叶こずえ「奇談水乙女」(200円/1964年頃)
収録作品
・「奇談水乙女」
「百合香と次郎は父親違いの姉弟。
母親亡き後、父親は、連れ子だった百合香につらく当たる。
百合香が一人嘆いていると、湖の畔で、白鳥が彼女に話しかける。
その白鳥は彼女の母親が転生したものであった。
どうして人間になれないの?と百合香が聞くと、白鳥は、百合香の流した涙が母親の罪になるからと答える。
以来、百合香は湖畔で白鳥と度々会うようになる。
弟の次郎は姉と白鳥の逢瀬を覗き見するが、姉が白鳥と一緒にいる理由がわからない。
次郎は姉を問い詰め、湖に行かないよう約束を取り付ける。
ある日、百合香は、父親からひどい折檻を受ける。
たまりかねた次郎は猟銃で父親を射殺、だが、百合香はそんな次郎から逃げようとする。
姉を追って、次郎が湖畔まで来ると、百合香は白鳥と共にいた。
白鳥に対する嫉妬から、次郎は白鳥に発砲、水面に消える。
それを目にした百合香は自ら湖へと身を沈めるのであった。
十年後、次郎はいっぱしの猟師へと成長していた。
ある日、猟をしていると、白く濃い霧に包まれ、方向を見失ってしまう。
彼が迷い込んだのは、動物も植物も全て、白い世界であった。
そこで、彼は、白い水の乙女、水乙女に出会う。
物の怪と思い、彼が撃つと、乙女の姿は消え、彼は元の世界へと戻る。
翌日の市場で、彼は、どこかで見たような顔の少女を目にする。
少女の名はサエといい、彼は彼女に頼んで、嫁に来てもらう。
しかし、彼の前に、水乙女が現れ、彼を水の中へと誘う。
水乙女の正体とは…?」
・「子猫売ります」(ショートショート)
「橋のたもとで、子猫を売る少女。
少女が売る子猫は、人間の言葉を話す猫であった…」
「奇談水乙女」はファンタジーです。
白鳥が出ている時点でギリシア神話っぽいですが、小島剛夕先生「白鳥は悲しからずや」(「怪談・94」収録)がありますので、北国では白鳥に関する言い伝えがあるのでしょうか?(御存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけると幸いです。)
ただ、後半は混乱して、ストーリーがよく理解できないのが残念です。
ちなみに、叶こずえ先生に関しては全くの謎です。
他の漫画家の変名だとは思うのですが、突き止められておりません。
・備考
ビニールカバー剥がし痕あり。糸綴じあり。所々、目立つシミや汚れあり。後ろの遊び紙にスタンプ押印。