに気付く。
 マリーナはクラスメートのティトのいとこで、隣のクラスに転入する。
 彼女はジョゼに関心を持っているようだが、ジョゼは庭に植えた花木のことで頭がいっぱい。
 彼が植えた、ピンクのばらは華麗に花開くが、彼にとってはマリーナの面影の足元にも及ばない。
 そこで、鉢植えにして、一輪だけを咲かせることにする。
 丹精した甲斐もあり、バラは花開く時を迎えるが…」
「第二話 危険なつぼみ」
 そのバラの下で、五人の子供達が「秘密ごっこ」をする。
 それは、自分だけの重要な秘密を打ち明けて、その秘密は絶対守るというものであった。
 四人がそれぞれの秘密を話し、エルシーの番が来る。
 彼女の秘密とは、父親を殺したことであった…」
「第三話 白ばら伝説」
 昔、夕焼けの向こうにある王国。
 その城の庭園の中央に、月光と見まがうような美しい白ばらの樹があった。
 王様にとって白ばらの樹は宝物で、何よりも大切にする。
 秋も深まったある日、森に狩りに出た王様は、ブランシュという美しい娘と出会う。
 王様はブランシュを妃に迎え、彼女も王様にならって白ばらの樹を心を込めて、世話する。
 やがて二人の間には王子が産まれるのだが、ある日…」
「第四話 ばら館の夜」
 クリスは、結婚予定のゲイルと、山中の別荘を訪れる。
 別荘の至るところにバラが植えられており、館は見事な蔓バラが屋根にまで達していた。
 別荘には使用人夫婦以外に、ゲイルの前妻であるスザナとの間の息子、アドリアンがいた。
 スザナは病弱で、ゲイルは仕事に忙しく、ろくろく構わないうちに、この別荘で八年前に死去。
 アドリアンはスザナ似で、父親のゲイルを嫌っていた。
 また、クリスに対しても、アドリアンは心を決して開こうとせず、不敵な笑みを浮かべるだけであった。
 別荘に滞在し始めてから、クリスの周囲ではおかしなことが続発。
 そんな中、ゲイルが急な仕事で別荘を離れる。
 クリスは今までの不審な出来事はアドリアンの仕業と気づき、彼に詰め寄る。
 すると、アドリアンはようやくその本性を表す。
 彼は、母親を悲しませるやつは許さないと言い、クリスに家から出ていくよう勧める。
 クリスは拒否して、家に残るが、その夜…」
「第五話 騎士と青いばら」
 ビオランテ姫に求愛する騎士エルネスト。
 姫の求めとあらば、東の国に銀のばらを、南の国に金のばらを取りに行く。
 艱難辛苦を乗り越えて、エルネストは銀のばら、金のばらを入手する。
 しかし、姫はそれらのばらよりも美しいと言われる、北の国の青いばらを望む。
 エルネストは北の国に向かうが、青いばらは二匹の竜に守られていた…」

・「少女たちは午後…」('77「なかよし7月号増刊」)
「静かな、小さな田舎町。
 アルベールは元気いっぱいの少年。
 その他の少年達と同じく、多少、がさつで乱暴ではあるが、元気いっぱい。
 ある日、アルベールは、妹のリセットとその友達の少女達が何をしているのか、ふと疑問に思う。
 妹がサロンと呼んでいる、西の部屋で少女達の行動を確かめようと、アルベールは部屋のクローゼットに忍び込むのだが…」

 なかよしコミックスを、併録の作品を「風の墓標」から「少女たちは午後…」に替えて、再刊したものです。
 表紙と中表紙も新たに描きなおされております。
 ただ、目次で「少女たちは午後…」が「幻想組曲」の第六話となっているのが釈然としません。(「少女たちは午後…」にバラは出てきません。)

2017年8月18日 ページ作成・執筆
2021年11月3日 加筆訂正

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