鈴木ユウヘイ・原作/宝依図・漫画
「徘徊者@」(2022年12月6日第1刷発行)
「徘徊者A」(2023年4月6日第1刷発行)
「徘徊者B」(2023年7月20日第1刷発行)


単行本@(「ヤングマガジン」2022年第39〜41号、第43〜45号、第47号)
・「第1話 こいつのせいなの」
 ある大学。
 桧山月子は男連中の間で人気の高い美女。
 彼氏は一年の坂東周で、彼が彼女の猛アタックしたのであった。
 周は彼女に笑顔になってもらおうと努めるが、彼女の顔から憂いが晴れることはない。
 その理由とは…?
・「第2話 またやってる」
 桧山月子は子供の頃から死者を視ることができた。
 だが、駅員姿の死者ほど恐ろしいものは見たことがない。
 この死者は顔一面ただれて、大きなハサミを持ち、可愛い娘を求めて電車内を徘徊している。
 そして、先日はある女子大生がこの死者に惨殺されていた…。
・「第3話 死者に殺されたの」
 周は夜の町を泣きながらさまよい歩く。
 彼は月子にフラれたと思い込み悲嘆に暮れていたのであった。
 彼は水商売の女性二人と痛飲することとなり、フラれた経緯を明かすのだが…。
・「第4話 私が教えたの」
 月子は周に信じてもらえず、落ち込んでいた。
 すると、マンションのインターフォンが鳴る。
 周が戻って来たと多いドアを開けると、ドアの外には眼鏡で巨体のデブ男が立っていた。
 それはいつも大学で彼女を見つめていた野口という男で、彼女はすぐにドアを閉める。
 男はドアを叩きながら、彼女に電車の中のハサミ男について話すのだが…。
・「第5話 奴はまだやる」
 月子の前に目の下に横の大きな傷のある娘の幽霊が現れる。
 彼女は先日、ハサミ男に殺された三田村晶子であった。
 晶子は月子にドアを開けるよう求める。
 デブ男も月子と同じ霊能力者らしいのだが…。
・「第6話 イレギュラー」
 月子と別れて、放心状態の周。
 ある日、彼は同じ高校に通っていた都に電車の中で話しかけられる。
 実は彼女は彼にひそかに想いを寄せていた。
 また、彼女は若干、霊感があり、電車の中で何かの気配を感じる。
 その話を聞き、周には思い当たることが…。
 一方、月子は野口から死者についてレクチャーを受ける。
 彼によるとハサミ男は「イレギュラー」な「怪物化した死者」とのことなのだが…。
・「第7話 猛っておる」
 周は月子の話は本当だったのではないかと考え、ハサミ男の撮影に挑む。
 とりあえず、駅の構内のあちこちをスマホで撮ると、いつの間にか彼の背後にハサミ男がいた。
 その顔は怒りに満ちており、周について電車へと乗り込むと…。
・「第8話 嫌な予感」
「昨夜の件で周はハサミ男の存在を確信する。
 このままでは月子が危ないと考え、彼は電車で心霊写真を撮り、それをネットで拡散しようとする。
 そうすれば、電車会社も何らかの対応をしなければならない。
 そのために、周は都に協力を仰ぐ…。

単行本A(「ヤングマガジン」2022年第48号、第49号、第51号〜2023年第1号、第4・5合併号〜第7号、第9号、第10号)
・「第9話 すぐそばにいる…!」
 周と都がホームにいるところを見かけ、月子は胸騒ぎを覚える。
 彼女は二人を止めようとするが、タイミングが悪く、周と都は電車に乗り込み、月子の前でドアは閉まってしまう。
 周は月子に連絡を取ろうとするが、都は周が彼女と縁が切れてないことにキレて、痴話喧嘩が勃発。
 その最中、都は急にイヤな気配を感じ取り…。
・「第10話 今度はただでは済まないー!」
 ハサミ男は周と都の近くにいる。
 周はハサミ男をスマホで撮ろうとするも、盗撮と疑われて、窮地に陥る。
 とりあえず、謝って次の駅で降りようとするが、ハサミ男は物理的に周を襲い始め…。
・「第11話 面白いもの」
 月子はホームのベンチに座って、周を心配していた。
 すると、一人の女の子がパスケースを取りに線路に降りるのを目にする。
 もうすぐ電車が到着するので、月子は線路に降り、少女を保護する。
 少女は常人離れをした美しさであった。
 少女はカーテシー(?)をして、その場を立ち去るが、後で月子はスマホを紛失したことに気付く。
 実は、スマホを盗んだのは…。
・「第12話 消し去ってやる…!」
 いろいろとあったものの、周はハサミ男を写真に収めることに成功する。
 彼は都のアドバイスを受け、SNSのインフルエンサーにDMを送り、ハサミ男を紹介する。
 ハサミ男は『徘徊者』と名付けられ、ツイートはどんどん伸びるのだが…。
・「第13話 祟り」
 SNSでのハサミ男の反応を見ている最中、彼は月子からのメッセージを思い出す。
 彼女は駅で周と都が徘徊者につけられているのを目にして、警告のメッセージを送っていたのであった。
 彼はそれに返信しようとした時、ある動画に気付く。
 それには電車の中で暴れる徘徊者が映っていた。
 彼はそれをネットに上げるのだが…。
・「第14話 手はある」
 電車会社は徘徊者を秘密にするためにあらゆる手を尽くしていた。
 しかし、凄腕の美少女祈祷師の安曇でもハサミ男は除霊できず、徘徊者はますます力を付ける一方。
 それでも、安曇には祓えるかもしれない方法があるらしいのだが…。
・「第15話 私の心を読んだのー?」
 ある喫茶店で月子は一人、孤独を噛みしめていた。
 思い返すのは周とのすれ違いばかりで、後悔と罪悪感に心が沈む。
 また、徘徊者への恐怖心は根深く、一人でいるのは不安で仕方ない。
 ふと気づくと、横の席に誰か据わっている。
 それは先日、駅で助けた少女であった…。
・「第16話 かなりやばい状況だよ」
 月子は大学で野口と出会い、徘徊者がネットで話題になったことを知る。
 だが、徘徊者に関する情報はネットから消されてしまっていた。
 三田村晶子の霊によると、徘徊者は怒り狂い、パワーアップしており、このままだと行動範囲が広がる可能性がある。
 真っ先に狙われるのは写真の撮影者だが、月子は周が撮影者であることに思い至る…。
・「第17話 …バカ」
 周は月子からのメッセージを読み、教室をとび出し大急ぎで駅に向かう。
 ほったらかされた都が廊下を歩いていると、月子と野口が立ち話をしているのが目に入る。
 都は月子が周を弄んでいるとキレるが、月子は周を呼び出してないことが判明。
 月子は周の身に危機が迫っていると感じ、自分も駅に行く…。
・「第18話 怖がれば怖がるほど」
 周を駅に呼び出したのは実は安曇であった。
 それとは知らず、彼は駅の4番ホームを目指し、彼の背後には徘徊者の姿があった。
 程なくして、月子たちも駅に到着する。
 安曇によると、月子が今回の件で大きな鍵を握るのだが、その理由とは…?

