黒田みのる「赤い草の家」(1983年8月15日初版発行)

「牧野麻耶は高校一年生の少女。
 彼女の家族が引っ越した建売住宅は、海に流れ込む川に面する工場跡に建てられていた。
 引っ越して間もない頃、麻耶は川の中に気持の悪い、赤い草を見つける。
 赤い草は奇妙な音を発し、水中に没して見えなくなる。
 その夜、家の庭にその草が現れる。
 草は白い煙を出しており、麻耶に見られると、地中に引っ込んでしまう。
 翌日、学校で麻耶は赤い草を荷台に乗せている、バイクの男性を見かけ、行方を追う。
 男性の家を訪れると、その妻は狼狽を隠せない。
 彼女によると、男性は十日程前から、毎夜どこからかその草を持ち帰るようになり、非常に大切にしているという。
 それ以上のことは聞き出せずじまいであったが、その夜、麻耶の部屋に赤い草が現れ、草の中から人の顔が覗く。
 更に、翌朝、赤い草を集めていた男性が麻耶の家の前の川で溺死。
 事件の騒動の最中、太田という記者が現れ、学校まで麻耶に会いに来る。
 麻耶は太田から赤い草の秘密を聞くが、それは赤い草が「死者のくにとつながっている」というものであった。
 その晩、溺死した男の妻が麻耶を訪ね、赤い草が生えている場所を教えてくれるよう頼むのだが…。
 赤い草に秘められた目的とは…?」

 よく理解できないマンガです。
 巻末の、黒田みのる先生の後書きに、
「この物語にかいたあの世がなくなるっていうことは、もともとこの世(見える世界)のうらに、あの世(見えない世界)があるのだけれど、そのあの世がだんだんに、この世のなかに見えて出てくる」(p205)
 という御教が書かれておりますが、それを念頭に置いて、読んでも、今一つ意味が掴めません。
 まあ、マンガのことはさておいて、私が唯一心残りに思うのは、「この世と、あの世がひとつになったあとは、どうなるのか。それは、また別の機会にかくことにします。」(p206)という言葉が結局、実現されなかったことであります。(実は、描いているとか?)
 この世とあの世が一体化するというのが理解しがたいのでありますが、マンガを読んだ限りでは、ロバート・R・マキャモン「幽霊世界」(注1)のような感じです。
 黒田みのる版「幽霊世界」、読んでみたかったものです。(想像だけにとどめておくのが花かもしれませんが…。)

 桃園書房にて「赤い草の霊」とタイトルを変え、復刊されております。

・注1
「幽霊世界」(新潮文庫/1994年7月1日発行・7月25日2刷)収録。
 今までの死者が徐々に実体を持ち始め、地上がスッチャカメッチャカになるという短編です。かなり面白いです。

2017年2月23日 ページ作成・執筆
2022年12月20日 加筆訂正

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