杉戸光史「百の目少女」(発行年月日不明)

「花村洋子は立山にて崖から転落、気が付くと、賽の河原にいた。
 そこに流れる、三途の川で彼女は百目という妖怪に遭遇し、全身に目玉を浴びる。
 気絶している間に、洋子は無傷で発見されるが、彼女の全身には眼球が根付いていた。
 眼球は彼女の身体から急激に栄養を吸い取り、死にたくなければ、百目の言いなりになるしかない。
 百目は、洋子の家族も百目に変え、魔の手は洋子の親友、ルミ子にまで伸びる…」

 恐らく、水木しげる先生のマンガにインスパイアされて描かれたのでありましょう。(注1)
 水木しげる先生の描く百目はだぶついた肉の狭間に目が覗くと言う、イヤらしい造形でありますが、杉戸光史先生のは、仮面ライダーに出てくる改造怪人の出来損ないのようなパチモン感覚に溢れております。
 妖怪の造形と同様に、ストーリーも、徐々にトーン・ダウンして、安直なラストかつハッピーエンドを迎えるというもので、あまり面白味のあるものではないと思います。
 でも、冒頭、身体中に目が付いた、下着姿の洋子を、見開きを用いて、ドーンと見せる描写はかなりのインパクトです。(今回、画像の掲載は見合わせました。ググれば、画像は見つかります。)
 これのためだけでも一読の価値があるかもしれません。(再読する価値は…私に聞かないでください…。)

 ヒバリ・ヒット・コミックスにて「妖怪百の目少女」のタイトルで再刊されております。

・注1
 水木しげる・著「妖怪おもしろ大図解」(小学館入門百科シリーズ・138/1983年8月15日初版第1刷・1986年12月1日第7刷発行)のpp54・55には「百目」の解剖図が載っており、非常に参考になりました。
 「目があまりたくさんありすぎて、昼まは、まぶしくて歩けない」(p54)という設定は、杉戸光史先生のマンガでも使われております。
 目をつぶりゃいいような気がしますが…。

・備考
 貸本使用。糸綴じあり。前の遊び紙にセロテープの痕あり。後ろの遊び紙に貸出票の剥がし痕とボールペンによる書き込みあり。カバー痛み。小口上部に貸本店のスタンプ押印。

2017年3月28日 ページ作成・執筆
2017年4月25日 加筆訂正

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