菊川近子「ゆがんだ視線」(1987年12月13日第1刷発行)

 収録作品

・「ゆがんだ視線」(「昭和62年発行 ハローフレンド10月号」所載)
「高野景子は、ある日、家に迷い込んできた三匹の野良猫に魚をあげる。
 翌日、景子がラブレターを出した晃一に呼び出されるが、返事は「NO」。
 晃一は香保里を一途に愛しているのだった。
 失恋のショックに打ちのめされる景子の目の前に、昨夜の猫が現れる。
 放課後、帰宅途中の晃一は、車の前に跳び出した猫によって、車に轢かれそうになる。
 寸前で車は止まったものの、晃一と猫の間で気のようなものが行き交うのを香保里は目にする。
 その時以来、晃一は香保里を見向きもしなくなり、景子への愛を打ち明ける。
 晃一にふられた香保里は、晃一が変わってしまったことに気づき、真相を知ろうとする。
 謎を解く鍵は、事故以来、香保里になつくようになった猫にあるようだが…」

・「顔」(「昭和62年発行 週刊少女フレンド第16号」所載)
「成績はトップで、先生さえも一目置く優等生、妹尾晶世。
 彼女には、優等生であることのストレスから、万引きという悪癖があった。
 ある日、クラスメートの美崎に万引きの現場を目撃され、彼女は美崎にこのことを秘密にしてくれるよう懇願する。
 晶世の頼みを聞いた美崎だが、晶世は美崎のことをどうしても信用できない。
 ちょっとでも噂を立てられたら、晶世の評判は台無し。
 疑心暗鬼になった晶世は、ある雨の降る夜、美崎を橋の下に呼び出す…」

・「たった一人のふたご」(「昭和62年発行 ハローフレンド8月号」所載)
「藤和田朋美のクラスに入ってきた転校生、池畑祥子。
 祥子は朋美に非常に強い関心を持つ。
 というのも、事故で整形する前の顔が朋美にそっくりだったからだった。
 実は、朋美と祥子は双子であったのだが、ある理由があり、祥子は別の夫婦のもとにやられていたのだった。
 その理由とは、曾祖母の時代、残虐な性格のため、座敷牢に監禁され、最期は非業の死を遂げた、双子の妹、綾音の祟りであった。
 朋美と祥子が再び暮らすようになる時、綾音の怨念が蘇る…」

・「闇にうごめく」(「昭和59年発行 週刊少女フレンド第12号」所載)
「亡き両親の思い出のある家を売って、一人暮らしに向いた家に引っ越してきた折原明子。
 隣に住んでいる家主の加賀見は親切だし、新しい生活に胸驚かせるのも束の間、急に引越してきたためか、ネズミが繁殖しているようだった。
 また、夜中には何者かの足音がどここから聞こえる。
 足音は床下から聞こえてくるようだが…」

・「暗黒の音」(「昭和61年発行 ハローフレンド3月号」所載)
「理美と、悟堂浩樹は将来的には結婚も視野に入れた、恋人達。
 悟堂の別荘の辺りで、二人が散歩を楽しんでいると、ルミという奇妙な女性と出会う。
 ルミは町はずれの廃屋にいつの間にやら住みついた、得体の知れない女性であった。
 その夜、理美はルミに電話で呼び出される。
 待ちあわせ場所の崖で、理美が待っていると、ルミが理美を崖から突き落とそうとする。
 ルミが言うには、ルミは浩樹を慕っているが、ルミは特殊な一族で、血族結婚しか許されていない。だから、浩樹に近づく女は誰も許さないとのこと。
 そこへ理美の身を心配して、浩樹が駆けつけるのだが…」

 トータルに佳作を収めた単行本でありまして、読んで損はないと思います。
 個人的には、「闇にうごめく」と「暗黒の音」が、なかなかにバッド・テイストな味付けをしておりまして、好感が持てます。

平成27年5月11・12日 ページ作成・執筆

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