辰巳ヨシヒロ「お化けの子」(220円)



・収録作品
・「お化けの子」
「ヒロシはチビで、皆の笑い者。
 彼には人に知られていない秘密があった。
 彼の右手は何メートルも自在に伸びるのである。
 このことで彼は劣等感に悩まされずに済んだが、人に決して知られてはならなかった。
 だが、池で溺れている女の子を右手を伸ばして助けた際に、その現場を不良達に見られてしまう。
 彼らに脅され、ヒロシはその能力を使い、金庫から金を盗むことになるのだが…」

・「泣くなお化け」
「ケン一はデベソにひどいコンプレックスを持っていた。
 ある夜、一大決心をして、デベソを包丁で切り取ろうとする。
 すると、デベソがひくひくと蠢き、「いやいや」をする。
 驚いたケン一がよくよく観察すると、デベソはしなびた手のような形になっていた。
 以来、デベソは順調に成長し、神経も通い、第三の手のように動く。
 ケン一はこの手を他人に知られることを危惧していたが、そのうちに、この手にすっかり慣れてしまう。
 だが、近次というスリにこの秘密を知られ、スリの片棒を担ぐよう脅迫されるのであった…」

・「どしゃ降り」
「白髪山に逃げ込んだ、二人の脱獄囚。
 彼らは山中の家に押し入り、住人の男性を銃で脅す。
 だが、男性が猟銃を持ち出したことで、脱獄囚達は彼を射殺。
 そして、裏庭にその死体と血の付いた俵を一緒に埋める。
 そのうちにどしゃ降りになると、白髪山でハイキングをしてきた、主人公とその友人が家を訪れる。
 殺された男性は、主人公のおじであった。
 しかし、家には見知らぬ男性がいて、おじは旅行に行き、留守を頼まれていると説明する。
 その言葉に釈然としない思いを抱きながらも、主人公と友人は雨宿りをさせてもらうのだが…」

 一般的な知名度はそこまで高くはないものの、漫画史において非常に重要な役割を果たされた、故・辰巳ヨシヒロ先生。(「劇画」の産みの親の一人らしいです。)
 私は不勉強なために、それほど作品を読んだわけではありませんが、「激渋」という印象を抱いております。(「いぶし銀」という表現がしっくりくるのではないでしょうか?)
 そんな辰巳ヨシヒロ先生は、貸本時代から漫画を描かれており、様々なジャンルの作品を描かれております。
 ただ、「怪奇漫画」というジャンルで描かれたものは、この「お化けの子」と「透明人間」(未入手のため、詳細わからず)しか私は知りません。
 まあ、怪奇漫画とは言え、「お化けの子」シリーズはとてもハート・ウォーミングな内容で、怖がらせることに焦点を当てたものではないです。
 一方、「どしゃ降り」は怪奇色の強いサスペンスで、残酷描写もあります。
 ただし、ラストの謎解きが納得できるような、できないような…機会があれば、農学者か植物学者の方にお尋ねしたいと思います。

・備考
 状態悪し。カバー裂けて、セロテープにて補修。ビニールカバーの剥げ痕ひどし。糸綴じあり。pp20・21、食べカスが挟まって、シミ。後ろの遊び紙に書き込みと押印あり。

2017年10月1日 ページ作成・執筆

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