曽祢まさこ「悪魔の十三夜@」(1986年10月6日第1刷発行)

「南イングランドの人里離れた村、ホリーフィールド。  その村の外れの森の館で暮らす一家。
 未亡人である美しい母と、娘のマデリン・ラッセル、病弱な弟のディオン、それに、陰気な中年女である家政婦のモイラ。
 母は村人からなるべく係わりを持たないようにしていたが、好奇心旺盛なマデリンは村まで出て行き、同じ年頃のクリフやダンと仲良くなる。
 マデリンは村人達と打ち解けるようになるが、同時に母親の恐ろしい秘密を知るようになる。
 マデリンの母親は、人から精気を吸い取り、ミイラにしてしまう吸精鬼であった。
 昔、マデリンの家に盗人が忍び入り、母親は盗人に殺されてしまう。
 しかし、子供のことを想う一念により、吸精鬼として甦る。
 人間として行き続けるために、他人の命を必要とする母親は、年に幾度かロンドンへと赴き、そこで「狩り」をしていたのだった。
 その事実を知ったマデリンは、独り、悩み苦しむ。
 また、マデリンに秘密を知られてしまった母も、自分の身の上と、子供への愛情との板挟みになって、苦しむのだった…」
(「なかよしデラックス」昭和61年4月号〜8月号掲載)

 素晴らしい作品です!!
 一応は「吸血鬼」ものに分類されるのでしょうが、当時のホラー映画(「死霊伝説」「フライトナイト」等)の影響はほとんどありません。
(トビー・フーパーの「スペース・バンパイア」っぽい…かも…?)
 ヴィクトリア朝期のイギリスを舞台とした、雰囲気とストーリーで読ませる作品です。
 残酷描写は控えめであるものの、吸精鬼と化した母親が犠牲者を襲う描写は、迫力があると同時に、妖艶でもあります。
 また、母と娘の揺れ動く心情をきめ細かく描き、家族ドラマとしても、よく練られておりますので、読み応えは充分。
 個人的に、こうして紹介文を書く時に、ワクワクするマンガはなかなかありません。
 こんな駄文でも、興味を持たれた方が、この作品を読んで、面白いと感じることがあれば、私にとっては望外の喜びであります。

平成27年6月4・5日 ページ作成・執筆

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