松尾啓子・藤原栄子「グラスの中の少女」(220円/1967年頃)
・松尾啓子「グラスの中の少女」
「夏休み、香月真知子は、大学生の姉と共に、S海岸にある別荘で、留守番のアルバイトをする。
その別荘は、持ち主のお嬢さんのために建てられたものであったが、去年、不幸な亡くなり方をしたため、今年の夏は使われなかったのであった。
真知子は、海で泳いだり、好きな絵を描いたりし、姉は卒業論文を書き進め、二人は思い思いに過ごす。
ある夜、海岸に出かけた真知子は、由香という少女に呼び止められる。
彼女は真知子と友達になりたいと話し、明日の夜、真知子の別荘を訪ねると約束する。
しかし、彼女は現れず、深夜、真知子達が寝てしまった頃に突如、真知子の部屋に現れる。
由香は真知子に自分の絵を描いてくれるよう頼み、水着姿に着替えると、奥の部屋にあったグラスの中にすっぽり入ってしまう。
真知子は、約束通り、誰にも言わずに、三日で、由香の絵を描き上げるのだが…」
・藤原栄子「渚のエレジー」
「新米ジャーナリストの志村登貴子は、伊豆療養所にいる姪、かすみを訪ねる。
かすみは心臓病のためにそこで療養していたのである。
また、登貴子の姉、矢代ゆう子も、おばと偽って、かすみに会いに来ていた。
ゆう子は、かすみの実の母親であったが、アメリカ人の夫のトニイが帰国後、音信不通となり、その後、かすみを捨てて、矢代家に嫁いでいた。
そんな彼女達の前に、海辺でトランペットを吹く、アメリカ人の青年が現れる。
その音色を聴くと、ゆう子やかすみは海へと引き込まれそうになる。
ある時、かすみは、夢の中で、その青年から、海の底で「三人で楽しく暮らしましょう」と誘われる。
そして、その夜、彼女を迎えに来ると言うのだが…。
アメリカ人青年は、行方のわからないトニイなのであろうか…?」
松尾啓子先生が20歳、藤原栄子先生が18歳の時のファンタジックな作品です。
横山まさみち先生が認めた才能でありますので、お二人とも、実力はかなりのもの。
少女漫画雑誌や子供雑誌で活躍される藤原栄子先生の作品はストーリーがなかなか凝っており、実力の片鱗が窺えます。
一方、横山プロで重要な役割を担う松尾啓子先生も、負けてはおりません。手堅くまとめております。
個人的には、松尾啓子先生の作品の方が、不思議な味わいで、より好みであります。(絵も好きです。)
・備考
パラフィン紙剥がし痕あり。カバー痛み、背表紙痛みと色褪せあり。糸綴じあり。pp123・124、下側のコマ外に欠損。後ろの見開きに貸出票の剥がし痕、ボールペンでの書き込みあり。