黒田みのる「大怨霊」(1990年12月25日第1刷発行)

 収録作品

・「シンフォニーは終わらなかった」
「秋の初めの高原のペンション。
 結婚して三年、経営者の高森妙子と夫の仲は冷え切っていた。
 彼女は、ペンションを設計した建築家の白木幹彦と不倫をしており、二人で夫を殺す計画を立てる。
 ある夜、夫は絞殺され、死体は鉢植えの台にカモフラージュをした棺の中に入れられる。
 夜明けまでには幹彦は家に帰り、明後日、ペンションに死体を受け取りに来る予定であった。
 しかし、翌朝、妙子にクリーニング屋から電話がかかる。
 殺したはずの夫がクリーニング屋を駅の前で呼び止め、近いうちに葬式があるので、喪服をペンションまで取りに行ってほしいと頼んだという。
 妙子は動揺しながら、夫の部屋に喪服を取りに入るのだが…」

・「憑依霊になった女」
「恋人の達夫の浮気を知った理加は道路で暴走し、大事故を起こす。
 瀕死の彼女の身体から、前世、婚礼の日に彼女に捨てられた武士の憑依霊が恨みを晴らしたことを喜びながら離れていく。
 そして、彼女の霊魂も…」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「死んだら憑いている霊はどうなるの……?」

・「我田引水の夢」
「沢田奈美は二人の女性の夢を見る。
 一人は、寺沢武一先生の漫画に出てくるようなセクシーな恰好をした、ダイナミックな女性。
 もう一人は、肉感的でセクシーな女性であった。
 奈美が夢から目覚めると、ルームメイトのみどりが隣のベッドに座っている。
 奈美が彼女に夢について話そうとすると、みどりの首が180度回転し、首がぽきっと折れて落ちる。
 その顔の眼窩は虚ろであった。
 気絶した奈美が翌朝、目覚めると、みどりから電話がある。
 みどりは別の所に泊っていて、どうやら昨夜のことは夢だったらしい。
 会社に出勤した奈美は、営業の村山からプロポーズを受ける。
 更に、不倫相手の西尾課長が急死し、彼女に彼の生命保険が入る。
 この件には夢で見た、二人の女性が関わっているようで、奈美は女性の占い師に相談するのだが…」

・「吸血銀座」
「平井女史は鈴書房の美人編集長。
 彼女は社長から竹内史郎という男を独占するため、旭市に向かうよう命ぜられる。
 竹内史郎の作品は「蝙蝠横丁」というタイトルで、原稿用紙に人間の血で書かれていた。
 旭市のホテルで、平井は竹内と面会するが、なかなか駆け引き上手。
 更に、「蝙蝠横丁」は旭市の市長の政策を弾劾した内容で、その一派と対立していた。
 平井が竹内と会ってから、その近辺で、吸血蝙蝠が目撃されるようになる。
 吸血蝙蝠は平井を襲った犬を殺し、遂には、市長の一派までも殺害。
 平井は竹内の仕業と考え、彼の作品の出版から手を引く。
 だが、ホテルの部屋に彼がやって来て…」

・「見えない世界 心霊質問箱 解答・黒田みのる」
「わたしは人の死がわかるんです」

・「マーブルな愛」
「高倉洋子(24歳)は浩一と婚約にまでこぎつける。
 だが、彼女の中には「別のじぶん」がおり、いつも彼女の幸せを壊そうとする。
 そして、迎えた破局。
 疲れ果てた洋子は、霊能者の西本明を訪れる。
 不思議なことに、「別のじぶん」も彼に相談があるようなのだが…」

・「大怨霊」
「都心から電車で二時間の大規模な住宅団地。
 良夫の一家(夫婦と幼い娘のユリ)の建売住宅は団地の北側にあった。
 祖父母が家に泊った翌朝、祖父は家の屋根に不穏な二つの影を視る。
 また、駅へ送ってもらう途中、舗装されていない近道を通るが、その荒れた風景に、祖父は重苦しい霊気を感じる。
 それから一週間後の夜、良夫の妻は、ユリの部屋で、奇怪な亡霊と遭遇する。
 一方の良夫は家に帰る途中の近道で、二体の首吊り幽霊につきまとわれる。
 その頃、祖父は奇怪な夢を視て、息子夫婦の家に行こうとするのだが…」

 心霊劇画と怪奇劇画を織り交ぜて、収録しております。
 個人的には、「我田引水の夢」「吸血銀座」が興味深くありました。
 古出幸子先生の絵、かなり川崎三枝子先生の影響が強いのではないでしょうか?
 特に、「我田引水な夢」の「バーバレラ」(?)な恰好の女性は実に川崎先生っぽいように思います。

2022年12月9・10日 ページ作成・執筆

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