阿木二郎「クモ少女」(190円)



「新藤佐智子の一家は、父親の仕事の都合で、武蔵野に引っ越すことになる。(注1)
 彼らが新しく住む屋敷は、デザイナーの伊奈香織の持ち家であった。
 伊奈香織は刺繍デザイナーとして有名であり、彼女の使う糸は特許を取っており、秘密にされていた。
 だが、突如謎の失踪を遂げ、いまだその行方はわかっていない。
 屋敷の安すぎる値段に、父親が不動産屋に詰め寄ると、前の住人の赤ん坊が変死したと聞かされる。
 佐智子がその住人に問い合わせたところ、日中揺りかごに入れていたら、身体中、何かにくいつかれて、血まみれになって死んでいたとのことであった。
 仕方なく、新藤一家は屋敷に住むことになるが、何事もなく日が過ぎる。
 だが、一週間後、飼い犬のぺポが、女性の片腕をくわえて、庭の茂みで変死する。
 警察が出動する大騒ぎになり、その片腕が伊奈香織のものかどうかが大きな焦点となる。
 そんな時、佐智子の前に、伊奈香織の妹を名乗る女性が現れ、その片腕が自分と同じ指輪をしていないかどうか、詰問する。
 その女性によると、あの片腕はやはり伊奈香織のものらしいが、だったら、どこで亡くなったのか、という疑問が残る。
 やがて、血の臭いに惹かれて集まるクモの群れが、佐智子と家族の前に現れるようになり、一家はパニック状態。
 佐智子の家庭教師だった池部杉男は、クモの居場所を突き止めるためにある作戦を立てるのだが…」

 タイトルと上の画像からは想像もつかないと思いますが、実は「動物パニック」を絡めたミステリーです。
 今現在読んだら、大したことのない描写でも、当時の読者にはクモの群れの描写はさぞかしショッキングだったことでしょう。
 ただし、個人的には、クモそのものの描写よりも、主人公達がクモの本拠地に乗り込む時に「DDT」を身体中に塗布する描写の方がよほどヤバいと思いました。
 後で、後遺症などは残らなかったのでしょうか?(注2)

・注1
 この作品が描かれた当時は、同じ東京でも田舎の扱いです。
 今はどうなのか知りませんが…。

・注2
 この作品では、DDTを使いまくっておりますが、当時はまだOKだったのでしょうか?
 あまり知識がありませんので、機会があれば、調べておきましょう。

・備考
 状態悪し。ビニールカバー貼り付け、それによる歪みや痛み。カバーの背表紙上部、破れかつ欠損。糸綴じあり。p1、遊び紙に貼り付いて、上部剥げあり(上中央の画像を参照のこと)。食べこぼしがページの間に多々あり、それがシミや剥がれの原因となっている。前後の見開きにある池川伸治先生のイラストを鉛筆でなぞっている。後ろの遊び紙に数字のスタンプ押印。小口の三方向に貸本店のスタンプ押印。

2017年9月13日 ページ作成・執筆

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