「怪談スリラー」(1975年7月15日発行)

・浜慎二「白骨の使者」
「木枯らしの吹く深夜。
 古賀葬儀社の玄関のブザーを押す者がいる。
 主人が応対に出ると、帽子を目深にかぶった、トレンチコートの男性が立っていた。
 男性は主人に、できるだけ立派な棺桶を十個、注文する。
 訝る主人に向かって、男性はそのうちの一個は自分のものだと言い、現金で前払いにして、二日後に取りに来る、男性は立ち去る。
 男性の向かう先は、ずぶ濡れの女のいる川岸、泥だらけの青年のいる工事現場…
 そして、二日後の夜…」
 浜慎二先生のマンガは「ちょっと怖くておもしろい」ところが身上なのでありますが、この作品はかなりおどろおどろしい内容です。
 読んだチビっ子達には、かなり怖かったのではないでしょうか?
 ヒバリ・ヒット・コミックスの浜慎二「SF恐怖入門」にて再録。

・いばら美喜「真っ二つ」
「夜の砂浜をうろつく、金のないチンピラ二人。
 彼らは、白い布に包んだ荷物を大事そうに持っている、中年の男性から、その荷物を奪い取る。
 荷物を奪われた男性は、実はヤクザの組長で、荷物の中の胸像には麻薬が隠されていた。
 彼は、取引相手が手下を使って胸像を奪ったと思い込み、麻薬の取引場所で抗議する。
 だが、話がこじれ、組長はマシンガンで撃たれ、首が飛ぶ。
 一方、胸像を奪った二人は、胸像の中には小麦粉らしき袋が幾つか入っているだけで、がっかり。
 しかし、この胸像を景品に使って、スイカ割りを催し、一儲けを企むのだが…」
 個人的に、あまり出来のいい話と思いません。
 いばら美喜先生の理屈を超えた「説得力」がいまいち弱いような気がします。
 このアンソロジーに収録されたのは、「スイカ」を食べる描写故でしょう。
 インパクトはあることはあるのですが、所詮はそれだけで、ストーリー的に重要性はありません。
 いばら美喜先生にはもっともっと面白い作品が貸本時代にあるので、それを復刻して欲しかったです。
 ちなみに、もとのタイトルは「怪談欲の皮」のようで、「怪談欲の皮」(貸本/ひばり書房)に収録されております。

・古賀新一「切れたフイルム」
「酒屋のおかみとその愛人の侍が、金目当てに、年老いた按摩(あんま)を殺し、按摩の霊に復讐されて焼死するという、古い怪談映画。
 その按摩を演じている俳優が、誰かわからない。
 監督や照明係に聞いても、記憶にないと言う。  それならと、俳優に聞こうとするが、皆、映画と同じ焼死を遂げる…」
 「怪談・65」(貸本/つばめ出版)からの再録。

・山上たつひこ「ヒロシマ1967」(1967年7月14日に完成)
「心理学の八代教授のもとに連れてこられた、一人の少女。
 少女は赤ん坊の頃に脳性小児マヒにかかり、白痴であった。
 しかし、彼女には特殊な能力があり、過去の事件を映像で再現することができるのだった。
 少女の能力を試すために、八代教授は警察に出向き、ある犯人の前で、その殺人現場を再現してみせる。
 それがマスコミに取り上げられ、スキャンダルとなってしまい、少女の身内の者は少女を教授のもとから連れ帰る。
 が、数日後、少女は誘拐されてしまうのだった…」
 大傑作です!!
 完成度の高い、SFホラーでありまして、大抵「SF」の要素を取り入れているものはあまりのデタラメさに噴飯ものが多いのですが、きっちり破綻なくまとめ上げております。
 この「破綻」がないというのが、凄いです…。いや、本当に凄いです!!
 ちなみに、1967年8月の広島でこのマンガを読んだ人はさぞかしイヤな思いをしたことでしょう。(元祖「地獄の子守唄」なのでしょうか…)
 「オール怪談・79」(貸本/ひばり書房)からの再録。

2015年8月26・27日 ページ作成・執筆
2019年11月14日 加筆訂正

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