渡千枝「歪んだ騎士」(1994年9月13日第1刷発行)

・「歪んだ騎士」(1994年「少女フレンド1月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「演劇部の舘林さつきは、文化祭の「ウエストサイド物語」での役が成功したことをきっかけに、学園のアイドルとなる。
 サッカー部の上野光彦とはラブラブで、幸せな学生生活を送っていたが、そんな彼女にまとわりつく陰気な視線があった。
 それは、宇佐見衛(うさみ・まもる)という男子生徒のもので、彼は、小学校の時の出来事から彼女の騎士を自認していた。
 さつきは、彼が彼女の望むことを陰で叶えていたことを知り、彼を止めようとするのだが…」

・「魔を呼ぶ家U」
「冬休みの最後の日曜日、広瀬美喜は、父親の転勤の都合で、東京の郊外にある家に引っ越す。
 初めて家の扉を開けた瞬間、線香の匂いが鼻につき、彼女は不快に感じる。
 引っ越したその日から、毎夜、彼女は、どこからか聞こえるお経の声に悩まされ、また、転校した学校でも孤立してしまう。
 一連の出来事から、美喜は、康子という女子生徒について思い出さざるを得なくなるのだが…」

・「人喰いの島」(1993年「少女フレンド8月号増刊 サスペンス&ホラー特集号」掲載)
「坂崎真悟は、菊華塾の合宿のために、ある島に渡る。
 菊華塾というのは、理工系や医学部を目指す若者達に向けた、スパルタな教育施設であり、医者の澤柳俊也が塾長であった。
 真悟がここに来た理由は、合宿のためでなく、塾の旧館の写真に既視感を抱いたためであった。
 女友達の佐倉と共に、彼が旧館に向かうと、緑色の粘液に覆われた犬の死体が転がっていた。
 既視感に襲われながらも、彼が旧館を目にした時、彼は、自分が、竹井貞男という軍医の生まれ変わりであることを悟る。
 第二次世界大戦中、田中貞夫の部隊は、サキッカ島で、人間のエネルギーを吸い取る、アメーバ状の生物を発見する。
 それはサキッカ体と名付けられ、生物兵器として研究されるが、終戦を迎え、全て処分される。
 戦後、彼は、部隊長であった澤柳淳之助の住む島で、医者として働くが、澤柳淳之助がサキッカ体の研究を続けていることを知る。
 それを阻止するため、サキッカ体の抹殺を図るが、逆に、殺されてしまったのであった。
 前世の記憶を取り戻した彼は、旧館で、澤柳淳之助と再会するのだが…」

・特別付録「」惨劇体験シミュレーション」
「洗浄の間」「串刺しの間」「工作の間」をテーマとした、「サスペンス&ホラー」らしい残酷絵です。

 「歪んだ騎士」は、ズバリ!宇佐見衛のキャラ勝ちです。完璧なキャラではないでしょうか。
 同じようなテーマの作品は多々ありますが、このキャラのリアルさで、他の作品よりも頭一つ抜きんでているように思います。
 あと、ヒロインが決して「困る」ことがないというのも怖い…。
 「人喰いの島」はモンスターホラーの佳作で、「ブロブ/宇宙からの不明物体」にインスパイアされたのでは?と考えております。
 ラストは巨大なサキッカ体が大暴れです。(個人的には、もうちょっと暴れてもいい気がします。)
 ただ、結末が説得力に欠けるかも…。

2019年12月9日 ページ作成・執筆

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