杉戸光史「怪談亡霊の里」(1972年8月31日発行)
「父親が百合子にもってきたお土産の平家ガニ…それが全ての発端であった。
彼女は部屋でカニを飼うが、その夜、彼女の前に、武者姿の亡霊が現れる。
亡霊には顔がなく、近々この家に彼らの血をひく若者が現れると告げる。
以来、カニは行方不明になり、一週間後、百合子は下校途中、着物姿の青年を見かける。
わけあって、百合子の家で、行き倒れの青年を世話することになるが、彼こそは平家一族の末裔、平行盛であった。
彼は、瀬戸内海にある不知火島に住んでおり、修行のため、旅をしている最中とのこと。
しかも、行方不明だった平家ガニがどこからか現れ、行盛はカニと話をしていた。
彼によると、このカニはご先祖様の霊が宿っているもので、役割を終えた今、カニは死んでいた。
十日後、行盛は不知火島に帰る。
世話になったお礼に、行盛は一か月後の八月十日、百合子の誕生パーティに来ることを百合子に固く約束する。
しかし、パーティの当日、彼は姿を現さない。
百合子が自室で嘆き悲しんでいると、行盛の飼い猫、アカの鳴き声が聞こえる。
アカを追い、外に出た百合子は、塀に身体を飲み込まれると、ただっ広い草原にいた。
そこには「平家代々の墓」の石塚があり、そばには行盛の姿があった。
行盛は「重大なこと」について話そうとするが、百合子は彼の顔がのっぺらぼうであることに気付く。
その場から逃げ出した百合子は沼で溺れ、気が付くと、行盛の住む屋敷に寝かされていた。
誕生パーティを欠席した代わりに、行盛は彼女を「くらやみまつり」でもてなすのだが…」
マイナー・ジャンル「カニ・ホラー」の中でも「平家ガニ」を扱った変わり種です。
ラスト、衝撃(?)の事実が明かされますが、ストーリー展開は淡々としており、全体的には地味な作品だと思います。
・備考
貸本使用。カバー貼り付け。前後の袖や遊び紙にセロテープで留めた痕や書き込み。p21の亡霊の顔をこすって、消している。
2019年7月17日 ページ作成・執筆