単行本B(「ヤングマガジン」2023年第11号、「ヤンマガweb」2023年2月〜5月)
・「第19話 決着をつけたい」
 駅に集まった月子、都、野口、三田村晶子の幽霊。
 月子は「徘徊者と決着をつけたい」と決意を表し、他の皆も彼女に同行することとなる。
 一方、周は徘徊者と対峙し、挑発するのだが…。
・「第20話 完成」
 周は徘徊者に襲われるが、突如、ホームのあちこちが光る。
 これは封印のためのお札から発せられていた。
 駅では火事が発生したとアナウンスし、乗客を地上へと退避させる。
 4番ホームを目前としながら、月子たちも避難させられそうになるのだが…。
・「第21話 片を付ける」
 安曇の作り出した結界…それは何も存在できない「真空空間」のようなものであった。
 これで彼女は一気に片を付けるつもりであったが、月子たちが周を助けるために駆けつけたことで誤算が生じる…。
・「第22話 これならどうだぁー!」
 周のピンチを知り、野口は「伝家の宝刀」を抜く。
 彼は道教系の術師の一族で、身体には奇妙な紋が彫られていた。
 彼は九字を切り、自分の念を結界にぶつけ、破ろうとする。
 それに対して安曇が結界を強化すると、野口の取った行動とは…?
・「第23話 結界が…震えてる…!」
 野口は自分の技の未熟さを力業でカバー。
 彼らは周と再会するが、それは徘徊者を自由にすることでもあった…。
・「第24話 今しかない」
 解放された徘徊者は空間の裂け目に入り、逃げようとする。
 徘徊者を倒すには弱っている今しかないが、安曇はケガのため、印が結べない。
 そこで、安曇は月子に助力を求める…。
・「第25話 恨む理由」
 空間の裂け目は閉じたものの、徘徊者はまだあきらめない。
 しかも、電鉄の管理職で安曇の付き人の泉の不用意な発言で徘徊者の怒りに火をつける。
 泉は徘徊者と何かの関わりがあるようで、逃げようとしたところを、背中に裂け目をつけられる。
 安曇は泉もろとも徘徊者をあの世に送ろうとするのだが…。
・「第26話 怖がらないで」
 安曇を引き止め、安曇は一人で徘徊者に対峙する。
 彼女は徘徊者に一歩ずつ近づいていくが、彼女の心に以前のような恐怖はなかった。
 今、彼女が徘徊者に対して抱く思いとは…?
・「最終話 彼はいる」
 この事件の後、周、月子、都、野口、三田村晶子のそれぞれが進む道とは…?
 そして、「彼」は…?

 ハサミをフィーチャーしたホラーと言えば、スプラッター映画の名作の「バーニング」や傑作ゲーム「クロックタワー」(Xボタン連打!!)が思い浮かびますが、この作品ではでかいハサミを持った駅員の怨霊が出てきます。(火傷の痕があるので「バーニング」に近い?)
 ビジュアル的になかなかのインパクトで、この「徘徊者」を巡る攻防はスリリングでありますが、犠牲者は一人だけなんですよね…。
 あと、最終話で「徘徊者」の正体が明かされますが、どうして上級霊能力者でも祓えないほどのパワーを持つようになったのか疑問が残ります。
 それでも、ストーリーは霊能力者の娘と彼女を熱愛する青年の二人の視点から描かれ、それに個性的なキャラが絡み、かなり面白いです。(ところどころ、ユーモラスな描写もあって、ほっこり。)
 ところが、最終話で全てがブチ壊しになりました。
 あれだけ主人公はヒロインのため、頑張ったのに、あれはないんじゃないの?(どう考えても、イケメンに乗り換えたようにしか見えない。)
 それに追い打ちをかけるように、最後の最後で意味不明なラスト!!
 「第9話」が伏線になっているのかと思いきや、そんなことはなさそうで、「とりあえず、ホラーだから、バッドエンドにしてみました〜」という感じです。
 そのまま、周と都をくっ付けてあげればいいのに、残念です…。

2025年4月6〜10日 ページ作成・執筆

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