黒田みのる
「死者の門@」(1981年11月16日第一刷発行)
「死者の門A」(1981年12月14日第一刷発行)
「死者の門A」(1982年1月24日第一刷発行)


単行本@
・「第一章 小さな子」
 花井ユミ(中学一年生)は三年前に両親が行方不明になった後、伯母(母の姉)と一緒に暮らす。
 伯母は裁判官で、ユミには少し厳しかったが、ユミは伯母は慕う。
 ある日、ユミは親友の森谷マリと一緒に下校する。
 マリは、母親の病気のきっかけに「死後の世界」について興味を抱いていた。(読んでいるマンガは黒田みのる「死者のくに」)
 二人が道端で話をしていると、小さな少女が「シュシュシュシュ」とやって来て、二人に笑いかける。
 同じ少女は病院の窓ガラスの向こうにも見かけ、更に、ユミが帰宅すると、その少女が玄関前にいた。
 少女は屋根まで飛び上がると、気味の悪い笑みを浮かべ、姿を消す。
 ユミが家の中に入ると、妙に薄暗い。
 伯母を探すと、彼女は二階の仏壇の前で倒れいていた…。
・「第二章 ピカピカ先生」
 それから、十日後。
 ユミとマリは、大学を出たばかりの信任教師、大野に少女のことを相談する。
 大野先生は大学の時、心霊の世界について研究をしていた。
 彼はユミ達の話を聞き、その少女は「死神(おむかえさん)」だと言う。
 伯母は十か月前からその少女を見ており、お迎えに来ている可能性が高い。
 また、仏壇で倒れた位牌については、「死者のくに」からの知らせではないかと推測する。
 位牌は「死者のくにとこの世をむすぶ門のようなもの」だからであった…。
・「第三章 霊よ!」
「ユミとマリが大野先生の下宿先に遊びに行く。
 その時、大野の友人の奈良がやって来る。
 奈良は漫画家で、大野が原作の心霊マンガを描いていた。
 ユミとマリはそのマンガを読ませてもらう。
 マンガのタイトルは「霊よ!」。
 それは、結婚式当日に花婿を亡くした女性と、その妹を主人公にしたマンガであった…。
・「第四章 門に立ったふたり」
「それから十日後。学校での昼休み。
 ユミとマリが校庭で遊んでいると、伯母が運動場に現れる。
 心なしか顔色が悪い。
 伯母が、ユミの両親が建てた家について話そうとした時、ユミは用務員さんに呼ばれる。
 伯母が倒れて、病院に運ばれたと言う。
 ユミとマリは伯母のいた方を向くと、そこに伯母の姿はない。
 病院に行くと、伯母は意識不明になっていた。
 その頃、伯母は「死者のくに」の入口にいた。
 彼女の向こう側には先祖霊達が集まり、伯母にあるメッセージを伝えるよう命じる。
 そのメッセージとは…?

単行本A
・「第一章 ユミひとり」
 伯母の葬式の時、ユミの家を気味の悪い男女の二人連れが訪れる。
 大野先生が対応すると、二人連れは姿を消し、表に出るが、どこにもいなかった。
 裁判所の所長はユミに、伯母は死を予感しており、死んだ後のことを聞かされていたと話す。
 ユミは、ある女性と一緒に住むことになるらしい。
 それまで一か月の間、ユミはマリのマンションに厄介になる。
 でも、ユミは家に呼ばれているような気がして、落ち着かない。
 また、彼女の様子をあの二人連れが窺っていた…。
・「第二章 おばさんの幽霊」
 マリのマンションで暮らすようになって十日後。
 ユミは伯母の呼ぶ声を聞いたような気がして、マリと共に家に戻る。
 何故か門と玄関が開いており、中に入ると、急に玄関のドアが閉まる。
 ドアの前には「おむかえさん」の少女がいて、彼女は二階に上がると、伯母の霊の横に立つ。
 伯母の霊は涙を浮かべながら、ユミに笑いかける。
 ユミとマリが、伯母と少女が消えた部屋に入ると、そこは仏壇の間であった。
 伯母の霊は仏壇の位牌を指さすが、彼女の望みとは…?
 そして、伯母の霊が警告する「ジカジツ」とは…?
・「第三章 超能力ユミ」
 交差点でユミは交通事故に巻き込まれる。
 幸いケガはなかったものの、このショックでユミのオーラの波長が変わり、彼女は霊を視るようになる。
 霊は、相手に恨みを持って、とり憑き、破滅させようとするものばかりであった。
 ユミが大野先生と奈良にその話をしていると、あの謎の二人連れが現れる。
 二人連れは、ユミの家に行かないよう警告する。
 「あの地下室はおそろしいところ」らしいのだが…。
・「第四章 地下室のユミ」
 ある日曜日の朝、ユミは、大野先生やマリと、自分の家にやって来る。
 伯母のための仏壇を運び入れるためであった。
 だが、あの二人連れが家の中にいて、仏壇を置いたら、すぐに立ち去るよう告げる。
 ユミはその声に聞き覚えがあった。
 伯母の霊は仏壇を非常に喜ぶが、一つ、心配事があった。
 それはこの家の地下室で、これがある限り、生者も死者も皆、不幸になるため、それを潰すよう頼む。
 その時、裁判所の所長が、彼の推薦する女性を連れて、家を訪ねてくる…。

