犬木加奈子「不思議のたたりちゃんD」(1995年7月13日第1刷・1995年12月5日第2刷発行)

・「11月3日(木) あやつられた文化祭」
「多々里のクラスの文化祭の出し物は、劇。
 主役になる気満々のヒガミの代わりに、多々里が主役を務めることになる。
 不器用な多々里には主役の荷が重すぎ、稽古は難航。
 それでも、監督の伊賀山は劇を成功させるために、クラスをまとめ、クラスメート達も多々里を応援する。
 その陰で、伊賀山とヒガミによって、ある陰謀が着々と進められていた…」

・「12月1日 影のあるヤツ 薄いヤツ」
「横暴な風紀委員長の江良井(えらい)と、その部下のヤナ夫。
 朝、二人に捕まった多々里は、逆に二人の髪を切ってしまう。
 これは、この二人に髪を切られた乃呂井かけるの「恨み念法(?)」のせいであった。
 二人は多々里の髪を切っただけでは腹が収まらず、その夜、下校途中の多々里を待ち伏せて、飼い犬に襲わせるのだが…」
 犬の描写が、藤子不二雄A先生を彷彿させます。
 「魔太郎がくる」にオマージュを捧げたのでありましょうか?(思い違いだったら、ごめんなさい。)

・「家庭科は針山・血の池地獄」
「家庭科でも相変わらずの不器用ぶりの多々里。
 些細なことから、ヒステリックな布目先生に目をつけられることになる。
 布目先生の冷たい言葉にもめげず、多々里は、拙いながらも、一生懸命に宿題のブラウスを仕上げる。
 だが、そのブラウスを多々里一人でやったものでないと、布目先生は引き裂くのであった。
 人の心を踏みにじる、その言動に、多々里は、針のような言葉がどのようなものか、布目先生に身をもって思い知らす…」

・「2月3日(金) 鬼喜多 そらきた 豆まきだ」
「節分の日、学校中で豆まきをすることになる。
 多々里を鬼にしようとしていたことが、鬼喜多先生にバレ、鬼喜多先生は激怒。
 それに反発したクラスメート達は、節分の日に、多々里と鬼喜多先生に復讐する計画を練る。
 そして、節分の日…」

・「ノロイのペット」
「多々里の机の中に入ったいた、多々里への贈り物。
 そのリボンタイを付けた時から、多々里は、意に反して、乃呂井かけるのペットとして行動するようになる。
 実は、このリボンタイは乃呂井かけるが呪いをかけたものであった。
 呪いに束縛されながらも、多々里はこのリボンタイに込められた思いを探り、突破口を見出す…」

・「あいたがま口」
「ちょっとしたことから、仲良しグループから爪はじきとなった、よし子。
 彼女は、物をおごって、関心を取り戻そうとするが、逆に、そこを付け込まれることとなる。
 追い詰められた、よし子は遂には多々里を巻き込み、多々里は財布を奪われてしまう。
 だが、よし子と元・友人達は、多々里のがま口に引き込まれ、そこでよし子は友達の意味を考えることとなる…」
 個人的に、名編だと思います。(何度読んでも、飽きません。)
 「紙幣の中に云々」は「地獄くん」を思い出して、ほっこりします。

・「ゲタ箱は猛犬注意!」
「何だかんだ言いながらも、多々里のことが大いに気になる、乃呂井かける。
 彼といじめっ子達は、多々里のゲタ箱にこっそりとゴミを入れるようになり、次第にエスカレート。
 あまりに卑怯なやり口に、多々里がゲタ箱に仕掛けた「番犬」とは…?」

・「笑う門には友きたる」
「そろそろ卒業式も間近な、ある日。
 乃呂井かけるによって、背中に「あたしにさわると たたりがあるよ」という張り紙をされた多々里。
 張り紙に気がつかない多々里はまたしてもクラスメートからいじめを受ける。
 その時、遂に堪忍袋の緒が切れた、よし子が、多々里をかばい、クラスメート達に抗議するのだが…」
 泣けます。
 いい話だと思います。

 多々里の後のパートナー(?)である、乃呂井かけるの出番が増え、ストーリーに幅が出て来たように思います。
 単なる勧善懲悪に終わらない、人情の機微に触れた話が多く、味わい深いです。
 やっぱり「名作」ですね。

2016年6月23日 ページ作成・執筆

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