さがみゆき「吸血少女カーミラ」(1973年10月31日発行)
「北沢千鶴子とその一家(父母と兄)は、ある夏、人手に渡る前に、千鶴子の曽祖父が建てたという田舎の洋館で過ごすことになる。
明治時代に建てられた洋館には、あかずの部屋があった。
その部屋は、兄(名前が出てきません)が子供の頃、幽霊を見てからずっと封印されていた。
兄が話すには、兄が六歳の頃、夜中にふと目を覚ました時に、ベッドの側に金髪の美しい女性がいた。
その女性は兄に歌を歌って慰めてくれたが、突如、牙を剥き出して首もとに噛み付いてきた。
その翌日、神父が祈りを捧げるためにやって来て、その件があって間もなくして、一家は東京へ移ったのだと言う。
洋館にやってきた日の夜、兄妹が田舎の夜道を散策していると、スピード超過の車が事故を起こす現場を目撃する。
その車から助け出された女性は、兄が幼い頃に見た女性にそっくりだった。
カミーラという女性は洋館で手当てを受けるが、事故のため、記憶を失っていた。
が、彼女は昔、夢の中で兄に会ったことがあると言う。
彼女の夢と言うのは、子供だった兄をあやそうと、その枕元で歌を歌ったのだが、兄が急に泣き叫びだしたので、驚き慌てたところで目が覚めたというものだった。
カミーラと兄の関係は…?
そして、この洋館に隠された秘密とは…?」
レ・ファニュ「吸血鬼カーミラ」(平井呈一・訳/創元推理文庫)は初版が「1970年4月10日発行」です。
恐らく、さがみゆき先生はこの小説を読んで、独特のアレンジを施して、マンガに仕立てたと推測します。
そのアレンジのせいで、若干、ストーリーに混乱が生じているのが、いささか残念ですが、原作の持つカーミラの艶っぽさや、ほんのりしたレズビアニズムもきっちり再現してますので、好感が持てます。また、主人公が吸血されるシーン(pp99・100)のバッド・トリップ描写も出色でありましょう。
まるまる一冊描きおろしということで、それなりにしっかり描き込まれていて、貸本マンガをベースにしたものよりも出来はいいと思います。
ただ、独特のアレンジが時に「フヌケ〜」でして、「女吸血鬼にお守りで対抗しようとする老婆」や「吸血鬼を退治するために、風呂敷包みにした大量のニンニクを引きずる医者」とか味わい深過ぎます。
また、吸血鬼の口のアップでは、尖った牙が八重歯のようになっているのが、どうにも気になります。普通の吸血鬼のように犬歯が伸びているのではなくて、普通の歯の上から牙が生えているのか?…なんて、しょ〜もないことを考えてしまいます。
平成27年3月14日 ページ作成・執筆