古賀新一「けだもの屋敷」(発行年月日不明)



 収録作品

・「けだもの屋敷」
「上村達也は、恋人の美佐を交通事故で亡くしてから、酒びたり。
 交通事故の原因は、赤い血を見ると、達也が発作を起こすせいであり、彼は罪の意識に苛まされる。
 また、彼には妙な記憶があった。
 それは、幼い頃、左手が三本指の女性に、鉄格子のはまった檻に閉じ込められるというものであった。
 発作と、そのおぼろげな記憶が何かの関連を持つように思えて、達也は不安でたまらない。
 ある日、達也は、墓場で子守をしている女性に出会う。
 その女性は死んだ恋人の美佐にそっくりで、達也は夢中になる。
 しかし、その女性の抱いている赤ん坊は非常に醜く、服の中には、気味の悪い虫に鈴をつけて飼っていた。(右端の画像を参照のこと)
 魔子と名乗る女性は、醜いものにしか魅力を感じないと達也に話す。
 彼女に気に入られようと、達也は劇薬で顔を潰し、家をとび出したまま、行方不明になる。
 そして、達也の弟は、兄の居所を探すうちに、恐ろしい事実に直面することになるのであった…」
 エラくムチャクチャな話なのですが、いや〜、もう、古賀新一先生にしか描けないマンガであります!!
 ネタばれですが、古賀しんさく名義での「もてない奴」で使われた、「醜い赤ん坊を抱いている女性の首は、実は人形で、赤ん坊の顔が本物の顔」というギミックが使われております。
 また、これも古賀新一先生の好む「血を吸う赤ちゃん」もストーリーに出て来まして、当時の古賀新一先生のマンガのプチ・集大成という感じでしょうか?
 そう考えると、「けだもの屋敷」というタイトルが妙にしっくりしてきます。

・「死人屋敷」
「可奈は養女として引き取られた先は、山奥の墓場で火葬場を営む、中年夫婦であった。
 中年夫婦は可奈に優しく接してくれるものの、やはり気味が悪い。
 この中年夫婦には秘密があった。
 山奥での寂しい暮しに耐えかね、引取人のない死体を屋根裏に集めて、家族同然に生活していたのである。
 中年夫婦は新生活のために、屋根裏に集めた死体を焼こうと考える。
 しかし、それを恐れた死体達は、可奈に家から出ていくよう迫る…」
 初出は、多分、「のろいのねむり 白い眼の少女」(1968年「りぼん4月号」付録)であります。(再録にあたって、若干の変更点がありますので、そこは「白い眼の少女」のページを参考にしてください。)
 個人的には、ブラック・ユーモア炸裂の「奇妙な味」の佳作だと考えております。
 死体と家族同様に生活していた中年夫婦のやけに含蓄に富んだセリフや、個性溢れる死体の面々(表情がとっても豊か!!)等、味わい深過ぎます。
 最初期に描かれた「ゾンビ」マンガの一つと言っても構わないでしょう。

 ヒバリ・ヒット・コミックスにて「ばけもの屋敷」と改題されて、再刊されております。
 内容は一緒ですが、「ばけもの屋敷」では、最終頁のp192が、出版社等の記載の関係で、上の二コマが削られております。

・備考
 前の遊び紙にHと鉛筆での書き込みあり。カバー背上部に破れあり。小口にシミあり。奥付票、欠如。

2016年10月9・21日 ページ作成・執筆

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