矢乃藤かちすけ「青い霊のたたり」(1975年9月10日発行)

「日本各地で起こる怪事件。
 道路建設のための伐採に従事する作業員の変死、深夜の自動車道での大きな事故、工場廃液を海に不法投棄するタンカーの乗組員の変死…。
 事件が起きるのは、乱開発や公害が著しい地域に限られていた。
 そして、被害者は炭酸ガスによる窒息死であり、血も抜き取られていた。
 目撃者は皆無、証拠もなく、犯人の手がかりは一切ない。
 そんなある日のこと、山道を行く、東西中のハイキング部。
 引率するのは、女子生徒の憧れの的、「ミスタームーンリバー」月河先生であった。
 しかし、彼は何者かに足を引っ張られ、崖から転落してしまう。
 男子生徒の山田幸夫はロープで下に降りるが、そこにはおびただしい血が流れていた。
 しかし、月河先生の姿がない。
 山田が訝っていると、月河先生は皆の前に無事な姿でひょっこり現れる。
 その日はそれ以上、何事もなかったが、後日、月河先生を撮った写真に異変が起こる。
 月河先生が気付かない時に撮った写真には、彼の頭が写っていなかったのだった。
 山田は、ガールフレンドの岡野順子(通称「順ペー」)に彼女のおじを紹介してくれるように頼む。
 順子のおじは超科学研究所で働く、超科学のエキスパートであった。
 山田は順子のおじに、写真と、ハイキングの際に採取した崖下の血と肉片を調べてくれるように依頼する。
 調査の結果、肉片は人間のもので、血は月河先生と同じ血液型であった。
 順子のおじは、月河先生が崖から転落した際に「植物の霊魂エネルギー」が身体に入り込んだのでは、と推測する…」

「自然を破壊する人類への自然の逆襲」という1970年代に流行ったテーマに、「植物のテレパシー」を絡めたところがミソです。
 が、それよりも、「1970年代」の空気の方が遥かに気になります。
 その当時を生きていたわけではありませんので、あくまでも個人的な印象なのですが、激動の1960年代の反動とした「シラケ」なのでしょうか、ライトなノリが充溢しております。
 特に、セリフにこの傾向が顕著で、「ほんとだワサ」とか「ナウでハートのあるヤング」とか「もちろんそうれス」とか、「へっぽこぽ〜ん」(注1)てな感じです。
 そういうライトなノリと「公害や乱開発問題に対する自然の逆襲」という重いテーマが、齟齬を生じそうでありながら、妙に一体化しているところがミラクル。
 オカルト・ブームにインスパイアされた、四畳半フォーク・シンガーが、怪奇マンガという手法を用いて、「みだらな自然破壊」(注2)に対してプロテストしたマンガ…と言えるのかもしれませんが、すいません、テキト〜言ってます…。

・注1
 ローザ・ルクセンブルクの「バカボンを連呼する歌」(タイトル不明)から、勝手に引用。

・注2
 このマンガがある本(紛失しました)にて紹介された際に、「そりゃ、『みだり』やろ!!」と突っ込みを受けておりました。

・備考
 pp59〜62、ページ隅に何かが挟まって、朽ちたように小さな穴があいている。

2016年2月8・9日 ページ作成・執筆

ヒバリ黒枠・リストに戻る

メインページに戻る