黒田みのる「竹の家」(発行年月日不明)



「小規模ながらも事業を営む父親、優しい母親に、中一と小三の姉妹、ヨーコとマコの、平凡な四人家族。
 彼らは、おばに勧められ、町の北外れにある、竹やぶに包まれた家を見に行く。
 鬱蒼とした竹やぶに囲まれた、その家では、去年、持ち主の老婆が二階から飛び降り自殺をして以来、売りに出されていた。
 一家が家を見ている最中、マコの姿がないことに気付く。
 マコは二階で気を失っており、事情を聞いても、さっぱり要領を得ない。
 そのうち、マコの様子がおかしくなり、一家は家を出る。
 その後、母親とヨーコの反対にもかかわらず、地震嫌いの父親とマコの意見に押され、一家はその家を購入。
 しかし、引っ越しして以降、おかしなことが起こり始める。
 たびたび人格が変わり、予言めいたことを口にするマコ。
 竹林の中にある、生きているのか、剥製なのかわからない、前の家主の飼い犬。
 そして、謎の異臭が一家を二階に追い詰める…。
 竹の家に潜むものの正体は…?」

 マイナー・ジャンル「筍ホラー」の怪奇マンガです。
 後期の作者紹介によると、「(昭和)47年(1972年)に「少女フレンド」に「死者のくにシリーズ/幽界・霊界・神界」を発表。これは児童漫画界に心霊が登場した初の連作である。 」(p220)とのことでして、この作品も少女マンガ雑誌に掲載されたものかもしれません。(いまだ確認取っておりません。)
 絵柄は「少女エクソシスト」等でお馴染み、古出幸子先生の筆になる、怪奇マンガとは程遠い少女マンガ・タッチですが、怪奇シーンになると、途端に絵の密度が増して、怪奇マンガらしくはなります。(でも、ちっとも怖くないのが、悩ましいところ…。)
 この落差の激しい絵柄に加え、あまりにオンリー・ワン(「天然」?)なストーリー、全く合点のいかぬ怪奇現象の数々、ヘソから気が抜けそうなセリフまわし(注1)といった要素が混然一体となって、カオスな傑作…になるわけがなく、ビミョ〜な出来です。
 基本的なストーリーは「実は古戦場跡だった竹やぶを切り開いて、建てられた家に住む者を戦死者の霊が襲う」でして、それを伏線に展開を進めていけばいいのに、ストーリーとは関係のない怪奇現象ばかりが描写されて、心底「?」という気分にひたれます。
 こんな内容でも黒田みのる先生が直々に劇画タッチで描けば、また話は違ってくるでしょう。
 でも、古出幸子先生の、ゆる〜い少女マンガ風の絵柄では、「奇怪さ」よりも「手抜き感」の印象の方を強く抱いてしまうのです。
 と、あれこれ厳しい意見を書きましたが、まあ、「筍」を怪奇マンガに取り入れた点は評価したいと個人的には思います。
 「筍が刺さって、人・動物が死ぬ描写」があるのは、私の知る限り、このマンガと関すすむ先生の「七度尋ねて」しかありません。
 「だから、どうしたっていうんだよ?」と反論されたら、言葉に窮してしまいますが…。

・注1
 この本での個人的なお気に入りは以下のセリフです。
「そーれ びゅーんと のびろ わしのすばらしい 手下どもよお」(p201)
「ぐいーっと まがれー わしのかわいい 手下どもよ ほーれ そうだあ」(p202)
 絵と一緒に味わうと、趣が倍増いたします。

2017年2月25日 ページ作成・執筆

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