犬木加奈子「不思議のたたりちゃんE」(1996年10月11日第1刷発行)

「その1 たたりちゃん誕生 ―多々里0歳―」
「ある嵐の日に産まれた、神野多々里。
 不注意な看護婦、赤田は多々里のせいで婦長に怒られたと逆恨みして、赤ん坊の多々里に様々な嫌がらせをする。
 そして、ゼロ歳児にして「たたり」デビュー!!(注1)」

「その2 よい子はおかたし ―多々里4歳―」
「幼稚園に入園した多々里。
 しかし、おもちゃで遊ぼうとしても、他の園児達が取り上げてしまう。
 皆と友達になりたい多々里だが、初日から爪はじき。
 最後には、多々里自身がおもちゃ箱の中にお片付けされてしまい…」

「その3 ここはだれの細道じゃ ―多々里6歳―」
「天国小学校に通うことになった多々里。
 相変わらず、一人ぼっちだが、祖父母の太助とお黄楊にもらった日記帳にで寂しさを紛らわす。
 ある日、下校途中、三人の女子生徒に因縁をつけられ、いつもの通り道を通せんぼされる。
 相手にせず、気丈に振る舞う多々里に、三人は更なる嫌がらせを加えるのだが…」

「その4 イスとり席とりゲーム 4月8日(月)」
「多々里も小学6年生。
 新しいクラスで友達をつくろうと努めるものの、やはり、皆から相手にされないまま。
 それどころか、顔は笑っているが、心根はダークな満福笑(顔が福笑いのあの人)に目を付けられてしまう。
 満福笑の企みにより、多々里は満福笑の椅子にされてしまうのだが…」

「その5 美少女の香り 4月15日(月)」
「テレビCMにも出たことのある、学校一の美少女、イバラトゲ子。
 クラスの席を決めるくじで、多々里はトゲ子の隣になってしまう。
 いい香りがするといい気分になる多々里だが、当のトゲ子は多々里と、ネズミ男ちっくな丸犬君に挟まれ、愕然。
 そんな最中、トゲ子はへ〜こいてしまい、それを多々里になすりつける。
 多々里は本当のことを言うが、クラスメート達は信じてくれず、多々里は総好かんを喰う。
 それどころか、トゲ子達にトイレに連れ込まれ、散々いじめを受けるのだった…」
 「トイレ」「いじめ」「うん○」…なかなか陰湿なエピソードです。

「その6 開いた開いた なんの花? ―4月30日(火)―」
「誰も手入れをしない、クラスの花壇を見かねて、世話する多々里。
 あるきっかけから、美化委員のなでし子に本当の花好きでないことを多々里は指摘。
 逆上したなでし子とその友人達によって、スカートを頭のところで結ばれ、つぼみ状態にされる。
 外に連れ出され、水やら泥やらぶっかけられるが、ふと気づくと、なでし子達によって、花壇が踏み荒らされていた…」

「その7 五月蠅(うるさい) ―5月30日(木)―」
「蠅は皆の嫌われ者。
 同じく皆の嫌われ者の多々里は、クラスの男子、木崎にハエ取り紙とガムテープでグルグル巻きにされてしまう。
 しかし、後の授業で、木崎は自ら望んで嫌われるものはないことを思い知らされることとなる…」
 レトロな方の「ハエ男」(昔はよくテレビ放映されていた、1958年版の「ハエ男の恐怖」)なのが、うれしいところ。
 ただ、今のホラー・ファンにとっては、「ハエ男」と言えば、デビッド・クローネンバーグの「ザ・フライ」なのかもしれません。
 個人的には、顔と片手がハエになっている「ハエ男」も、古い映画ではありますが、記憶に留めておいていただきたいところです。

「その8 働かざる者… ―6月11日(火)―」
「人とのつながりを求める多々里の思いを悪用して、パシリに使いまくる女子生徒達。
 いつかは友達になれると信じ、多々里は文句一つ言わず、彼女達に従う。
 ある給食室が休みの日、彼女達に弁当をつくるよう言われた多々里は、不器用ながら、頑張ってお弁当をつくり上げる。
 しかし、多々里の不細工な弁当を見た、女子生徒達は多々里の机に弁当の中身をぶちまけ、弁当箱には泥を詰める。
 自分の思いを踏みにじるだけでなく、食べ物を粗末にするその無神経さに、たたりが下る…」
 こういうファンタジックな話、好みであります。
 ちなみに、シンガーソングライターとしても有名(?)な本川達雄教授によると、小さい生物は実際に時間が早く流れるそうですよ。
(昔、「ゾウの時間 ネズミの時間」(中公新書)を読みましたが、ほとんど忘れちゃいました。)

「その9 カゲ口悪口はさんで捨てろ ―6月26日(水)―」
「ふと耳に入る、自分の陰口の端々。
 多々里の悪口や陰口を言いふらしているのは、影代という女子生徒であった。
 イメチェンをしても、陰口はやまず、多々里は勇気を振り絞って、言いたいことがあれば、直接はっきりと言うよう、影代に告げる。
 しかし、逆に自意識過剰と罵られた多々里は、影代の本性を「影」を使って暴き出す…」
 なかなかよくできたエピソードではないでしょうか?
 犬木加奈子先生の実体験かどうかまではわかりませんが、非常に「リアル」な作品であります。
 いじめっ子をステレオタイプに描くのではなく、その本質まで描き出したところに「不思議のたたりちゃん」の成功があったのかもしれません。

 五巻までは中学生編で、この六巻は神野多々里の誕生から小学生時代までが描かれております。
 ただ、個人的には、思春期の少年少女を扱った中学生編の方が、より充実していると思います。
 そう感じるのは、私にとって中学生時代がいろいろと激動の時代だったかもしれませんが…。(まあ、昔の話です。)

・注1
 この文章は「まんが秘宝 つっぱりアナーキー王」(洋泉社/1997年9月20日発行)に収録のウェイン町山氏「望月三起也のイカし(れ)たヤツら!」(p89)を参考にさせていただきました。(言い換えますと、「剽窃」いたしました。)

2016年7月18・20・21・23日 ページ作成・執筆

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