水戸三郎「非恨」(150円)
「戦国時代。
黒田城は数か月の籠城のため、城兵は疲弊しきっていた。
このままでは城は長くはもたないが、城には、お家再興に充分な財宝があった。
城主、黒田利兼が、財宝を敵の手に渡さない方法を探していたところ、家臣の文之進が、いい手立てがあると進言する。
それは、野盗と手を組んで、敵中を突破し、人里離れた山中に財宝を埋めるというものであった。
計画はうまくいくものの、財宝を独り占めしようとした文之進と野党の親分が争っているところを、敵方に攻撃され、文之進は死亡。
その間に、城は落ち、黒田利兼と娘の浅姫、そして、浅姫の家来で小人の陣兵(じんべえ)の三人は舟で脱出する。
途中、利兼は傷を負うが、財宝のことが気になって仕方がなく、下総の国にある大沼の里へしきりに向かおうとする。
だが、追及の手は厳しく、二進も三進もいかなかったところを、通りがかった、若い浪人に助けられる。
浪人は彼らに親切にしてくれるが、彼の正体は、野盗の副首領、夕之介であった。
しかし、夕之介は、財宝には興味なく、また、野盗の首領との仲もうまくいってない。
浅姫は彼に信頼を寄せ、彼も彼らと行動を共にしようかと考える。
だが、黒田利兼を匿っていることが、首領にばれ、黒田利兼が一人になった時を強襲。
首領は彼を拷問にかけ、浅姫のことをもちだして、脅す。
そこに、夕之介が現れ、浅姫は逃げたと告げる。
首領は利兼を斬殺し、夕之介に、浅姫を捕まえるよう命令する。
夕之介は浅姫を守るために旅立つが、一方の浅姫は父親の行方を捜していた。
父親の死体を目にした彼女は、夕之介が野盗の副首領であることを知り、彼を父の仇と思い込む。
三年後、夕之介は、部下の常吉と共に、利兼が目指していた大沼に向かっていた。
途中、彼らは、片目の不気味な女と何度か出会う。
その近辺では、若い娘が惨殺される事件が起きており、片目の女が絡んでいるようだが、神出鬼没で尻尾さえも掴めない。
彼らはようやく、下総の国、大沼の里へと着く。
そこで、夕之介は、沼の中の小島に、落ち武者の亡霊が住むという噂を聞く。
実は、小島には、浅姫が片目の女と共に住んでいた…。
片目の女の正体とは…?」
前編(惨の巻)と後編(渦の巻)に分かれております。
前編は戦国を舞台にした時代劇ですが、 後記によると、ぐっと怪奇色が増します。
水戸三郎先生は、茨城県にお住まいで、この作品は、小さな村に伝わる伝説をもとにしたとのことです。
沼の風景写真が三枚、掲載されており、そのうちに二枚には筆者が写っております。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。カバー痛みあり。糸綴じあり。前後の見返しのノドに紙テープで補強。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕とスタンプ。
2020年4月18日 ページ作成・執筆