松下哲也「怪獣少女」(1972年3月31日発行)
「作家を父に持つ麻里が住む家は、自然豊かな山奥にあった。
ある秋の日、母親と高原に遊びに来ていた麻里は、茂みに倒れ伏す、全裸の少女を発見する。
少女を家に連れ帰り、看病するが、目を離した隙に、少女は麻里の飼っていた鶏を生のまま、貪り喰ってしまう。
肝を潰す麻里の前で、少女は大声で吠え始める。
呼応するかのように、吠え声が響き、巨大な怪獣が姿を現す。
怪獣は少女を口にくわえ、住処に連れて帰る。
その怪獣は少女の兄にあたり、住処には、母親の怪獣と兄怪獣、少女の三匹(?)が暮らしていた。
少女は赤ん坊の頃、捨てられ、怪獣に育てられた身。
とは言うものの、やっぱり人間。
湖に映った、自分のネグリジェ姿を見て、その美しさに狂喜し、衣類を手に入れるために、麻里の部屋に侵入する。
箪笥をあさる少女に出会った麻里は少女の好きなようにさせ、家に滞在するよう勧める。
そして、互いに意思の疎通ができるように、毎日、少女に言葉を教えるのであった。
少女は日ごとに言葉を理解するようになり、麻里は少女に「ナデシ子」という名前をつける。
そんな時、父親の取材に雑誌記者とカメラマンが家に泊まり込むことになる。
折悪く、兄怪獣がナデシ子を心配して家を訪れ、カメラマンに写真を撮られてしまうのだった。
麻里の家族は秘密にするように頼むが、記者とカメラマンはテレビにこのことをすっぱ抜き、大騒動になる。
ナデシ子は急いで住処に戻るが、兄と母親は村の自警団に追われる身となる。
どうにか逃げ延びたものの、ナデシ子の兄怪獣は銃弾を受け、重傷。
しばらくは、ナデシ子は麻里の家に身を潜ませることになるが、夜、ナデシ子の前に兄怪獣の幽霊が現れる。
ナデシ子が住処に駆け付けると、そこには冷たくなった兄の姿があった。
兄を殺した人々に対して怒りを燃やすナデシ子。
すると、鼻のあたりから角が伸びだし、ナデシ子は巨大な怪獣に変貌してしまう。
その頃、テレビで観たナデシ子を探す女性がいた。
その女性は、十年前にナデシ子を捨てた、実の母親であった…」
個人的に、ひばり書房黒枠で最も好きなジャケットです。
内容がどうにもこうにも気になってくるところですが、怪獣による大虐殺を期待すると猛烈な肩透かしを喰います。
タイトルとジャケットからはちっとも想像がつかないと思いますが、テーマは「産みの母親と育ての母親、どちらが本当の母親か?」というものです。
最初はガッカリしましたが、改めて読み直すと、拍子抜けするぐらいに「のどか」で、ひばり書房黒枠の中ではかなりの異色作です。
読んだら喜ぶ人が多いように思います。(隠れファンが多いのでは…?)
2016年2月6日 ページ作成・執筆