犬木加奈子「不思議のたたりちゃん@」
(1992年8月11日第1刷・1995年1月5日第8刷・1995年11月5日第12刷・1996年6月5日第14刷発行)

「不思議のたたりちゃん その1」
・「新学期」
「ある中学校。
 新たな出会いを求めて、活発な雰囲気の中、一人机に座ったままの女子生徒、神野多々里。
 小学校からいじめ続けられてきた彼女は、積極的に人と触れ合うことができない。
 せっかく一人の女子生徒が話しかけてきても、あまりの暗さにドン引きされてしまう。
 それでも、多々里はいつかは友達ができることを信じるのであった…」

・「4月18日 青虫の気持ち」
「教室に迷い込んだ青虫を助けたことから、多々里は男子生徒、青田からいじめを受けるようになる。
 青虫呼ばわりされ、教科書や靴、遂には給食のスープにも青虫を入れられる。
 無益な殺生を悲しんだ多々里が、青虫の供養のために青田に下した「たたり」とは…」

・「5月10日 ゆがんだ自画像」
「マンガが上手と鼻高々の女子生徒、絵麻。
 しかし、美術の時間、多々里の絵の方が上手いと先生に言われて、怒り心頭。
 皆で寄ってたかって、多々里をなぶりものにするが、その夜、自分の絵の腕を試されることになるのであった…」

・「6月10日 花野先生がやってきた」
「美人で優しい、新任教師、花野咲子。
 しかし、その本性は、美しい外見とは裏腹で、ストレス解消のために、生徒をこっそりいじめるという鬼教師であった。
 花野先生のいじめの標的になった多々里は、花野先生がストレスをため込めないようにする…」

「不思議のたたりちゃん その2」
・「3月9日」
「放課後の掃除。
 クラスメートは多々里に掃除を押し付けて、遊んでばかり。
 そこで、多々里がとった「さかさたたり」とは…」

・「3月14日 バイキン」
「花粉症に悩む多々里は、ふとしたことから、キヨ子から「バイキン」と呼ばれ、いじめられることとなる。
 そこで、多々里は「バイキン」の大切さをキヨ子に思い知らせるのであった…」

・「3月19日 たたられたペンダント」
「絵麻が学校に持ってきたペンダントが体育の時間の間に盗まれた。
 冤罪をかけられた多々里は、そのペンダントが呪いのペンダントであることを告げる…」

・「3月24日 あんたなんか知らない」
「親友と喧嘩をして、孤立してしまった女子生徒、木崎。
 彼女は一人に耐えられず多々里に接近する。
 友人ができたと喜ぶ多々里であったが…」

「不思議のたたりちゃん その3」
「夏休み。
 恒例の肝試し大会に参加した多々里。
 ここで、寿留井(ずるい)と男子生徒が多々里に復讐する機会を待っていた。
 寿留井は期末試験で、多々里の試験の答案用紙をカンニングして、手痛い目にあっていたのであった。
 寿留井達三人は、多々里を木に縛り付け、肝試しの会場の墓場で大騒ぎ。
 その無礼な振る舞いに「たたり」が発動、彼らが迷い込んだところとは…」

 少佐、「サリー」は魔法使い、「タリー」は「たたりちゃん」なのであります。
 というわけで、「不気田くん」と並ぶ、犬木加奈子先生の代表作であり、大ヒット作であります。
 いじめっ子のリベンジを主題としたマンガには、藤子不二雄A先生の「魔太郎がくる」がありますが、あちらはひ弱でも男が主人公でありますから、「目には目を、歯には歯を」で復讐は直接的で徹底したものであります。いじめっ子は情け容赦のない、巨大な「力」の持ち主である場合がほとんどで、それに対抗するためには、こちらも「黒魔術」で同じような「力」を身につけなくてはいけません。いじめられっ子の夢想と言われれば、それまでですが、様々な手練手管を駆使して、毎度「半殺し」(以上の時もあり)にしてくれるのはなかなか爽快です。(そう思うのは、私が男だからでしょうか?)
 一方、「不思議のたたりちゃん」の方は、女性の手による作品のためか、「繊細さ」が身上。
 実際は平凡なティーネィジャーである、いじめっ子の方の心理も描き、復讐を果たしても、どこか寂しさの残るところが、思春期の少女達の心を鷲掴みにしたようです。

 かく言う私もそうでありました。
 私事で恐縮なのですが、20年以上も前、母がホラー映画・マニアだったクソガキだった私(小学校高学年〜中学校の頃)にある雑誌を買ってきました。
 なんの雑誌だったのかさっぱり覚えていないのですが、「不思議のたたりちゃん その1」が載っておりました。
 んで、読んで、「萌え」ちゃったのであります。(詳細は省きます。)
 いくら「春を思う」年頃だからって、見境なさすぎだろ〜と後年、思うようになり、長年、読み返す勇気がなかったのですが、この執筆を機に久々に読み返すと…
「おぅ、LOVELY〜」(←「八宝菜」を演じる、故・永井一郎の声で脳内再生してください。)
 うん、いいです、たたりちゃん!!
 個人的には、(当然ですが)100%の善人でないところが魅力です。(時々、ちょっぴり残酷で、ちょっぴり皮肉屋のところが感じ入ります。)
 これを書いている季節は春、春と言えば新学期、さあ、みんな、「たたりちゃん」を読もう!!

2016年4月13日 ページ作成・執筆

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