黒田みのる「石の呼ぶ家」(1986年11月30日初版発行)

 収録作品

・「石の呼ぶ家」
「ある一家が、ゴージャスな別荘で一週間、休暇を過ごすこととなる。
 だが、次女のアヤが裏庭にある岩に上がってから、様子がおかしくなり、また、長女のユミは高窓に幽霊らしき顔を見る。
 更に、その夜には謎の停電が起こり、通電した岩からは奇妙な声が響く。
 翌日、不動産屋の息子、潤一に電気系統を見てもらい、念のため、別荘に滞在する間、彼に泊まってもらうこととなる。
 潤一はユミを裏庭に連れ出し、奇怪な現象の理由を説明する。
 今回の旅行は、岩に憑りついている霊の仕業であり、父親とアヤはすでに憑依されていた。
 霊は電気が苦手なことを利用して、潤一はある装置を作り、スイッチをユミに託すのだが…」

・「合わせ鏡の中から」
「夜中の十二時、古い鏡で合わせ鏡をすると、三番目に将来の夫の顔が映ると言う噂。
 噂を確かめるべく、西田幸子は父親の古い鏡で、夜中の十二時、自分の顔を合わせ鏡に映す。
 すると、三番目に男性の後ろ姿が見えるが、顔を確認する前に、父親に止められる。
 父親は合わせ鏡の噂を知っており、鏡の話になると父親はえらい剣幕で、幸子は何も問えない。
 だが、将来の夫が気になって仕方のない幸子は、鏡の前の持ち主、そして、合わせ鏡をした挙句、家族を捨てた女性を訪ね歩くのだが…」

・「金色のひとみ」
「おじの家からの帰宅途中、由子はあるカップルに車で轢かれて、死亡。
 カップルは由子の遺体と、彼女のペット、タマを、道べりの林の中に埋める。
 その際、女性は指輪をタマの口の中に落としてしまう。
 しかし、カップルが帰宅した時、アパートの部屋の入口のその指輪が落ちている。
 更に、どこからか猫の鳴き声が聞こえてきて、その夜…」

・「髪まいり」
「リカは新しい母親になじめずにいた。
 ある日、継母はリカと一緒に鬼子母神にお参りする。
 本堂の中には、子供の成長を祈って切った、母親の髪がたくさん納められていた。
 継母はリカと仲良くなることを祈り、納めていくものがあると話す。
 リカは継母が髪の毛を納めるのかと思い、確かめようとするが…」

・「ろう人形」
「アヤの母親は、以前、働いていた家で留守番を頼まれ、アヤは母親と共に泊まることとなる。
 その家には、ろう人形を集めた部屋があり、一日中、クーラーが稼働していた。
 ろう人形は、その家の主人の亡くなった奥さまをかたどったものから、男性のものが数点。
 アヤは最初に奥さまのろう人形を見た時に、どうも生きているような印象を受ける。
 その思いは次第に強まり、奥さまのろう人形には死体が埋め込まれていると考えるのだが…」

・「見えない世界勉強会 わたしは見た!!」
「第1講座 わたしは見た!!」
 海辺の臨海学校で夕方、理加、光子、由子の三人は、お化けを目にする。
 だが、後で絵に描いてみても、三人とも、全く違う絵になっていた。
 その夜、目が覚めた由子は、謎の女性によって、眼球を抉り取られる。
 そして、理加や光子の眼球、大とかげの眼球、犬の眼球を入れられるのだが、そうして見える世界とは…?」
「第2講座 あなかのからだにも悪魔が?」
 先程、登場した謎の女性が、由子に「憑依霊」について解説。
「第3講座 夜あるく手」
 家主が外国に滞在する間、屋敷を預けられた、女性とその娘、広子。
 引っ越した初日早々、女性は高熱を出す。
 だが、広子の知らない間に、謎の手が、母親の看病をする。
 その手の正体は…?」

 あとがきによると、「石の呼ぶ家」以外は、古い作品を集めたとのことです。
 年代はかなりバラバラのようで、明らかに古いタッチ(「合わせ鏡の中から」)のものから、少女漫画雑誌に掲載されたと思しき作品(「髪まいり」「ろう人形」)、そして、カオスすぎる作品(「わたしは見た!!」)まで色とりどりです。
 個人的には、少女漫画然とした絵柄よりも、泥臭い劇画タッチの絵柄の方が遥かにいいと思いました。
 この単行本での私的ベストは「合わせ鏡の中から」。全くもって意味不明なラストが、黒田みのる先生らしく、味わい深いです。

2018年9月10日 ページ作成・執筆

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