古賀新一「呪いのふたつ顔」(1972年2月21日発行)

 収録作品

・「呪いのふたつ顔」(原作/山浦弘靖)
「白峰女子学園にて、ミス白峰コンテストが開催される。
 クラス代表に選ばれたのは、自他ともに認める美貌の五十嵐千春であった。
 そんな彼女に暗い影がつきまとう。
 千春は、コンテストでミス白峰の栄光に輝くも、薬玉の中に仕込まれた劇薬で顔に重傷を負う。
 ひどく焼けただれた、千春の顔の治療にあたったのは、校医で整形外科の権威でもあった沢本であった。
 沢本は醜い容貌のコンプレックスから、千春の美貌に憧れていた。
 彼は死体の皮膚を千春に移植、手術は成功したかに見える。
 しかし、美貌を取り戻したことによって、千春は沢本の「人形」になることに…」
 恐らくは、1960年代後半〜1970年代に雑誌に掲載されたものでありましょう。
 原作が付いていますので、ストーリーがしっかりしており、サスペンスフルでいいと思います。
 また、古賀新一先生お得意の「ブッ翔び感」は、「バッド・トリップ」描写(pp43〜49、pp89〜96)で充分堪能できます。
「事故死した女子生徒が古代生物の群がる沼で人魚の姿で現れる描写」(pp89〜96)は非常に幻想的で、出色の出来ではないでしょうか?
 そして、個人的に最大の魅力が「ヒロインの魅力」であります。(注1)
 黒井ミサを筆頭に、昭和40年代の古賀新一先生の描かれるヒロインは色気と清楚さ、それと「暗い影」がいい塩梅でバランスをとっていて、独特だと思ってます。
 五十嵐千里もいいですが、嫌味なクラスメートの黒沼さんもいいなあ…。(ちょっぴり黒井ミサ。)
 「呪いのへび教室」(大陸書房)に再録されております。(二か所、加筆訂正されております。)

・「恐怖の子守唄」
「みゆきは一人で留守番をしている時、見知らぬ女性から赤ん坊を預けられる。
 いくらあやしても赤ん坊は泣きやまず、みゆきがうとうとしている間に、赤ん坊は死んでいた。
 そこは父母が帰って来て、みゆきは慌てて赤ん坊の死体を押し入れに隠す。
 しばらくして、先程の女性が赤ん坊を引き取りに来た。
 みゆきは知らぬ存ぜぬを貫いて、女性はみゆきの父母に追い払われる。  その夜、みゆきの部屋に忍んできた女性は、みゆきを詰問、女性は押し入れの赤ん坊の死体を抱いて、姿を消す。
 みゆきは赤ん坊を死なしたことに罪悪感を抱くのだが…」
 逆さ吊りにして、鞭でしばく…う〜ん、サディズム。
 「猿少女」(ヒバリ・ヒット・コミックス)にて再録されております。

・「狼少女マリ」(マーガレット/1966年発行)
「利奈とマリはこの世でたった二人きりの姉妹。
 マリは赤ん坊の頃、野良犬に噛まれ、手足の不自由な身体であった。
 利奈はできる限り、マリの世話をするが、マリはひがみっぽく、陰気で、正常人のマリに敵意を抱いていた。
 マリはテレビで観た狼少女に感化され、利奈を狼の真似をして脅す。
 我慢の限界に達した利奈はマリを犬の首輪でつなぐのだが…」
 身障者を扱ったマンガです。
 深読みできるような、できないような、幻想的なところが、古賀新一先生らしいです。
 p185右上の、疲れた表情の利奈の絵がちょっぴりセクシーかも。
 「黒髪の呪い」(大陸書房)に再録されております。

 もうすぐ傘寿を迎えようとされている古賀新一大先生。(敬語が下手ですみません…。)
 怪奇マンガ界の最古参かつ大御所の御一人でありながら、いまだ正当な評価を得ているようには思えません。
 「エコエコアザラク」以外のコミックの大半が絶版状態で、古い作品に関しては一部を除き、まともに読むことができないという有様です。
 何はなくても、作品が多くの読者の目に触れなければ、話が先に進みません。
 このホームページが様々な怪奇マンガ・ファンの興味をかき立てることになり、それが後々復刻につながれば…と考えてはおりますが、如何せん、私の力量不足は明らか。
 世の中には、私の何万倍も怪奇マンガへの知識も愛もある人々がいると思いますので、そういう方達の検証を是非ともお願いしたいところであります。

・注1
 こんなことを書いちゃっていいのかどうかわかりませんが、批判を覚悟で書きます。
 私の個人的な意見ですが、古賀新一先生にあって、楳図かずお先生にないもの…それは「美少女キャラ」でしょう。(「おろち」は?と聞かれると、非常に厳しい…。)
 黒井ミサに匹敵する、怪奇マンガのヒロインは存在しない!!…と根拠はさほどありませんが、あなたの耳元にウィスパー・ボイスで断言します。

・備考
 カバー背表紙色褪せ、また上部に痛み。

2016年4月27日 ページ作成・執筆
2017年4月17日 加筆訂正

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