水島順「青い炎」(170円)
「現実に起こった、不思議な物語。(真偽のほどは不明)
ある夜、車同士の衝突事故が起きる。
それは女性の無謀運転によるものであり、女性の車両は崖から転落し大破する。
もう一台の車を運転していた、江原さくらの兄は急いで崖下に降りると、女性は絶命していた。
だが、その女性の腕に抱かれた、彼女の娘は奇跡的に無傷で済む。
事故は亡くなった女性の責任ではあったが、さくらの兄はどうにも責任を感じ、女性の娘、まゆみを家に引き取ることにする。
さくらはそれが面白くなく、ことあるごとにまゆみにつらく当たる。
遂に、耐え切れなくなった、さくらはまゆみを遊園地に連れて行った機会に、まゆみを置き去りにしようとするのだが…」
派手な描写はなく、雰囲気で読ませるマンガでして、この手のものは珍しいと思います。
まず、はっきりと幽霊は出てきません。(はっきり出てくる幽霊というのも変ですが。)
奇怪な出来事は起きますが、それが母親の幽霊によるものかどうか定かでなく、単なる偶然の一致とでも如何様にも解釈できるのであります。(マンガの中でも、母親の幽霊のせいかどうか明らかにしておりません。)
う〜ん、ヘンリー・ジェームズ「ねじの回転」ぽいかも…(ちと大袈裟)。
他に見どころとしては、「雨の夜、女性を青山墓地に車で送る」描写でしょう。
1960年初頭には「幽霊タクシー」の都市伝説があったことを示して、興味深いです。
当時からすでに幽霊の向かうところは「青山墓地」だったのですね。他の墓地にはいかないのでしょうか?
また、遊園地の描写も、当時のジェットコースターや観覧車が味わい深いです。
水島順先生についてはさっぱりわかりませんが、しっかりした画力の持ち主で、背景まで楽しめます。
貸本マンガでは、良質な部類に入るのではないでしょうか?
ちなみに、巻末に、宏文堂で大スターだった(らしい)池川伸治先生の広告があります。
なかなかの冊数が出ておりますが、私、この広告に載っている作品をどれも目にしたことがありません。(まあ、貸本に関しては、私はいまだヒヨっこです。)
しかも、発売予定の「きちがい少女」って一体…?
いやはや、怪奇マンガの世界はまさしく「底なし沼」。
残念ながら、私には底まで沈んでいく勇気がありません。
いつか、ディープな方々が底の話を私達にしてくれることを願うばかりであります。
・備考
状態悪し。ビニールカバー貼り付け。前の遊び紙に大きな裂けあり、また、裏に落書きあり。p8、pp34・35(車を描き足して、カーチェイス)、p44、p93にボールペンによる落書きあり。pp93・94、下隅に大きな欠損あり。pp119・120、ページ欠損。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕あり。読み癖ひどし。全体的に水濡れの痕あり。
2016年9月30日 ページ作成・執筆