井出知香恵「カオスの封印」(1988年8月12日第一刷発行)

 収録作品

・「カオスの封印」
「父の死により、十数年ぶりに母の故郷に帰ってきた荻野一家(母親、兄の志郎と妹の由布子の三人)。
 母親は何故か産まれた時から由布子に冷たく、由布子は兄志郎への想いだけを心の支えに今まで生きてきた。
 故郷の町で、大きな洋館を見た時、由布子は既視感に襲われる。
 その洋館は、火緒加(ひおか)館と呼ばれ、母親と兄妹が住んでいるという。
 火緒加一族はこのあたりでは由緒ある家柄であったが、鬼が棲むと噂され、近寄る人はいなかった。
 学校でも孤立している火緒加まゆみに、荻野由布子は手を差し伸べ、二人は仲良くなる。
 だが、霊能学者の老人が人体を粉砕されるという怪事件が起こり、火緒加一族への疑惑が増す。
 また、この事件に乗じて、火緒加館を狙っていた悪徳不動産業者が火緒加の兄妹を襲おうと画策。
 休日、兄と共に、火緒加館を訪れた由布子は、庭の隅にあるゴムの壁でできた小屋から呼ばれているように感じる。
 稔はここに彼の母親が住んでいると説明するが、彼は由布子についてもっと深く何かを知っている様子であった。
 由布子に秘められた「カオスの封印」とは…?
 惨劇の中、由布子の出生の秘密が明らかになる…」
 何故かコンビニ本「実話投稿 実際にあった霊体験」(大都社)に再録されております。

・「嘆きのメデューサ」
「母の死後、花瀬容子は親戚の西井家に預けられる。
 いとこの西井絵里はわがままで容子からあらゆるものを奪い、伯母も彼女には冷たかった。
 片想いをしていた先輩の須貝までも絵里に奪われ、容子は自分の夢を追い求める決意をする。
 彼女の夢はヘア・デザイナーであり、この世界ではカリスマのシェリー花岡に師事する。
 シャリ―花岡は年齢も出身地も不明で、十年前にこの世界に彗星の如く現れてから、たちまちトップに躍り出た。
 プライベートで謎が多く、様々な噂が囁かれていたが、ただ一つ奇妙なのは、彼女の弟子が何人か突如失踪していることであった。
 絵里のもとから離れ、容子はシェリー花岡の下で伸び伸びと働いていたが、その幸せは長くは続かない。
 西井絵里が、スポンサーの娘かつ有望な新人として、シャリ―花岡に入門したのである。
 実は、容子の母親は、絵里の父親の愛人であり、絵里はそんな容子を憎悪し、どこまでも踏みつけにするつもりだった。
 その事実に打ちのめされた容子は、慰めてくれた先輩の頼みを引き受け、シェリー花岡のアトリエに荷物を届けに行く。
 好奇心に勝てず、容子がアトリエに忍び入ると、頭の中で彼女を呼ぶ声が聞こえる。
 声に招かれるまま、腐臭の漂う地下室に足を踏み入れると、そこに異形のものがいた。
 驚いて、容子は地下室から逃走、その後姿をシャリ―花岡は目撃される。
 数日後、容子に使いを頼んだ先輩が急に辞めたと知らされる。
 容子はシェリー花岡が怪しいと睨み、大学生の須貝に頼んで、シャリ―花岡の過去を探る。
 須貝と容子との仲を嫉妬した絵里は、このことをシャリ―花岡に告げ口する。
 ある夜、容子はシェリー花岡にアトリエに連れて行かれ、脅されて、地下室に入れられる。
 彼女がそこで目にしたものとは…」

・「銀色のソバージュ」
「小峰かおるは、ヘア・デザインが得意な女子高生。
 だが、それは本人の意思でなく、着物姿で長い黒髪の女性の姿が頭に浮かぶと、無意識にやってしまう。
 更に、この現象は、かおるの姉の死後から始まっていた。
 かおるの姉、小峰摩矢は新進デザイナーとして有名だったが、ロングヘア―をソバージュに変えた翌日に原因不明の死を遂げる。
 かおるの恋人、豊は小峰摩矢が北陸旅行に出た後に、ヘア・デザイナーの才能を開花させたことに目を付け、その旅行の時の写真を調べる。
 すると、ある寺の写真にかおるの夢に出てくる女性の掛け軸が映っていた。
 かおると豊がN市の浄源寺を訪れると、例の掛け軸は、お市の方の「おぐし係」であった縫(ぬい)という女性を描いたものとのこと。
 摩矢、そして、かおるに憑りついた縫の霊の願いとは…?」

 あまり詳しくはないのですが、レディース・コミックの世界では大御所の井出知香恵先生の怪奇マンガを集めた単行本です。
 「カオスの封印」と「嘆きのメデューサ」は非常にグロく、「カオスの封印」ではヤクザの一味を木端微塵にしちゃってます。
 個人的なお気に入りは「嘆きのメデューサ」で、この作品はよくできていると思います。
 ちなみに、表紙にはヌードの娘さんが描かれておりますが、作中にはこんなサービス・シーンはありませんでした。あしからず。

・備考
 小口にシミあり。カバーに折れ痕あり。

2017年11月10日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る