阿木二郎「死少女ルミ」(190円)



「雷雨の夜の翌朝、自室に血だまりを残し、消えた中條美雪。
 部屋は密室になっており、日記には「わたしは死ぬかもしれない あの人のために」と書き残されていた。
 美雪の妹、雪絵は、姉の服から「船木整形外科医 船木」の名刺を見つける。
 姉の失踪と関係あるかもしれないと考えた美雪は、半ば廃屋と化した船木整形医院を訪ねてみる。
 すると、その庭に、姉らしき女性の姿があったが、彼女は逃げるように姿を隠してしまった。
 美雪は、姉の婚約者である、本島伸也医師に相談する。
 その女性が姉の美雪であるかどうか確認するため、本島は美雪にその女性の写真を望遠レンズで撮るよう提案する。
 張り込みの末、雪絵はその女性の撮影に成功するが、その女性の顔はのっぺらぼうであった。
 後日、本島は雪絵とその両親に意外な事実を知らせに来る。
 船木医師の娘、船木ルミは血の固まらない血液型であり、美雪の血液型は彼女の血液型に近かったのであった。
 美雪の身に一体何が起こったのであろうか…?」

 まずは、ジャケット・イラストが本気で素晴らしい!!
 シュールレアリスムの絵画(マックス・エルンスト風…かも…)を思わせる、幻想的かつ不気味なもので、個人的には「アート」として充分観賞にたえる出来だと思います。(まあ、私の「感性」は当てになんかなりませんが。)
 宏文堂のジャケット・イラストは良いものが多いのですが、その中でも、個人的ベストであります。
 絵師の名前が気になるところですが、さっぱり情報がありません…。

 んで、ストーリーですが…正直、大したことありません。表紙に期待して読むと、まさしく拍子抜けします。
 ただ、阿木二郎先生(実は、少女マンガで活躍した、鈴原研一郎先生)の描く、可憐な女の子が今見ても、なかなかキュート。
 躍動感溢れる動作や、細かい仕草等、とってもチャーミングです。
 当時の人気作家だった鈴原研一郎先生の実力の一端を窺い知ることができると言えましょう。(注1)

・注1
 私は少女マンガは苦手で怪奇マンガ以外はほとんど読まないのですが、望月あきら先生やちばしげる先生の昔の少女マンガは好きだったりします。
 要するに、時代錯誤なだけなんですね。

・備考
 ビニールカバー貼り付け、また、それによる痛みや歪みあり。糸綴じあり。巻末に貸出票貼り付け。pp1・2、裂けあり。p36、p73、p77、落書きあり(特に、p73。こいつのお陰で、緊張感がそがれて、困ります…)。



2016年5月21日 ページ作成・執筆

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