杉戸光史「美しき奇形児」(1972年11月15日発行)
収録作品
・「美しき奇形児」
「画学生の松井正雄に宛てられた、川島洋子という女性からのラブレター。
正雄は全く興味を示さなかったが、妹の真由美が首を突っ込んだことから、正雄は吉川美恵子という女性と偶然に知り合う。
正雄と美恵子は一目見た時から、互いに惹かれ合う。
また、正雄には、美恵子は心中で崇拝していた「女神」とそっくりであった。
交際が深まるにつれ、二人の愛情は深まっていくが、そんな彼らを川島洋子はひそかに窺っていた。
ある夜、犬の散歩に出かけていた美恵子は、川島洋子と老婆に襲われる。
抵抗すると、川島洋子の仮面が落ち、美恵子は驚愕、逃げようとするものの崖から転落して気絶してしまう。
そして、川島洋子と老婆は美恵子をどこかへと運んでいくのであった。
正雄を愛するが故に手段を選ばない川島洋子の正体とは…?」
貸本からの再録です。
カラーページの一部や「後記」に一部描きなおしがあるぐらいで、内容は一緒です。
ジャケットも貸本と甲乙つけがたい出来で、とっても魅力的。
また、こちらは「落書き」がありませんので安心です。(そのかわりに、本がネズミにかじられておりますが…。)
・「怪談生首館」
「ある私立中学校に田舎から転校してきた美少女、春野美也子。
一目惚れした川辺哲夫は放課後、彼女と一緒に帰ろうと作戦を立てるが、級友の中村に先を越されてしまった。
とりあえず、後をつけると、春野美也子の家は町はずれの荒れ果てた屋敷であった。
外で中村が出てくるのを待つが、いつまで経っても出てこない。
しびれを切らしかけていたところに、美也子が屋敷から出てきて、哲夫は見つかってしまう。
哲夫はごまかしながらも、美也子と明日映画を行く約束を取りつける。
翌日の夜、デートの帰り道、哲夫は美也子を家にまで送る。
美也子は家に寄るようしきりに勧めるが、突然、家の中から悲鳴が聞こえる。
哲夫が駆けつけると、縄で縛られた中村が、老婆の生首に襲われていた…」
・「奇病」
「杉戸光史、28歳。
平凡な漫画家である彼は他の人にはない奇病を持っていた。
その奇病とは首が勝手に胴体から離れて、飛んでしまうというものであった。
医者に相談して、彼はその奇病を治すが…」
いろんなところで紹介されておりますが、この本で一番面白い作品です。
たった三ページの作品なのに、この魅力は何故?
これも、主人公として登場している「杉戸光史」先生自身によるものだと、私は考えております。
真面目一本槍だった(であろう)杉戸光史先生が、ちょっぴりハジケちゃっている、この作品…読むと、心が温かいものに(多分)包まれます。(注1)
・注1
ついでに書いておきますと、ひばり書房黒枠の袖写真でステキな笑顔を披露しているのは、杉戸光史先生とさがみゆき先生だけではないでしょうか?
まあ、私、ひばり書房黒枠を全巻揃えているわけではありませんので、あくまでも単なる印象でありますが…。
・備考
状態悪し。背表紙の部分をネズミにかじられて、カバーの一部欠損かつ本体の痛み。本体の前半分、下部に水濡れのシミあり。
2016年4月7・8日 ページ作成・執筆