吉倉健「怪奇魔性の剣」(190円)


「冒頭は、巌流島での決闘。
 宮本武蔵に頭を砕かれ、佐々木小次郎は息絶えた。
 が、とある嵐の夜、佐々木小次郎の墓に雷が落ちると、何故か、小次郎が生き返って、墓場から出てきたのだった。
 復讐の鬼と化して、宮本武蔵を探す小次郎。
 武蔵の居所を発見したものの、武蔵は五倫の書(ソノママ)の執筆の真っ最中で、その間は他流試合は一切せぬことを神仏に誓っているとのこと。
 小次郎は、武蔵が五倫の書を書き上げるのを待つ。
 が、小次郎には秘密があった。
 それは死んだ肉体を維持するために、他人の骨が必要なのだった。
 片端から墓場を荒らしては、骨をかじりまくる小次郎。
 武蔵が五倫の書を書き上げ、いざ小次郎と対決になる。
 そこへ、小次郎が墓で骨をかじるのを目撃していた坊主が駆けつけ、「喝」という声とともに数珠を投げつけると、小次郎は骨にかえってしまうのだった。」

 (理由はともかく)生き返って、武蔵と対決しようとする…というところまでは、まあ、良しとしましょう。
 でも、肉体を維持するために、「墓場で骨を貪り食う小次郎」ってのは、何なんだよ!!
 ここまで陳腐な怪談レベルに、佐々木小次郎を引きずり下ろしたマンガは空前絶後でありましょう。(いや、これだけで充分…)
 この内容で、小島剛夕先生といった凄腕の漫画家が絵を担当していれば、「稀代の怪作」が生まれたはずですが、吉倉健先生のスッカスカな絵柄のおかげで、誰の心にも引っかからなかったようです。
 このまま、埋もれるに任せるが吉でしょう。
 吉倉健先生が現在も存命かどうかはわかりませんが、もし亡くなられているなら、あの世で、小次郎に膾(なます)切りにされていないかどうか、非常に心配なところであります。
 最後に、○○カルシゥムが江戸時代にあれば、小次郎と武蔵の二度目の決闘が見れたのに、かえすがえすも残念…でもありませんね。

平成26年6月中旬 執筆
平成26年7月12日 ページ作成

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