成毛厚子「死霊のうめき」(1990年7月13日第1刷発行)

 収録作品

・「死霊のうめき」(「平成2年発行 少女フレンド1月15日増刊」所載)
「カオルは、受験勉強中の弟、孝助がうとましくて仕方がない。
 孝助は受験勉強で神経質になっており、カオルはゆっくりとビデオも観ることができない有様。
 ある日、カオルが憧れている仲尾が働いているビデオレンタルで、カオルは彼が勧めるビデオを借りる。
 アクションものと言われていたが、実際は、男二人が延々と訳のわからない話をするという退屈な代物。
 それでも観ていると、突如、画面が止まり、画面の中のガラス窓に男の子の姿が映っていた。
 気のせいと大して気にしていなかったカオルは観ている途中で寝てしまう。
 カオルのたてる騒音に頭に来た孝助は、ビデオに悪戯して、内容を消してしまう。
 それがばれて、孝助はカオルに電灯を消したトイレに閉じ込められる。
 孝助は、小さい頃から、カオルに緑のウロコの怪物の話を幾度と聞かされ、大きくなってからも、暗所恐怖症であった。
 暗闇で怯える孝助の背後に小さな影が立っていた。
 孝助の悲鳴を聞き、カオルはトイレのドアを開けるが、この時から、カオルの周辺でおかしなことが起こり始める…」
 成毛厚子先生の作品には珍しいモンスターものであります。
 このモンスターがホラー映画の影響を受けている印象がありまして、感慨深いです。
「デッドリー・スポーン」ちっくですが、実は「エイリアン」かも…それとも「リバイアサン」?…いまいち確信が持てません。まだまだ修行が足りませんね。

・「緑泥夢 ー悪夢の棲む森ー」
「柴田真純は、人付き合いの苦手な女子中学生。
 彼女は、公園に住む野良猫に餌をやるのが心の慰めだったが、その公園も取り潰されることとなる。
 野良猫のことを心配した真純は、公園で人気歌手の氷川慎二と知り合うこととなる。
 氷川慎二は、真純の向かいの豪華マンションの屋上に住んでいた。
 野良猫はそこに飼われることになり、真純はいつでも猫に餌をやりに来てもいいと言う。
 しかし、真純はそこのマンションで奇怪な体験をいくつもする。
 エレベーターにいた少年、ベランダに群がる人の顔、壁を通り抜ける霊の姿…。
 どうも怪異の原因は、半ばボケた大家の老人が住む隣の部屋にあるようだが…」
 私は基本的に「バッド・テイスト」な怪奇ものが大好きなので、成毛厚子先生のマンガを読むと、たまに物足りなく思うことがあります。
 グロ描写や残酷描写を直截的にとことん描くのではなく、ぼかすことが多いような気がするんですよね。
 この作品のラスト、ジャングルと化した部屋でグルーピーどもを「血祭り」にあげたったらスカッとするのに…と思うのですが、まあ、これはあくまでも好みの問題なのであります。
 成毛厚子先生にすれば、そんな小手先のものに頼らなくても、怖い作品を描くことができるという自負があったのでしょうし、実際、多くの傑作を描いております。
 怪奇マンガでありながら、「センス」で勝負しようとする態度…そういうところに、私は惚れております。

平成27年4月19・20日 ページ作成・執筆

講談社・リストに戻る

メインページに戻る