単行本B
・「第一章 地下室へ」
 所長の連れてきた女はユミと一緒に地下室に行こうとする。
 彼女は、悪魔の第五軍団のボス、バラムの手先であった。
 謎の二人連れは阻止しようとするも、バラムの力の前には全く歯が立たない。
 地下室の降りたユミはそこに閉じ込められる。
 すると、伯母の霊が現れ、地下室は霊魂が「死者のくに」へ来れないようにするための場所だと説明する。
 そこに、憑依霊達と共に、死を目前にした少女の霊魂が現れるが…。
・「第二章 マンガちゃん」
 大野先生とマリはユミを助けようとするが、霊にとり憑かれた所長と、バラムの手先の女が邪魔をする。
 霊の弱点は電気。
 外は雷雨で、外の空気を入れることができれば、このピンチを切り抜けることができるのだが…。
 一方、地下室ではユミは、四年前の自分に戻っていた。
 その夢の中で、彼女は両親がこの家を建てた時の秘密を知る…。
・「第三章 霊と魂」
 地下室で、バラムが少女の霊魂に施した処置。
 それは霊魂を「霊」と「魂」に分け、「霊」を悪しき憑依霊へと変えることであった。(注1)
 ユミはバラム達に抗議するのだが…。
・「第四章 ユミの涙」
 地下室に、あの二人連れが降りてくる。
 二人連れは悪魔の手先であり、この地下室において非常に重要な役割を担っていた。
 しかし、悪魔の手先であっても、その「こころ」まで焼き尽くすことはできなかった。
 二人連れのとった行動とは…?

 「死者の門」という壮大なタイトルですが、本書での「死者の門」は「位牌」のことで、あまりの落差にカックンきます。
 黒田みのる先生によると、「位牌」は「死者のくに」の入り口で、霊魂は「死者のくに」の決められた所に行き、更に、霊は「位牌」を通して、子孫とつながり、位牌の入る「仏壇」は「ご先祖さまをはじめ一族の死んだ人たちの(…)家のようなもの」とのことです。
 しかし、最近は「位牌」や「仏壇」のない家が多く、「死者のくに」に行けない霊魂が増えている…というのが作品の要旨です。
 というわけで、実は抹香臭い内容なのですが、そこに黒田みのる先生お得意の「外国の悪魔が日本を侵略」テーマを注入。
 ただでさえ、わかったようなわからないような内容を、ますます混乱させて、読後感はぶっちゃけ「ぽか〜ん」です…。
 一応、執筆にあたり、注意深く読んではみましたが、やはり、全てを理解するにはキツい内容のように思います。
 個人的には、ストーリーよりも、ヒロインの伯母の松沢敏江が(トウが立ってはおりますが)ちょっぴり牧美也子テイストが入っていて、印象的でした。(よろめいてしまいそうです。)

・注1
「憑依霊」の作り方
@「霊魂」を「霊(今生での強い感情)」と「魂(何度も転生を繰り返してできた「うけ皿」のようなもの)」に分ける。
A「霊」を「幽体(生前の肉体にそっくり)」に、「魂」を「霊体(読んだけど、よく理解できず)」に入れる。
B「霊体」に包まれた「魂」は「死者のくに」に入れるが、「幽体」に包まれた「霊」は執着があるため、「死者のくに」に入れない。
C「霊」はその執着を晴らすために、人にとり憑き、悪霊化。

2022年6月2・5日 ページ作成・執筆

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